お猫様の威嚇除霊は効果的です

文字数 808文字

 これは修学旅行に行った時の話です。修学旅行、それは大抵、歴史的な場所に赴くもので、そう言った場所には多かれ少なかれ、痛ましい出来事が起きているものです。学校によって班行動の長さは異なると思いますが、生徒の自主性を育てる為にも一切無いところは無いでしょう。そして、宿泊施設では、幾つかの班を纏めて雑魚寝も珍しくない。うちの学校は、クラス毎、男女毎に分けただけの雑魚寝で、日中のメンバー以外とも宿の部屋では顔を合わせることになりました。そして、クラスの中には「自称、見える子」が居たのです。

 その見える子は、何かにつけて霊だ、祟りだ、呪いだと言うので、新学期こそ皆怖がったものの今や失笑を買うばかり。人によっては「痛い構ってちゃん、略してイタカマ」なんて呼んでいたのです。

 そして、そのイタカマは、部屋に入るなり言ったのです。「誰かが霊を連れてきた」って。だけど、皆も慣れたもので、適当に怖がりながら「誰誰?」なんて聞きますが、当のイタカマは答えない。答えたら自分が呪われるからと答えない。そうこうしている内に担任から一喝され、その話題は誰に憑いたか不明のまま終結しました。

 そんなことがあった修学旅行も終わり、帰宅した日のことです。当時、自宅には猫が居り、下校と共にご飯を用意するのもあって毎日出迎えられていたものでした。

 ところが、数日間不在だったせいか、はたまた時間が違うせいか猫が来ない。仕方なしにこちらから向かって行けば、毛を逆立たせ、瞳孔を丸くしての威嚇。しかし、暫くして思い出したのか、唐突の甘々モードに入りました。その可愛さで、修学旅行中の体の重さは一気に吹き飛びました。一気に体が軽くなる、キャットセラピー侮り難し。

 その次の登校日、皆思い思いに旅行の思い出を話題にしていました。それはもう楽しげに。しかし、イタカマだけは不機嫌そうにこちらを見ながら言ったのです。
「チッ、居なくなりやがったか」って。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み