コントレイル(ヒコーキ雲)

文字数 363文字

ゴールを走り抜けた馬、サヨナラの疾風
馬の首筋を優しくポンポンと騎手、感涙
馬の名はコントレイル、ヒコーキ雲の果て

騎手の見上げた青空
滲んでゆれる涙目のなか
風までどよめいて、拍手、拍手

無敗の三冠馬、どうした、どうした?
これが三冠馬? あれは虚像? 白日の幻?
ヒコーキ雲消えちゃった
つい今し方まで飛び交った巷説

勝利のインタビュー、感激、絶句、
「この馬は凄いんです」絞り出すかのように
「本当に強いんです」言葉をつないだ騎手

「3,000米を走れる馬じゃないのです」
騎手は訥々(とつとつ)としゃべる
「なのに、昨年、菊花賞を勝ったのです」

ふたたび「本当に強いんです」
トドメさすかのような騎手の声

最後のレースの最後の脚、上がり33.7秒

コントレイルは一礼するかのように
ターフを去って行く、嘶きひとつ残して
さよなら、チャォウ、アディオス、グッバイ

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