まぐわい

文字数 647文字

少年は鉄棒の上にいた 
彼は青空を見たくって 逆上がりをした
海原を見たくって 前回りをした
逆手は順手に 順手は逆手に
少年は青空と海原が同化するまで回り続けた

360度の回転は
180度の錯誤の転回になった

あの日 少年は虚偽の裏側 それを見た
あの日から 彼は凸凸と走り 
イザナキいざ泣いた

少女はひざまずき 一眼レフから 
堤防の彼岸花を見つめていた
ジーンズの腰からはみ出た赤パン
群生の彼岸花からはみ跳んだバッタに
彼女は驚きの血を滲ませ 
夕焼けに同化するまで 
彼岸花を見つめていた
影沈むまで彼岸花を見つめていた

あの日 少女は真実のフォルムというもの それを見た
あの日から 彼女は聖なる凹みへ 
イザナミいざなう主を求めた

表は裏に支えられ 裏は表に支えられ 
上ば下へ 下は上へ
前は後ろを補い 後ろは前を補う 
主は従に 従は主に
アンドロはギュノスを慕い 
ギュノスはアンドロを慕う
イザナギはイザナミを求め 
イザナミはイザナギを求める
凸は凹を浄化し 凹は凸を浄化する

完璧な円は右半円の真実と 
左半円の虚偽との背中あわせ
表裏一体の謎合わせ
純粋な円は上半円の秩序と 
下半円の混乱とのかみ合わせ
歯車が人を乗せて回る 平衡だバランスだ

少年と少女は 右手と左手でまぐわう
彼と彼女は 上唇と下唇でまぐわう
アンドロとギュノスは 
野生の指と舌でまぐわう
イザナギとイザナミは 凸と凹でまぐわう

ミトコンドリア・イブからの 
約束事のように
ヒトとヒトはまぐわうのだ
終焉なんてない 人は生死をまわる 
まぐわいめぐる
まるでそれはみとのまぐわいだ
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