哀れなる子のウタ
文字数 4,637文字
赤子は泣く。薄暗い部屋の中で。
赤子は泣く。大人達が談笑する中で。
赤子は泣く。暑さの中で苦しんで。
赤子は泣く。体の痛みに耐えかねて。
赤子は泣く。欲しても与えられぬ愛の為。
泣くしか出来ない、その赤子。
されど、泣けども、泣けども、愛は誰からも注がれない。
降りかかる言葉は暴言ばかり。
怯える赤子は更に泣き、暴言もまた酷くなる。
終わらぬ音に耐えかねた、誰かが舌を鳴らすまで、その連鎖は止まらない。
声の連鎖は止まらない。
それでも赤子は泣くしかなく、泣いては声を罵倒され。不潔のままに放置され。
しかし、乳だけは与えられ。出てしまうからと与えられ。
飲みきれなくても罵倒され、飲むのが下手でも罵倒され。歯が生え始めれば、その歯のせいで罵倒され。
それでも生き抜くその赤子。生命力とは残酷だ。生き抜くことは残酷だ。
愛を知らぬそのままに、育ってしまえば苦は続く。愛を知らない、それ故に、他者を愛する力なし。
愛せぬことはひたすら苦しく。愛せぬことは不幸を呼ぶ。
されど現実は残酷で、生き続けることが求められる。幸福より不幸が何倍も起きるとしても。
言葉を覚えた幼児だったが、その言葉に反応する者は居なかった。大人は大人同士で話すばかり、何処へも行けぬ幼児は一人寂しく苦しみ続けるしか出来なかった。
気まぐれに与えられる物は使い古しで、服さえも新しいものを持ってはいなかった。初めての新品は幼稚園に通う為に必要なもので、誰からも譲られないからこその新品であった。
哀れな幼児は、園でも大人に愛を求めた。しかし、一人を優遇する大人はおらず、可愛がられるのはそれまでそうされて育った子供ばかりだった。
愛された子供の肌は柔らかだ。
愛された子供の髪は綺麗だ。
愛された子供の心は強い。
愛された子供は疑うことをしない。
愛された子供は純粋に他者と繋がる。
愛された子供は目が綺麗だ。
疎まれた子供の肌に張りはない。
疎まれた子供の髪は乱れている。
疎まれた子供の心は歪みだす。
疎まれた子供は疑うことしか出来ない。
疎まれた子供は利益を考え他者に近付く。
疎まれた子供は目が濁る。
そうして、そうして、だからこそ、大人達は愛された子ばかりを可愛がり、そうでない子との差は広がる。それが、愛されぬ子を更に追い詰めることになろうとも。
愛されぬ子供の心は凍り付く。
愛されぬ子供の心は飢えている。
愛されぬが故に求め、愛されぬが故に他者を恨む。
愛されぬ子の負の連鎖は続き、生き長らえることは苦しみとなる。
愛されぬことは罪か、それとも罰か。
無垢なりし子への苦痛は絶え間なく、与えられはせぬ愛を羨むばかり。
されど、愛を求めたところで手に入らず、ただただ苦しみ増すばかり。
持たざる者は更に苦しみ、心無き悪によりて追い詰められる。
持たざる者に幸福願うは上辺だけ。
願わくば、その流れが逆転せんことを。
愛されぬ子は愛を知らず、知らぬが故に与えない。
知らぬが故に愛を与えず、他者は次々離れゆく。
教師すらも見放して、生徒を纏める為の犠にする。
不都合が起こる度、起こる度、愛されぬ子を犠にする。
悪事の全てを一人に着せて、偽りの平穏を教師はもたらす。
されど、その平穏は、ただただ犠牲あってこそ。
愛されぬ子の心を犠牲に。
愛されぬ子の体を犠牲に。
愛されぬ子の希望を犠牲に。
愛されぬ子の夢を犠牲に。
愛されぬ子の未来をも犠牲にし、まやかしの平穏は続くのだ。
愛されぬが故に絆を築けず、築けぬが故に利用される。
愛されぬ者は愛を求め。
愛を求めるが故に利用される立場に甘んじる。
それ故、更なる悲劇を生み出して、ぐるりぐるりと落ちてゆく。
