十二月、町

文字数 415文字

十二月の町が好きだ
特に、月の半ばの昼半ば
天気の良い日の町
地上なのに 冬なのに
青空を見透かした雲海さながら
天に犇めきあった雲だから

歩道橋を上がったところ
沖縄三線のもの哀しい音に
主よみもとに近づかん…… と
謎めいた長髪に
髭の男の怪しい歌声
三線の響きと不調和ゆえに
切なささらに今年もそうだった

そこすぎると年の瀬いっそう
エスカレーターから聞こえる
「――ベルトにおつかまりになり
黄色い線の内側にお乗りください」
「小さなお子様をお連れのお客様は
手をつなぎ…… 」と
ジングルベルの向うへ

いまある子達の危険を顧みぬ所業
あっ 危ないと
きのうあった子達の喚きちらした声
あしたある子達の遺伝子まで

きのう過ぎぬ間にいま怠りない町
こも巻きされた木のように
あしたの支度に余念がない

混沌のなか見極めようと枯葉を落とせ 
落とせと 総括にならぬ総括なら
一枚の葉片かアナリシスか

いまある佇まい
きのうから征くあしたへ還る
一緒くたになった十二月の町
そんな処に佇んで…… 
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