乙女ゲーアプリ、エリオン・サーガ
文字数 1,684文字
そう言って、沙織は春風のように爽やかなステップで本棚へと近づく。
辞書の間に挟んでおいた引き継ぎ用のデータをメモした紙を蒼太へ渡す。
蒼太のバイト先・ドラッグストア
店内に響いているアイドルの新曲が、休憩室まで聞こえてくる。
太陽のように眩しく輝く金色の髪。凛々しい蒼氷色の瞳。
天使のように美しい画面の向こうの少女は多くの男性ユーザーを虜にしただろう。
蒼太が鼻の下を伸ばして呟く。
蒼太は恐る恐る振り返る。
そして、声の主が持っている右手の缶コーヒーを見て一息つく。
「ゲームはテレビで座ってやるものと語ってたやつがスマホゲームとはな。ついに、携帯ゲームの良さに目覚めたか。まあ、課金はほどほどにしておけよ。気がついたら、バイト代全部つぎ込むことになる」
蒼太は首を横に振り「自慢してません」と続ける。
そして、小さな溜息をつく。
そう言って、目を逸らす。
慎也は米神に青筋を浮かべる。
慎也は頭を掻きながら溜息をつく。
そして、飲み終え缶をゴミ箱へ投げ捨てる。
踵を返した慎也に
スマホを操作しながら、蒼太は答える。
次のクエストを終わらせようと、指先の操作を細かく続けた。
しかし、急に画面に靄がかかったように見えにくくなる。
目を擦りながら続けようとしたが、同時に急な眠気が襲ってきた。