狐狗狸さんと十円玉

文字数 714文字

 これは、小学生が名札に十円玉を隠し持っていた頃の話です。

 多かれ少なかれ、女子というのは占いを好み、それが動物霊頼りでさえやろうとする。それも、紙と筆記具、十円玉が有れば出来る儀式でさえも。地域差はあれ、鳥居に五十音、それに数字や肯否を紙に書く。そして、十円玉を紙に乗せ、複数人の指を十円玉に乗せる。その後で動物霊に語りかけ、知りたいことを尋ねる。色々と曰く付きの儀式だが、小学生の好奇心は怖さを打ち負かしてしまう。

 ある日、グループのリーダーが儀式に使う紙を用意し、一番の下っ端が名札ケースから十円玉を提供。金曜日の放課後、静まり返った教室で儀式は行われたのです。とは言え、誰も彼も小学生。儀式の半ばで先生に帰る様注意されてしまいます。そして、グループのリーダーは、メンバーを悪者にしつつその場を仕切り、儀式に使ったもの全てを持ち帰ってしまいます。

 残されたメンバーは、提供した十円玉を持ち去られた子に同情し、後で返して貰うよう口々に言いました。それから、儀式を行ったメンバーはそれぞれ帰路に就き、帰宅した頃には何を儀式で問うたかも忘れました

 その翌週、彼女達が週始めに登校した日のことでした。あの儀式をやろうと言い出したリーダーが亡くなった。そう担任から聞かされたのです。クラス中がその知らせに呆然とし、儀式を行ったメンバーは泣き出しました。メンバー達はひとしきり泣いた後、儀式が原因ではないかと疑い始めました。

 こっくりさん、それは終わらせ方を間違えると呪われる。儀式に使った十円玉を持ったままだと呪われる。そのどちらもリーダーにはやってしまった。メンバー達は、その日から落ち着かない日々を過ごすことになったと言います。
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