愛を知らぬそのままに、ぐるりぐるりと落ちてゆく。
落ちてゆく事実に気付かぬままに、ぐるりぐるりと落ちてゆく。
その事実に気付いたとして、目を背けては落ちてゆく。
行き着く先は地獄か虚無か。
それは誰にも分からない。
落ちた先に何があるのか。
それは落ちた者しか分からない。
それでも、それでも、落ちてゆく、それはとっても悲しくて。
それはとっても苦しくて。
救い無き闇、暗闇に落ちてしまえば苦ばかりで。
落ちた先に光は無くて。
絶望、拒絶、様々な、そう様々な苦に満ちて。
希望や光は遮られ。
ただただ便利なモノとして、生き続けねばならぬのだ。
それでさえも、落ちたなら、受け入れる他に道はなく。
道無き道は険しくて。
蜘蛛の糸など有りはせず、落ちたからにはもがくしか。
落ちた先でもがくしか。
出来ぬ、されども登れもせぬ。
ならば、ならば、それならば。
落ちてしまうその前に。
地を這うしかないそのモノに。
救いよ、救いよ、救済よ。
愛知らぬ者へと降り注げ。
愛されぬ子は愛されぬ子で、生きるすべを身に付ける。
自分を○し、自分を捨てて、自らの心を亡きものにする。
そうして、そうして、愛されぬ子は「大人にとっての良い子」になる。
都合の良い子、便利な子。
返事の良い子、使える子。
成績良い子、任せやすい子。
評判良い子、利用出来る子。
大人の前で良い子を演じ、便利な駒にも成り下がる。
しかし、しかし、それでさえ、愛されぬ子は良い子演じる。
いつか魔法が解けるまで、愛されぬ子は良い子を演じる。
良い子、良い子、あなたは良い子。
だけど、役に立たなけりゃ。
罵声に、呆れ、諸々の、悪意の言の葉降りかかる。
たった一つのミスでさえ、悪意の言の葉降りかかる。
そうして、そうして、愛されぬ子は、報われはせぬ努力を重ねる。
そうして、そうして、愛されぬ子は、救い無き辛苦を味わい続ける。
愛されぬ子に手は差し伸べられず、愛されなかったが故に搾取される。
恵まれて育った者達から、様々なものを搾り取られる。
それでも尚、愛されぬ子は、愛を求めてもがき続けた。
寒い。
寒い。
寒い。
寒い。
心が寒い。
誰か。
誰か。
誰か。
誰か。
優しい誰か。
心を。
心を。
心を。
心を。
どうか温めてはくれまいか。
もし、それが叶わぬなら。
その願いが叶わぬのなら。
一思いに我が心。
凍てつき固き、その心。
粉々に砕き、踏みしめて。
辛苦を感じることのない。
寒さも渇きも何もかも、感じぬ心にしてくれまいか。
それも、それも、それすらも、叶わぬ願いと言うならば。
心の臓に杭穿ち、命も何もなきものに。
そうして、そうして、魂は、醜い体を捨て去って、苦しみ、悲しみ、それらから、逃げることも出来るだろうに。
愛されぬ子が死んだとて、一体誰が悲しむだろう。
愛されぬ子は、利用され。
愛されぬ子は、踏み台にされ。
愛されぬ子は、搾取され。
愛されぬ子は、見捨てられ。
表向きは泣いてみせても、それはただの演技にすぎぬ。
冷たい人と、思われぬ為。
無慈悲な人と、思われぬ為。
喜んでいると、思われぬ為。
顔すら知らぬと、思われぬ為。
愛されぬ子に関わる者は、皆が皆、演技して。
演技と知りつつ、知らぬふり。
演技と知りつつ、知らぬふり。
なぜなら、なぜなら、なぜならば、暴けば自分に返るから。
暴いてしまば当人の、悲しむ姿の嘘さえも。
暴かれ、暴かれ、暴かれて、誰も彼も身内さえ。
その涙さえ偽りと。
お悔やみさえも偽りと。
晒され、晒され、さらけ出されて。
誰一人として得しない。
だから、だから、皆が皆、見ぬ振り見ぬ振り、知らぬ振り。
そうして、そうして、愛されぬ子は、生前死後も愛されぬ。
