運転手が駄目な地域と結論付ければそれまで劇場

文字数 637文字

 これは獣医学部で起きた話です。理系大、特に生物学系の学部では動物実験を行うことがあります。そして、治療すべき動物、その体について知らねばならない獣医学部では日々様々な動物が、その体を捧げているのです。

 しかし、その犠牲に対して心を痛める学生は少なく、有り難みを感じている学生は更に少なかったのです。大学構内には、学問の為に犠牲になった動物の慰霊碑がありました。しかし、そこへ赴く学生はほぼ居らず、存在すら知らぬ学生も多数居ました。日々犠牲になる動物の遺体、それは感染症を防ぐ為にも直ぐに冷凍され、その日付や量が記録されます。そこで供養する者は居らず、一連の作業として遺体は冷凍庫で凍り付くことになるのです。凍った遺体は運び出され、業者によって処理がなされます。つまり、実験の際に採取する以外、動物達の亡骸は何日も大学構内に存在しないのです。

 ところが、動物達の慰霊碑。そこがある場所に、やたらと車がつっこむのです。緑色のコーティングをした、菱形に編まれた金属の網。それを突き破っては慰霊碑の前で停まる。その度に県警は呼ばれ、ちょっとした騒ぎになり、網は事故を起こした運転手が弁償する。そうして網が直って暫くすると、また車が飛び込んで慰霊碑の前で停まる。車道側や運転手にも問題があるにしろ、やたらに慰霊碑へ向かって車がやってくるのです。「だったら、堅牢な壁を作れば良い」とも考えられましたが、それは何年経っても実行に移されず、未だに慰霊碑は車を呼び込んでいるのだと言います。
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