桜並木
文字数 324文字
桜並木のなか、母子が歩いてきた。陽は温暖も、風が強い。
野球帽が飛ばされ、私の足もとに。
駆け寄って来る坊主頭、
「お母さんの手を離しちゃダメだよ」
遠い昔のオフレコ話、手と手が離れ、プツンと、母が遠ざかった。
泣くことさへ失った幼いボク。
桜色の女が通る。繁華街の片隅に桜、桜、一気、リアル、秘めやかに咲く。
大人になったボクは母を捜す、捜す、桜色の母を。
捨てた、捨てられたと、戸惑いながら桜、私の肩に。
捨てられ、捨てたと、人生の例えのように桜、母の肩に。
強がる母、哀しい眦(まなじり)の母。
それでも、桜、仁義を、正義を、志しを乗せて舞う。
そんなこと、なんもかも、忘れたネ。
車椅子のなか、穏やかな母、自分の夢路のなかで。
桜並木のなか、二組の、母子が歩いていく。
野球帽が飛ばされ、私の足もとに。
駆け寄って来る坊主頭、
「お母さんの手を離しちゃダメだよ」
遠い昔のオフレコ話、手と手が離れ、プツンと、母が遠ざかった。
泣くことさへ失った幼いボク。
桜色の女が通る。繁華街の片隅に桜、桜、一気、リアル、秘めやかに咲く。
大人になったボクは母を捜す、捜す、桜色の母を。
捨てた、捨てられたと、戸惑いながら桜、私の肩に。
捨てられ、捨てたと、人生の例えのように桜、母の肩に。
強がる母、哀しい眦(まなじり)の母。
それでも、桜、仁義を、正義を、志しを乗せて舞う。
そんなこと、なんもかも、忘れたネ。
車椅子のなか、穏やかな母、自分の夢路のなかで。
桜並木のなか、二組の、母子が歩いていく。