そうして、そうして、愛されぬ子は、生前死後も苦しむばかり。
愛されぬ子の希望の光は、一体何処にあると言うのか。
愛されぬ子の希望の光は、存在すらしないと言うのか。
それは、それは、その真実は、愛されぬ子が亡くなるまで。
愛されぬ子が、生き絶えるまで。
暴かれることなどありはしない。
生きる意味を見いだせず。
されど、死ぬ理由も見いだせず。
ただひたすら朧気に。
偽りの笑顔貼り付けて。
偽りの生き甲斐口にして。
希薄な希望、濃いは絶望。
愛されることが無き者は、愛する術を知らなくて。
愛されることが無き者は、愛を得る術を知らなくて。
愛されることが無き者は、愛し愛される者を羨み。
愛されぬ者は、愛し愛される者を羨み。
愛されぬ者は、愛し愛される者を恨み。
愛されぬ者は、愛し愛される者を妬み。
そうして、更に苦しみ重ね、愛受けぬままに涙する。
何故、愛されぬかも知らぬまま、ただただ苦しみ涙する。
涙で苦しみ消えることなく、涙に溶けた悲しみは、涙と共に広がって。
涙に溶けた悲しみは、涙と共に染み込んで。
悲しみ涙は悲しみを呼び、悲しむ心は救われぬ。
その涙を止めるのは、無償の無垢なる愛だけだ。
涙を止める妙薬は、無償の無垢なる愛だけだ。
だけど、だけど、その愛は、滅多なことじゃ注がれない。
だから、だから、だからこそ、愛されぬ者は今日も泣くのだ。
お前さえ居なければ、私は幸せだったのに。
お前さえ居なければ、私は離婚が出来たのに。
お前さえ居なければ、私は自由だったのに。
お前さえ居なければ、私は苦労をしなかった。
お前さえ居なければ。
お前さえ居なければ。
お前さえ居なければ。
お前さえ居なければ。
幾度となく発せられ。
幾度となく苦しめられ。
幾度となく傷付けられ。
幾度となく涙を流し。
涙を流しては罵られ。
涙を流しては頬叩かれ。
涙を流しては侮辱され。
涙を流しては腹を蹴られ。
そうして涙は出なくなり。
そうして涙は枯れ果てて。
傷付く心は硬くなり。
傷付く心は凍り付く。
そうして、そうして、愛されぬ子は、耐える術に長けていく。
そうして、そうして、愛されぬ子は、心を閉ざし口閉じる。
そうして、そうして、愛されぬ子は、他者を羨み破壊を望む。
そうして、そうして、愛されぬ子は、更なる孤独に晒される。
愛されぬ子はそうやって、更なる孤独に晒される。
それを何度も繰り返し、愛されぬ子には敵ばかり。
愛されぬ子には、敵ばかり。
味方、友人、何もかも、愛されぬ子は持てなくて。
悪意ばかりを向けられて。
それでも、愛を知らぬ子供らは、無意識に愛を求めては。
無意識のうちに求めては。
与えられはせぬ現実に、ただただ嘆いて苦しむばかり。
それでも、それでも、愛されぬ子は、あたたかな愛を求め続けた。
愛されぬ子も齢を重ね。
愛されぬ子も大人になる。
されど、愛されることがなき者は、愛する術を知らなくて。
愛されることがなき者は、愛する術を知らなくて。
愛する術を知らない者は、幸せそうな二人を羨み。
愛する術を知らない者は、幸せそうな二人に憧れ。
愛する術を知らない者は、何時しか幸せそうな二人を嫌悪し。
愛する術を知らない者は、その心によって自らまでも嫌悪する。
仲良い二人が幸せそうで。
あんな風になってみたくて。
だけど、だけども、探し方。
あんな風な触れ合いを。
やりたいと思う相手は居らず。
自分を置き換え想像しても、ただただ吐き気がするばかり。
愛されぬままに育った者は、何時しか愛を嫌悪して。
愛されぬままに育った者は、何時しか愛を忌み嫌い。
愛されぬままに育った者は、何時しか愛を拒絶して。
愛されぬままに育った者は、何時しか愛を疎みだす。
そうして、そうして、そうやって、愛されぬままに育った者は、孤独の闇に浸るのだ。
