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文字数 2,134文字
ひと波乱を挟んだ後で昼食を済ませてから、昼休みが終わり。
続く五時限目および六時限目でも、教室に来た教員に聞いてみたものの、案の定と言うべきか、答えの内容は変わらなかった。
厄介事には関わりたくない、見なかったことにしていればそのうちなくなると、誰もがそう考えているからなのだろう。
もしも自分が彼らの立場になっていたら、同じことをしていたかもしれないと思うこともなくはないが――それとこれとは、また別の話である。
今の私からすれば、彼らの対応は敵対の意思を示すことに他ならない。
その行動を選択した理由がなんであれ、だ。
そういう意味では、彼らの採った行動は制裁を加えることに何の迷いもなくなる、あるいは良心の呵責が減るという点において、都合はよかったのかもしれないとも言えるのだけれども。それはさておき。
そうやって朝からずっと教員への現状確認をし続けたわけだが、流石にこう何度も繰り返していると、何かしらの変化というのはあるもので。
一番大きな変化が何かと言うと、クラスの人間が教員の受け答えに対して笑うことがなくなったという点だろうか。もっとも、見せる反応が笑いから呆れに変化していただけなんだけど。
私としてもこの下らない問答を繰り返す作業にうんざりしている。しかし、必要な作業だから止める訳にもいかなかった。
彼らの発言は全てレコーダーで記録してある。
これはあとになって――つまり事が大きくなって、彼らが保身に走らざるを得なかったときに、どんな言い訳も許さないような証拠を揃えるために必要な作業なのである。
……もうこの時点で十分ではあるだろうと、思わなくもないけれどね。
そう思う気持ちもあったけれど、証拠はあればあるほどいいのだ。備えすぎて困ることは殆どないのだから、続けられる限りは続けるべきだと判断して問答を繰り返した。
そして、そんな風に愚弄される時間を耐えて――耐え切って。
帰りのHRが終わると、私はすぐに席を立って教室を出た。
これ以上この場所に居ることが色んな意味で耐えられなかった、という面は少なからずあるけれど。教室をすばやく出て行った一番大きな理由は、昨日の女子グループに捕まって時間を無駄にすることを避けるためである。
いじめを開始したその日に、遠因である恭二と接触を持ってしまったのだ。それが悪い意味での刺激となって、こちらに直接危害を加えてくる可能性も否定できなかったからだった。
……人間は群れると判断力が低下するからな。
幸いと言うべきか、彼女たちに絡まれることもなく教室から脱出することが出来たので、その足で図書室へと向かった。
いつも通りであれば家にまっすぐ帰るのだが、今日からしばらくの間はそれもできないためだった。
その理由は単純で、教室から人が居なくならないと設置したカメラを回収することができないからである。
十分に長い時間を置いて回収する方が時間効率はいいのでしばらく放置するというのもひとつの手ではあるが、置いたままにしておくということは誰かが触ってバレる可能性も出てくるということでもある。
何事にもメリットとデメリットがあるものだ。
この場合において、私は後者のデメリットを重視し、量は少なくともひとつずつ確実に証拠を集めていくことを優先したというわけだった。
……まぁこれはこれで、回収しに行く回数が増えてバレる可能性は増えるんだけどね。
そのあたりは気持ちの問題、好みの差でしかないので気にしないことにして。
そんなわけで、教室から完全に人がいなくなろう時間まで暇を潰すために――いや有効に利用してやろうと思って図書室に向かったわけである。
図書室に入ると、中には相変わらずやる気があるんだか無いんだかよくわからない司書くらいしか居なかった。
静かでいいことだ。そう思って手近な席に腰を下ろす。
鞄から今日出された課題用プリントを取り出して、作業に取り掛かる。
「…………」
ただ黙々と課題を片付け、予習を進める。そうこうしている内に、図書室の閉室時間が近づいてくる。
……そろそろいいか。
現在時刻を確認した後で、司書に何かを言われる前に、荷物を片付けてから図書室を出た。
そして、人がいなくなっただろう教室へと向かう。
教室に入り、まずは自分の席の状況を確認する。
机の状態は教室を出る前と変わっていなかった。どうやらいじめの主犯は登校時に作業を行っているようだと、この情報を頭の隅に置いておく。
次に行うのは教室前面に設置したビデオカメラの交換作業である。ACアダプタを取り外して、スピーカー型の本体を回収し、もう一台のビデオカメラを再設置する。
「……さて、これには何が残っているのかねぇ」
昼間の心底下らない教員との問答は間違いなく残っていることはわかっているんだけど。
そんなことを考えた後で、愚痴を吐き続けたくなる衝動を溜め息とともに吐き出した。
