ぬこ かぼかぼ

文字数 747文字

 ある日、お裾分けを貰った。と言うより、「食べきれないのであげます」と書かれた薄汚い紙に重しとしての南瓜。
 その南瓜は、不格好だった。何をどう育てたらそうなるのか分からないが、上部に三角が二つ。四角い西瓜も在るが、南瓜はどうなんだろうか。
 南の瓜と西の瓜。北と東の瓜はなんだろう。

 さて、誰が置いたかも分からない南瓜。しかも、不格好な南瓜である。捨てたら捨てたで面倒が起きそうで怖い。
 なので、玄関にひっこめておいた。ついでに、マジックで顔を描いておいた。ハロウィンの南瓜と違って緑色だが、まあ良かろう。魔除けが出来そうな物体が出来上がったし。

 ところでこの南瓜テロ、近所で話題になっていたらしい。もっとも、気味が悪いから、誰一人として食べた人は居ないそうだ。そりゃそうだ、誰が置いたかも分からない食べ物なんて、例え野菜でも警戒するわ。

 そんな、謎の南瓜襲来も忘れた頃、近所のゴミ屋敷に警察や報道陣が集まっていた。ついに何か問題を起こしたのかと思いつつニュースを検索する。

 独居の最期―家の中には大量の猫の骸―

 あ、成程、だから警察が居たのか。ちょくちょく自治会の元気な方々が通報しては喧嘩になっていたが、その根源がついに絶たれたのか。まあ、直ぐにゴミが無くなる訳では無いだろうが。

 それから数日して、騒ぎも収まってきた頃、ニュース画像に戦慄した。ゴミ屋敷の中を映した写真にあの不格好な南瓜を見つけたのだ。様々な腐りきっていたものが土になり、そこに生えたらしいが、日光がささなそうな場所で良く育ったな。

 さて、南瓜の出所がおそらくだけど分かったことだし、生ごみの日に出してしまおう。あんな環境で育った南瓜など食べたくはない。南瓜に罪は無いが、命は惜しいからな。
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