赤子は泣く。大人達が談笑する中で。
赤子は泣く。暑さの中で苦しんで。
赤子は泣く。体の痛みに耐えかねて。
赤子は泣く。欲しても与えられぬ愛の為。
泣くしか出来ない、その赤子。
されど、泣けども、泣けども、愛は誰からも注がれない。
降りかかる言葉は暴言ばかり。
怯える赤子は更に泣き、暴言もまた酷くなる。
終わらぬ音に耐えかねた、誰かが舌を鳴らすまで、その連鎖は止まらない。
声の連鎖は止まらない。
それでも赤子は泣くしかなく、泣いては声を罵倒され。不潔のままに放置され。
しかし、乳だけは与えられ。出てしまうからと与えられ。
飲みきれなくても罵倒され、飲むのが下手でも罵倒され。歯が生え始めれば、その歯のせいで罵倒され。
それでも生き抜くその赤子。生命力とは残酷だ。生き抜くことは残酷だ。
愛を知らぬそのままに、育ってしまえば苦は続く。愛を知らない、それ故に、他者を愛する力なし。
愛せぬことはひたすら苦しく。愛せぬことは不幸を呼ぶ。
されど現実は残酷で、生き続けることが求められる。幸福より不幸が何倍も起きるとしても。
言葉を覚えた幼児だったが、その言葉に反応する者は居なかった。大人は大人同士で話すばかり、何処へも行けぬ幼児は一人寂しく苦しみ続けるしか出来なかった。
気まぐれに与えられる物は使い古しで、服さえも新しいものを持ってはいなかった。初めての新品は幼稚園に通う為に必要なもので、誰からも譲られないからこその新品であった。
哀れな幼児は、園でも大人に愛を求めた。しかし、一人を優遇する大人はおらず、可愛がられるのはそれまでそうされて育った子供ばかりだった。
愛された子供の肌は柔らかだ。
愛された子供の髪は綺麗だ。
愛された子供の心は強い。
愛された子供は疑うことをしない。
愛された子供は純粋に他者と繋がる。
愛された子供は目が綺麗だ。
疎まれた子供の肌に張りはない。
疎まれた子供の髪は乱れている。
疎まれた子供の心は歪みだす。
疎まれた子供は疑うことしか出来ない。
疎まれた子供は利益を考え他者に近付く。
疎まれた子供は目が濁る。
そうして、そうして、だからこそ、大人達は愛された子ばかりを可愛がり、そうでない子との差は広がる。それが、愛されぬ子を更に追い詰めることになろうとも。
愛されぬ子供の心は凍り付く。
愛されぬ子供の心は飢えている。
愛されぬが故に求め、愛されぬが故に他者を恨む。
愛されぬ子の負の連鎖は続き、生き長らえることは苦しみとなる。
愛されぬことは罪か、それとも罰か。
無垢なりし子への苦痛は絶え間なく、与えられはせぬ愛を羨むばかり。
されど、愛を求めたところで手に入らず、ただただ苦しみ増すばかり。
持たざる者は更に苦しみ、心無き悪によりて追い詰められる。
持たざる者に幸福願うは上辺だけ。
願わくば、その流れが逆転せんことを。
愛されぬ子は愛を知らず、知らぬが故に与えない。
知らぬが故に愛を与えず、他者は次々離れゆく。
教師すらも見放して、生徒を纏める為の犠にする。
不都合が起こる度、起こる度、愛されぬ子を犠にする。
悪事の全てを一人に着せて、偽りの平穏を教師はもたらす。
されど、その平穏は、ただただ犠牲あってこそ。
愛されぬ子の心を犠牲に。
愛されぬ子の体を犠牲に。
愛されぬ子の希望を犠牲に。
愛されぬ子の夢を犠牲に。
愛されぬ子の未来をも犠牲にし、まやかしの平穏は続くのだ。
愛されぬが故に絆を築けず、築けぬが故に利用される。
愛されぬ者は愛を求め。
愛を求めるが故に利用される立場に甘んじる。
それ故、更なる悲劇を生み出して、ぐるりぐるりと落ちてゆく。
愛を知らぬそのままに、ぐるりぐるりと落ちてゆく。
