乗り移った子供の無念

文字数 647文字

 天の邪鬼、その昔話を知っているだろうか? 美人に成り代わって幸せな結婚を目論んだブスが、雉に乗り移った美人に真実を話され、罰を下される昔話だ。

 そんな昔話だが、現代にも似た出来事があった。あるお宅には幼児が居て、その幼児より前から居る白い鳥が居た。それで、白い鳥の方が幼児より大切にされていてね。ある日のことだった、幼児が鳥籠を掴もうとした。それを見た親がね、幼児が白い鳥に危害を加えると思いこんだ。そして、無罪の幼児を大人の力で目一杯突き飛ばした。

 幼児は勢い良く椅子の角に頭をぶつけた。力任せに幼児を従わせる様な親だから、対策もしていなかった。親が白い鳥に安否を確認する言葉をかける中、頭を強く打った幼児は放置された。悲しいことに幼児は亡くなり、その傷が故意かどうかは証明できなかった。ここまでは、珍しい話でもない。ちょくちょく似たニュースが流れるから。

 ただ、その事故の後で、白い鳥が昔話を話す様になった。それで、一儲けしようと思った飼い主は動画を撮影してアップした。その動画は有名になって、調子に乗った飼い主は、白い鳥が話す様子をライブ配信することにした。

 飼い主の前口上の後、画面に大写しになる白い鳥。そして、大きく嘴を開いて発したと言う。

「ママ、痛い! ママ、痛い! なんで助けてくれなかったの!」

 撮影者は動画を削除したが、録画された動画は瞬く間に広まった。その動画は、ある時刻に再生すると背後に幼児の泣き顔が映ると言う噂も直ぐに広まり、動画を観た人は金縛りにまであったそうだ。
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