黄金虫

文字数 941文字

恋に焦がれて 鳴く蝉よりも
鳴かぬ蛍が 身を焦がす
一夜限りの 恋花火
火照る吐息を 交差させ
お前の胸で 溶かされる

蝉の命は 儚く尽きる
今夜は 気が済むまで
泣くが良い 泣くが良い
女心は 酒の味♪
シミーズ姿で、団扇パタパタ、母ちゃんが歌っていた。

「蝶とは言わんけど、黄金虫? 小金虫か? となって、一人で飛んで行くから、儚くも生きないし、泣いたりなんかしないです」。
母ちゃんはセリフまで、、

黄金虫は 虫だ
金蔵建てず 蔵建てず
飴屋で 水飴 買ってきた♪
姉ちゃんも歌った。


おやつの時間の頃、どんぐりマナコのおっちゃんがスイカを持って来てくれた。四つも五つも、いつも、いつも。ピシッ、ピシッとスイカを叩いて、笑っていた。

母ちゃんは、奥へ服を着るというより、着けにいった。
「ごめんなさい、あんまり暑くて、、、」と、言いながら胸の谷間を見せびらかすように、(やめてよ、恥ずかし! )文太は思っていた。
「いいよ、いいよ、夏は暑いから、、、」と、どんぐりマナコのおっちゃん。

文太はどんぐりマナコのおっちゃんがくると、何故かおかしな気持ちになる。
おっちゃんと母ちゃんが不思議な糸で結ばれているような、、、 。
文太の大好きな、母ちゃんのおっぱいをとられるような、、、 。

どんぐりマナコのおっちゃんは、
「水飴でも買いや! 」と、姉ちゃんと文太に小遣いを呉れる。

姉ちゃんに手を引かれ、文太は出ていく。
水飴を買い、公園で遊ぶ。

「文ちゃん、水飴持っといて、、、 」そして、姉ちゃんは鉄棒に乗る。逆さまになる。
「逆さまや、逆さまや」

文太も股覗きをしてみる。空と地面が逆さまや。文太はいつも見ていた風景の、もう一つの風景をみたような、そんな気がしていた。

公園ではセミが鳴いていく。ミンミン、アンアンとないてイク。あっ! 母ちゃんを思い出す。

「もう、帰ろ! 」文太が云う。
「まだ、帰ったらアカんよ」姉ちゃんが云う。

暗くなるまで、暗くなるまで、もう少し、待って、待って、辛抱して! まだよ、まだまだ、、、 もう駄目! 
あっ! 母ちゃんを思い出す。
「もう、帰ろ! 」

文太らは、いつもどんぐりマナコのおっちゃんが帰る頃まで、公園で遊んだ。

黄金虫は 虫だ
金蔵建てず 蔵建てず
子供に 水飴 舐めさせた♪
姉ちゃんがまた歌っていた。
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