デザイナーズハウスが並ぶ閑静な住宅街。
2018/02/01 14:35
あいつ、結構いいとこ住んでるんだよな
2018/02/01 14:35
慎也はレンガ造りの三階建ての家の前で足を止める。
そして、後ろを振り返る。
2018/02/01 14:36
いいか、お前は一言もしゃべるなよ
2018/02/01 14:37
セルディックは物珍しそうに、あちこちを眺めていた。
慎也はインターフォンを鳴らすと
2018/02/01 14:37
沙織が慌ててドアを開ける。
2018/02/01 14:38
今、兄貴のバイト先から連絡が……なんか、具合悪いって
2018/02/01 14:39
別に、問題はない
2018/02/01 14:39
慎也の言葉を遮り、セルディックは前に出る。
2018/02/01 14:40
おい、人の話を聞いてたか?
2018/02/01 14:40
余計に混乱を招く行動に慎也は唇の端を引き攣らせる。
2018/02/01 14:41
……なんだ、元気そう
2018/02/01 14:41
ホッとした表情を見せる沙織を見て
2018/02/01 14:42
え、沙織ちゃん。こいつ、兄貴に見えるか?
2018/02/01 14:42
目の前にいるのは、とうみても日本のコスプレ文化に憧れてきた外国人。
2018/02/01 14:43
この間抜け顔。間違いなく――
2018/02/01 14:43
そういって、沙織は近づくと
2018/02/01 14:43
沙織の顔は笑っている。
しかし、表情とは裏腹に思い切り右手で目の前の人物を右手で叩いた。
2018/02/01 14:44
強烈だ。まさか、マリー以外の女の子にまで叩かれるとは
2018/02/01 14:46
セルディックは左頬を押えながら、叩かれた痛みに表情を歪める。
沙織は腰に手を当てると
2018/02/01 14:46
兄貴は確かにつまらない奴だけど、あなたみたいにやる気のないオーラは出してなかったわ。妹をダマせると思ってるの?
2018/02/01 14:47
兄の姿をした偽物を睨みつける。
2018/02/01 14:47
兄の偽物が右手を上げると、そこには美青年。
2018/02/01 14:48
沙織は目を丸くしながら
2018/02/01 14:49
ウルトラレアの幻影の魔剣士セルディック?
2018/02/01 14:50
慎也は頭を掻く。
2018/02/01 14:50
俺には、最初からエリオン・サーガのセルディックにしか見えなかったが。なんで、沙織ちゃんには蒼太に見えたんだろうな?
2018/02/01 14:51
今、説明された通り
2018/02/01 14:51
そっか、幻影のスキル
2018/02/01 14:52
沙織が手を叩いた。
その言葉に、セルディックは頷く。
2018/02/01 14:52
ここに来た時から、自分の世界とは違う異質な感じがしていた。最初から僕のことを僕と認識されてしまっては、幻術は効果がない。しかし、事前に対策をしておくことで相手が一番親しいと感じる人物を見せることが可能になるんだ
2018/02/01 14:53
肩を竦め、セルディックは小さく溜息をつく。
2018/02/01 14:54
まあ、最初から見破られるとは予想外だけどね
2018/02/01 14:54
慎也は顎に手を当てる。
2018/02/01 14:55
なるほど、俺は最初から認識していたから効かなかったと
2018/02/01 14:55
リアルにセルディックがいることにも驚いたけど、ところで兄貴は?
2018/02/01 14:55
沙織に純水な瞳で見上げられ、慎也は困った顔をする。
2018/02/01 14:56
それを、説明すると長いことになる
2018/02/01 14:56
この時間には、家政婦が夕食を調理しているはずだ。
男が二人訪ねてきたと知れば「お嬢様に近づく不届き者」と言われて追い出されるのが関の山だろう。
2018/02/01 14:57
……私に考えがあるわ
2018/02/01 14:57
沙織に促されるまま、慎也とセルディクは家の中へ入る。
二階への足音に気付き
2018/02/01 14:58
家政婦の島田さんが顔を出す。
慎也に背負われた蒼太を見て「どうされたのですか?」と声を掛ける。
2018/02/01 14:59
兄貴がバイト先で、ピンク色のゲロを吐いたみたいで。わざわざ慎也さんが家まで運んでくれたんです。今日は早めに、部屋で休ませますから。ああ、ピンク色のゲロっていっても普通に大丈夫です。最近流行っているみたいですから
2018/02/02 14:18
島田は困惑した表情。
そして、沙織は勝ち誇ったような表情を浮かべた。
2018/02/02 14:20
そうそう、慎也さんはこう見えて有名な弘山大学の生徒なの
2018/02/02 14:20
まあ、あの有名な医学部のある
2018/02/02 14:20
驚いている島田を横目に「俺、文学部だけどな」慎也は小声で呟く。
2018/02/02 14:21
朝までみっちり兄貴と一緒に勉強を教えてもらう約束なの
2018/02/02 14:21
なんて、素晴らしい。ご両親もきっとよろこびます
2018/02/02 14:22
島田は目を輝かせる。
2018/02/02 14:23
夕食の用意はできています。後で、温めて食べてください
2018/02/02 14:23
コホン、と沙織は咳払いをした。
2018/02/02 14:24
ご苦労様です。部屋でゆっくり休んでね
2018/02/02 14:24
では、失礼いたします
2018/02/02 14:24
一礼して去っていく島田の後ろ姿を見て
2018/02/02 14:25
意外と簡単に騙されたな
2018/02/02 14:25
とにかく、今の状況ちゃんと話してもらうわよ
2018/02/02 14:26