恐ろしい声

文字数 758文字

 音楽教師が面倒な宿題を出しやがった。楽器練習の宿題も、それはそれで面倒臭い。だが、「クラシック音楽を聞いて、その詳細と感想を書け」と言う宿題は更に面倒だ。何故って、練習する楽器は学校側から配布されるが、聞くクラシックは自ら探さなければならない。店に行って買うなりせねばならないのだ。幾ら百均でCDを買えると言っても、そこに向かうのも面倒なら金を払うのも嫌だ。

 これが読者感想文なら、指定の紙は配布されるし、何かのついでに図書館で借りれば良い。何より無料だ。働けない年の中学生だから、今ある金は大切にしたい。そして、不意に思い出した。うちに、レコードがあったことを。正直、そのラインナップは知らないのだが、あるにはある。使い方は学校のパソコンで調べた。使用目的の「宿題の為」に嘘はない。

 鬼の居ぬ間、もとい親の居ぬ間にレコードを引っ張り出す。すると、赤くてやたらにペラペラな何かを発見した。その形はレコード盤に似ているが、厚さ敵にどうにも頼りない。だが、もとからペラペラだからこそ、実験するにはもってこいだ。学校で印刷したレコードの使い方を見ながら赤いペラペラをセットし、電源を入れる。始め何も聞こえては来ず、電源を切ろうと手を伸ばした時だった。



 高い声が室内に満ちた。



 慌てて電源を切り、ペラペラを外してしまい込んだ。その後、ちゃんとした黒いレコードは問題無く聞け、宿題もそのケースに書いてあった内容を書き写しつつ終わらせた。その後、勝手に使ったことがバレないよう念入りに片付け、普段使いしていないこともあって使用は露見しなかった。後に、あのペラペラはソノシートと呼ばれるものだと知ったが、収録されていた声が何かは今でも分からないままだ。
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