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文字数 1,053文字
彼女から聞いた話をまとめると、私が意識を失ってから丸一日は目を覚まさなかったらしい。
私はなんだかんだで外泊など滅多にしない人間なので、その話を聞いたときには親への言い訳をどうするかで滅茶苦茶悩んだのだけれど。
「申し訳ないとは思うのだけれど、あなたの家族には記憶処理をさせてもらっているわ。
あなたが家に居なかった理由は友人の家に泊まっていたということにしてあるから、そこまで心配されることはないでしょう。
たとえ、多少の矛盾があったとしてもね」
とのことだったので、素直にまっすぐ帰ればそれで終わるように配慮はされているようで、ほっとした。
正直なところを言えば、その友人というのが誰を指しているのか気になったし、両親そのほかに手を出された事実が少し癇に障るところもあったけれど――そのあたりは騒ぎにしないための方策だと割り切るしかなかった。
また、気になっていた私物の回収は済ませてくれていたらしく、あの日に学校の廊下に放置した鞄は彼女からすぐに受け取ることができて。
話が終われば、あとはただ帰るだけになっていた。
「お世話になりました」
「……真っ直ぐ帰りなさいよ、ちゃんと」
「ええ、寄り道はしません。疲れてますしね。
――では、さようなら」
「……ふん」
そして彼女の家、その玄関でそんなやり取りをした後で、急ぐでもなく家路に着く。
実質的には二日ぶり、体感時間で言えば一日ぶりくらいの我が家となるものの、特別な感慨というのは湧かなかった。
……単に疲れが酷くて、それどころではないのかもしれないけどね。
部屋に辿り着いたら、真っ先にベッドに向かって倒れ込み――そのまま意識が遠のいて。
目が覚めたら既に次の日の昼になっていた。
「……マジかー」
前日の夕食および本日の朝昼と食事にありつけなかったことを残念に思いながら、部屋でのんびりと過ごし。
その後、親に呼ばれて、こころもちいつもより豪華な夕食を食べてから風呂に入り、布団に入る。
ああ素晴らしきかな、平和な日常。
このまま休日がずっと続けばいいのにと思うのは、やはり明日が月曜日だからだろう。
とは言え、学生は平日に学校へと赴き、授業を受けるのがお仕事だ。
それはたとえ個人としてどんなことに巻き込まれようとも、変わることはない。
……正義の味方も大変よね。同情するわ、本当に。
見知った二人のことを思い浮かべながらそう考えた後で、さっさと切り替えないとね、なんて呟いてから瞼を閉じた。