落ちてゆく事実に気付かぬままに、ぐるりぐるりと落ちてゆく。
その事実に気付いたとして、目を背けては落ちてゆく。
行き着く先は地獄か虚無か。
それは誰にも分からない。
落ちた先に何があるのか。
それは落ちた者しか分からない。
それでも、それでも、落ちてゆく、それはとっても悲しくて。
それはとっても苦しくて。
救い無き闇、暗闇に落ちてしまえば苦ばかりで。
落ちた先に光は無くて。
絶望、拒絶、様々な、そう様々な苦に満ちて。
希望や光は遮られ。
ただただ便利なモノとして、生き続けねばならぬのだ。
それでさえも、落ちたなら、受け入れる他に道はなく。
道無き道は険しくて。
蜘蛛の糸など有りはせず、落ちたからにはもがくしか。
落ちた先でもがくしか。
出来ぬ、されども登れもせぬ。
ならば、ならば、それならば。
落ちてしまうその前に。
地を這うしかないそのモノに。
救いよ、救いよ、救済よ。
愛知らぬ者へと降り注げ。
愛されぬ子は愛されぬ子で、生きるすべを身に付ける。
自分を○し、自分を捨てて、自らの心を亡きものにする。
そうして、そうして、愛されぬ子は「大人にとっての良い子」になる。
都合の良い子、便利な子。
返事の良い子、使える子。
成績良い子、任せやすい子。
評判良い子、利用出来る子。
大人の前で良い子を演じ、便利な駒にも成り下がる。
しかし、しかし、それでさえ、愛されぬ子は良い子演じる。
いつか魔法が解けるまで、愛されぬ子は良い子を演じる。
良い子、良い子、あなたは良い子。
だけど、役に立たなけりゃ。
罵声に、呆れ、諸々の、悪意の言の葉降りかかる。
たった一つのミスでさえ、悪意の言の葉降りかかる。
そうして、そうして、愛されぬ子は、報われはせぬ努力を重ねる。
そうして、そうして、愛されぬ子は、救い無き辛苦を味わい続ける。
愛されぬ子に手は差し伸べられず、愛されなかったが故に搾取される。
恵まれて育った者達から、様々なものを搾り取られる。
それでも尚、愛されぬ子は、愛を求めてもがき続けた。
寒い。
寒い。
寒い。
寒い。
心が寒い。
誰か。
誰か。
誰か。
誰か。
優しい誰か。
心を。
心を。
心を。
心を。
どうか温めてはくれまいか。
もし、それが叶わぬなら。
その願いが叶わぬのなら。
一思いに我が心。
凍てつき固き、その心。
粉々に砕き、踏みしめて。
辛苦を感じることのない。
寒さも渇きも何もかも、感じぬ心にしてくれまいか。
それも、それも、それすらも、叶わぬ願いと言うならば。
心の臓に杭穿ち、命も何もなきものに。
そうして、そうして、魂は、醜い体を捨て去って、苦しみ、悲しみ、それらから、逃げることも出来るだろうに。
愛されぬ子が死んだとて、一体誰が悲しむだろう。
愛されぬ子は、利用され。
愛されぬ子は、踏み台にされ。
愛されぬ子は、搾取され。
愛されぬ子は、見捨てられ。
表向きは泣いてみせても、それはただの演技にすぎぬ。
冷たい人と、思われぬ為。
無慈悲な人と、思われぬ為。
喜んでいると、思われぬ為。
顔すら知らぬと、思われぬ為。
愛されぬ子に関わる者は、皆が皆、演技して。
演技と知りつつ、知らぬふり。
演技と知りつつ、知らぬふり。
なぜなら、なぜなら、なぜならば、暴けば自分に返るから。
暴いてしまば当人の、悲しむ姿の嘘さえも。
暴かれ、暴かれ、暴かれて、誰も彼も身内さえ。
その涙さえ偽りと。
お悔やみさえも偽りと。
晒され、晒され、さらけ出されて。
誰一人として得しない。
だから、だから、皆が皆、見ぬ振り見ぬ振り、知らぬ振り。
そうして、そうして、愛されぬ子は、生前死後も愛されぬ。
そうして、そうして、愛されぬ子は、生前死後も苦しむばかり。