そして再設置したビデオカメラの動作ランプが点いていることを確認後、きちんとランプの光が見えないように処置を施してから、教室を出て帰路につくのだった。
続く五時限目および六時限目でも、教室に来た教員に聞いてみたものの、案の定と言うべきか、答えの内容は変わらなかった。
厄介事には関わりたくない、見なかったことにしていればそのうちなくなると、誰もがそう考えているからなのだろう。
もしも自分が彼らの立場になっていたら、同じことをしていたかもしれないと思うこともなくはないが――それとこれとは、また別の話である。
今の私からすれば、彼らの対応は敵対の意思を示すことに他ならない。
その行動を選択した理由がなんであれ、だ。
そういう意味では、彼らの採った行動は制裁を加えることに何の迷いもなくなる、あるいは良心の呵責が減るという点において、都合はよかったのかもしれないとも言えるのだけれども。それはさておき。
そうやって朝からずっと教員への現状確認をし続けたわけだが、流石にこう何度も繰り返していると、何かしらの変化というのはあるもので。
一番大きな変化が何かと言うと、クラスの人間が教員の受け答えに対して笑うことがなくなったという点だろうか。もっとも、見せる反応が笑いから呆れに変化していただけなんだけど。
私としてもこの下らない問答を繰り返す作業にうんざりしている。しかし、必要な作業だから止める訳にもいかなかった。
彼らの発言は全てレコーダーで記録してある。
これはあとになって――つまり事が大きくなって、彼らが保身に走らざるを得なかったときに、どんな言い訳も許さないような証拠を揃えるために必要な作業なのである。
……もうこの時点で十分ではあるだろうと、思わなくもないけれどね。
そう思う気持ちもあったけれど、証拠はあればあるほどいいのだ。備えすぎて困ることは殆どないのだから、続けられる限りは続けるべきだと判断して問答を繰り返した。
そして、そんな風に愚弄される時間を耐えて――耐え切って。
帰りのHRが終わると、私はすぐに席を立って教室を出た。
これ以上この場所に居ることが色んな意味で耐えられなかった、という面は少なからずあるけれど。教室をすばやく出て行った一番大きな理由は、昨日の女子グループに捕まって時間を無駄にすることを避けるためである。
いじめを開始したその日に、遠因である恭二と接触を持ってしまったのだ。それが悪い意味での刺激となって、こちらに直接危害を加えてくる可能性も否定できなかったからだった。
……人間は群れると判断力が低下するからな。
幸いと言うべきか、彼女たちに絡まれることもなく教室から脱出することが出来たので、その足で図書室へと向かった。
いつも通りであれば家にまっすぐ帰るのだが、今日からしばらくの間はそれもできないためだった。
その理由は単純で、教室から人が居なくならないと設置したカメラを回収することができないからである。
十分に長い時間を置いて回収する方が時間効率はいいのでしばらく放置するというのもひとつの手ではあるが、置いたままにしておくということは誰かが触ってバレる可能性も出てくるということでもある。
何事にもメリットとデメリットがあるものだ。
この場合において、私は後者のデメリットを重視し、量は少なくともひとつずつ確実に証拠を集めていくことを優先したというわけだった。
……まぁこれはこれで、回収しに行く回数が増えてバレる可能性は増えるんだけどね。
そのあたりは気持ちの問題、好みの差でしかないので気にしないことにして。
そんなわけで、教室から完全に人がいなくなろう時間まで暇を潰すために――いや有効に利用してやろうと思って図書室に向かったわけである。
図書室に入ると、中には相変わらずやる気があるんだか無いんだかよくわからない司書くらいしか居なかった。
静かでいいことだ。そう思って手近な席に腰を下ろす。
鞄から今日出された課題用プリントを取り出して、作業に取り掛かる。
「…………」
ただ黙々と課題を片付け、予習を進める。そうこうしている内に、図書室の閉室時間が近づいてくる。
……そろそろいいか。
現在時刻を確認した後で、司書に何かを言われる前に、荷物を片付けてから図書室を出た。
そして、人がいなくなっただろう教室へと向かう。
教室に入り、まずは自分の席の状況を確認する。
机の状態は教室を出る前と変わっていなかった。どうやらいじめの主犯は登校時に作業を行っているようだと、この情報を頭の隅に置いておく。
次に行うのは教室前面に設置したビデオカメラの交換作業である。ACアダプタを取り外して、スピーカー型の本体を回収し、もう一台のビデオカメラを再設置する。
「……さて、これには何が残っているのかねぇ」
昼間の心底下らない教員との問答は間違いなく残っていることはわかっているんだけど。
そんなことを考えた後で、愚痴を吐き続けたくなる衝動を溜め息とともに吐き出した。
そして再設置したビデオカメラの動作ランプが点いていることを確認後、きちんとランプの光が見えないように処置を施してから、教室を出て帰路につくのだった。