檸檬

文字数 255文字

「檸檬買ってきてーー 」妻が言った。
その時、俺は身構えた。
「レモンダイエットをするの」俺の不安を見透かしたように妻は言った。.
 
 五十年も前、梶井基次郎の「檸檬」を読んだ。憂鬱なとき何回も読んだ。短編だから書き写しさえした。憂鬱の対義に檸檬があった。爽快感があった。
<檸檬の対義に葡萄がある>そんなことを思いながら買い物に行った。
野菜売り場はごった返している。市井の人が溢れ、まるでマルシェの市場みたいだ。

あっ、あった、あった。黄色い爆弾の山積み、一個九十八円、ちょうど良い重み。

俺はコロナ鬱をぶっ飛ばそうか。
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