愛されぬ子の希望の光は、一体何処にあると言うのか。
愛されぬ子の希望の光は、存在すらしないと言うのか。
それは、それは、その真実は、愛されぬ子が亡くなるまで。
愛されぬ子が、生き絶えるまで。
暴かれることなどありはしない。
生きる意味を見いだせず。
されど、死ぬ理由も見いだせず。
ただひたすら朧気に。
偽りの笑顔貼り付けて。
偽りの生き甲斐口にして。
希薄な希望、濃いは絶望。
愛されることが無き者は、愛する術を知らなくて。
愛されることが無き者は、愛を得る術を知らなくて。
愛されることが無き者は、愛し愛される者を羨み。
愛されぬ者は、愛し愛される者を羨み。
愛されぬ者は、愛し愛される者を恨み。
愛されぬ者は、愛し愛される者を妬み。
そうして、更に苦しみ重ね、愛受けぬままに涙する。
何故、愛されぬかも知らぬまま、ただただ苦しみ涙する。
涙で苦しみ消えることなく、涙に溶けた悲しみは、涙と共に広がって。
涙に溶けた悲しみは、涙と共に染み込んで。
悲しみ涙は悲しみを呼び、悲しむ心は救われぬ。
その涙を止めるのは、無償の無垢なる愛だけだ。
涙を止める妙薬は、無償の無垢なる愛だけだ。
だけど、だけど、その愛は、滅多なことじゃ注がれない。
だから、だから、だからこそ、愛されぬ者は今日も泣くのだ。
お前さえ居なければ、私は幸せだったのに。
お前さえ居なければ、私は離婚が出来たのに。
お前さえ居なければ、私は自由だったのに。
お前さえ居なければ、私は苦労をしなかった。
お前さえ居なければ。
お前さえ居なければ。
お前さえ居なければ。
お前さえ居なければ。
幾度となく発せられ。
幾度となく苦しめられ。
幾度となく傷付けられ。
幾度となく涙を流し。
涙を流しては罵られ。
涙を流しては頬叩かれ。
涙を流しては侮辱され。
涙を流しては腹を蹴られ。
そうして涙は出なくなり。
そうして涙は枯れ果てて。
傷付く心は硬くなり。
傷付く心は凍り付く。
そうして、そうして、愛されぬ子は、耐える術に長けていく。
そうして、そうして、愛されぬ子は、心を閉ざし口閉じる。
そうして、そうして、愛されぬ子は、他者を羨み破壊を望む。
そうして、そうして、愛されぬ子は、更なる孤独に晒される。
愛されぬ子はそうやって、更なる孤独に晒される。
それを何度も繰り返し、愛されぬ子には敵ばかり。
愛されぬ子には、敵ばかり。
味方、友人、何もかも、愛されぬ子は持てなくて。
悪意ばかりを向けられて。
それでも、愛を知らぬ子供らは、無意識に愛を求めては。
無意識のうちに求めては。
与えられはせぬ現実に、ただただ嘆いて苦しむばかり。
それでも、それでも、愛されぬ子は、あたたかな愛を求め続けた。
愛されぬ子も齢を重ね。
愛されぬ子も大人になる。
されど、愛されることがなき者は、愛する術を知らなくて。
愛されることがなき者は、愛する術を知らなくて。
愛する術を知らない者は、幸せそうな二人を羨み。
愛する術を知らない者は、幸せそうな二人に憧れ。
愛する術を知らない者は、何時しか幸せそうな二人を嫌悪し。
愛する術を知らない者は、その心によって自らまでも嫌悪する。
仲良い二人が幸せそうで。
あんな風になってみたくて。
だけど、だけども、探し方。
あんな風な触れ合いを。
やりたいと思う相手は居らず。
自分を置き換え想像しても、ただただ吐き気がするばかり。
愛されぬままに育った者は、何時しか愛を嫌悪して。
愛されぬままに育った者は、何時しか愛を忌み嫌い。
愛されぬままに育った者は、何時しか愛を拒絶して。
愛されぬままに育った者は、何時しか愛を疎みだす。
そうして、そうして、そうやって、愛されぬままに育った者は、孤独の闇に浸るのだ。