因果応報の理を現せ

文字数 1,346文字

 これは、学校の管理が緩かった時代の話です。既に少年犯罪が凶悪化し、ドラマにまで取り上げられた時代でしたが、教師の頭は直ぐには切り替われなかったのでしょう、校舎外の管理は粗雑なものでした。

 ドラマ等では体育館裏や校舎裏に呼び出されるのが常ですが、田舎で沢山の木が植えられた校庭には死角が沢山ありました。その中には、どこから持ってきたかも不明な、大岩が集められた場所までも。

 そんな死角で、分かり易いいじめが行われていました。今で言うマウンティング女子。犬でさえ他者の痛みを感じ取ると言うのに、平気で他者を追い詰める、まあそんな面倒な女子によるいじめが横行していました。

 いじめられている子に恨みはありませんが、誰だってターゲットになりたくはありません。だから、他の多くの子達と同じく、傍観を決め込んでいました。

 ある日、いじめられている子が登校せず、とうとう心が折れたのかと思いました。しかし、それは間違いで、前日から家に帰っていなかったそうです。この為、授業中に一人一人呼び出されては事情を聞かれ、いじめていた子達は幾らか長く授業から離れていました。

 クラス全員が順に呼び出され、休み時間の話題にはことかきませんでした。そして、私はトイレに行った時に聞いてしまったのです。
「話してねえよな?」
「当たり前! 大体、勝手に頭を打ち付けて」
「でも、誰かが」
 その時予鈴が鳴り、会話の主達はトイレを去りました。聞いてしまったのがバレたら怖いので、間を置いてから個室を出て教室に向かいました。

 次の日、今度はいじめの主犯格が登校しませんでした。しかし、今回は鞄や教科書は教室にあり、それでいて上履きもあったのだと言います。
 主犯格をボスとするグループの子達は明らかに挙動不審で、それは教師の目にもそう映っていたことでしょう。その日に、警察が調査の為に学校内まで来ており、行方不明者を知らない生徒にまで何かが起きたことを知らしめました。

 その様な状態で私達が落ち着ける筈もなく、給食を済ませたら下校することになったのです。ところが、その給食時間に事件が起こりました。挙動不審だった子の一人が主犯格の机に足を引っ掛けたらしく、机ごと倒れたのです。

 その際、机に乗せられたままの鞄も落ち、そこからは薄く色の付いた液体が流れ出ました。倒れた子を女子が心配し机を戻す中、近くに居た男子が落ちた鞄を掴んだのです。
 すると、鞄からはぐっしょり濡れた制服が飛び出し、男子には非難の声が集まりました。

「ちげえよ、俺は戻してやろうと持ち上げただけだ」
 そう言って軽くなった鞄を掲げる男子。その鞄は、底が大きく切り裂かれていました。男子は鞄を机に乗せ、濡れた制服は漸くことを治める気になった担任が拾いました。
 制服からは大量の液体が滴り落ち、その下に着ていた筈のものまで落ちました。そのせいで騒ぎは広がり、給食も食べぬまま私達は教室を追い出されました。

 ですが、そのおかげで見ることが出来たのです。プールに集まる大人と、シートをかけられた

が運び出される光景を。
 ニュースで知ったことですが、プールからは二人の遺体が発見されたそうです。しかし、その内一人は頭部挫傷が致命傷、もう一人の死因は不明だったと言うことでした。
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