魂の宿った土人形

文字数 624文字

 小学校って、卒業生が制作したものが残されているじゃないですか。それも、卒業年からして教師よりも年上だろう人が作った作品まで。そして、作品ってどうしたって劣化するし、作品が何かも判らなくなる。そんな事情もあって、ふざけた誰かが古い作品を壊しても、掃除担当が愚痴る位だったのです。粉々に砕けた作品、材料が何かも分からない。それでいて重いから、捨てるのも大変だったそうです

 そんな事件から暫くして、授業の一環で郵便局の真似事をすることになりました。ポストを用意し、そこに入れられた手紙を集めて届ける。学校内で完結する、ちょっとした職業体験でした。 大抵は、友達へ向けて書かれた手紙でしたが、ある男子の元に奇妙な手紙が届いたのです。送り主の名を持つ生徒は学校に居らず、その内容は「返せ」の二文字のみ。それも、赤い色でした。

 手紙を受け取った男子は犯人を探そうとしましたが、名乗りをあげる人は誰も居ませんでした。そんなことがあった日の下校時間、手紙を受け取った男子は、何人かの目の前でトラックにはねられました。幸い一命は取り留めましたが、長い治療が必要となりました。そして、学校に来られはしない男子宛てに、あの送り主からの手紙が再度投函されたのです。

 その手紙には「これで同じ」とだけ書かれており、仕分けをしていた子が担任にそれを渡しました。その後、担任が手紙をどう処理したかは不明ですが、それっきり差出人が不在の手紙が投函されることはありませんでした。
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