プロローグ

文字数 1,365文字

「久々に戻ってみれば、この成績は何だ」
2018/01/22 14:47


「ちゃんと勉強をするって言うから、最新のスマホを買ってあげたのに」



2018/01/22 14:48


バイト先から帰り、家に入ってすぐに父と母の落胆した声が聞こえてきた。居間の扉の隙間から、外に跳ねた黒髪の少年、蒼太は中を覗き込む。



 そこには、ウェーブのかかったセミロングの少女が項垂れていた。



 兄が帰ってきたことに気付き、少女は蒼太を睨みつける。



2018/01/22 14:49
「……」
2018/01/22 14:54


(……俺を睨むな。自業自得だろ)



2018/01/22 14:51


蒼太は肩を竦め、二階の自分の部屋へと戻った。



 海外で仕事中の両親が、夏休み期間中に珍しく帰宅。



 問題は、受験生の妹の成績のことだ。



中学一年の頃までは文武両道、成績優秀。非の打ちどころもなかったが、最近人気のアプリゲームを初めてから勉強がおろそかになっている。



それを心配して、家政婦の島田さんが両親に伝えたのだろう。



そして、現在へ至る。



2018/01/22 14:52
「たまには、いい薬だよ」
2018/01/22 14:53
そう言って、蒼太はベッドに横になった。
2018/01/22 14:55
翌日
2018/01/22 15:04
結局、親父たち昨日の夜に飛行機に乗ったんだな」
2018/01/22 15:04


蒼太は朝食のパンを食べながら「相変わらず忙しい」と溜息をついた。



2018/01/22 15:05
「やばい、やばい、やばい」
2018/01/22 15:05


妹の沙織は、落ち着きがない。



蒼太は肩を竦めると



2018/01/22 15:06


「おいおい、トイレなら早く行けよ」



2018/01/22 15:06


「違うわよ! スマホ取り上げられたのよ!」



2018/01/22 15:07
沙織が声を荒げて返す。
2018/01/22 15:07


「というか、どうして昨日は助けてくれなかったのよ」



2018/01/22 15:08
視線を逸らす蒼太に、沙織が詰め寄る。
2018/01/22 15:09


「いやー、入りにくそうな雰囲気だし」



2018/01/22 15:09
「兄貴なら、助けてくれてもいいよね?」
2018/01/22 15:10


 沙織は頬を膨らませた。



 それを見て、蒼太は溜息をつく。



2018/01/22 15:10


「受験生だってのに、ゲームばかりしてるお前が悪いんだろ。そりゃ息抜きが必要だってのは知ってるけど、限度ってものがあるよな」



2018/01/22 15:11
沙織は納得のしない表情で
2018/01/22 15:11


「ゲームしてるのは、兄貴も一緒じゃない」



2018/01/22 15:12


 蒼太に言った。



2018/01/22 15:12
蒼太は深い溜息をつく。
2018/01/22 15:15


「……俺は高校生だ。受験は関係ない」



2018/01/22 15:15
それを聞いて、沙織は鼻を鳴らす。
2018/01/22 15:16


「それで、普通の高校行って普通のバイトをして……きっと、面白くない職業について兄貴は一生を終えるのよ。はっきり言って、枯れてるよね」



2018/01/22 15:16


「放っておけ、普通のどこが悪いんだ」



2018/01/22 15:17
蒼太は踵を返す。
2018/01/22 15:17
これから、品出しのバイトあるから」
2018/01/22 15:18
「ううっ、ひどい。ひどいわ」
2018/01/22 15:18
急に、沙織が大きな瞳から涙を流す。
2018/01/22 15:20


「人生の楽しみの半分を奪われた妹がこんなに悩んでいるのに、それを見捨ててバイトに行こうなんてあんまりだわ」



2018/01/22 15:21
蒼太は呆れた顔をする。
2018/01/22 15:22


「……半分も残ってるなら、大丈夫だろ」



2018/01/22 15:22
沙織はテーブルに顔を伏せた。
2018/01/22 15:23


「しばらくログインできないと、せっかく作った戦友にも見放されてしまうのね。限定のアイテムも受け取れない、そして私だけのけものに」



2018/01/22 15:23


「分かった。分かったから……」



2018/01/22 15:24
蒼太は「もう泣くな」と頬を掻いた。
2018/01/22 15:24


「え、本当に?」



2018/01/22 15:25
沙織が目を輝かせる。
2018/01/22 15:26


「……この状況で、お前に勝てた試しが一度もない。俺の部屋に使ってないタブレットがあるから、それにデータを引き継げば」



2018/01/22 15:26
蒼太の言葉に、沙織は首を横に振る。
2018/01/22 15:27


「私が言いたいのは、そうじゃないのよ」



2018/01/22 15:27


「え?」



2018/01/22 15:28
蒼太は首を傾げた。
2018/01/22 15:28
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登場人物紹介

鳴海蒼太(なるみそうた)

高校一年、受験生の妹の代わりに乙女ゲースマホアプリ、エリオン・サーガを進めることになる。

鳴海沙織(なるみさおり)

蒼太の妹。受験生だが、ゲーム三昧。スマホを親に没収される。

田中慎也(たなかしんや)

大学一年。蒼太のアルバイト先の先輩。

マリー


エリオン王国の姫。リオネルに頼んで、異世界ガチャを利用して蒼太をエリオン・サーガの世界に呼び寄せた。

リオネル


マリーに仕える魔女。

セルディック


エリオン国・ベルフェゴール領主。

蒼太がエリオンに召喚されると同時に入れ替わりで飛ばされた。

ジーン


マリー王女の教育係

ディオス


ベルフェゴール家の料理長。不愛想で目つきが悪い。

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