４－１

　まずは物語の主人公である佐藤茜について説明しよう！
　彼女はどちらかと言えばモブキャラ的立ち位置にいる人物である。
　今回の彼女は、中学三年生だ。
　身長は百六十一センチ。体重は乙女の秘密。そして、肌を極力見せない服装を心がけている一人の少女である。
　彼女は積極的に誰かと敵対することはなかったのだが、そんな彼女であっても事件の中心となったことがある。
　その事件とは他人の――彼女からすれば理不尽、あるいは因果のよくわからない感情による、理解のできない迫害によって起こったものだった。
「いじめというやつだな」
　そう。その通りだ。
　しかし、いじめというものは特別な出来事じゃあない。
　むしろ、どこででも起こりうる当たり前の出来事でさえある。
　誰かが、誰かを――被害の大小、程度の差はあるだろうが――排斥することは、集団で生活する者にとって必然だ。
　その手段が陰口など、小さなコミュニティの内側で済む内はいい。
　ただ、その行いが実際に被害者を出す形になることもある。
　そして彼女の身に起こったこの出来事も、その内の一つということになるわけだ。
　ただ、いじめという行為が誰でも起こしうるものであり。ありふれた、どこでも起こりうる出来事の一つでしかなかったとしても。
　君の採った行動はおそらく、他の誰もが行うそれとは異なった特殊な一例だろう。
「……そうかな？」
　そうだとも。
　いじめが起こってしまった結果――その末路は大抵悲惨なものだが。
　そんな悲惨な末路というものを、加害者全てに等しく与えた被害者などそうはいまい
　君は、君の意思と為すべきを為す行動力のみをもって、それを行ったのだ。
　それは君がただのモブキャラではないことを示す、君の特別な一面だろう。



　では、物語を始めよう！



「そんな大層なことをした覚えはないけれど。
　……今回は、たまたまうまくいった、いじめの解決に関する話だよ」