2-12
文字数 1,514文字
王様と別れた後、穴に落ちそうになった以外には何も起こらず、無事にもとの世界へと出ることができた。
その際に彼がこぼした別れの挨拶も簡素なもので、
『今回の約束は果たした』
という言葉のみを残して、私をこの場に残して去っていった。
彼に送り届けてもらった場所は、あの世界に行く前の出発地点であるアヤコの部屋だった。
……まぁ私が勝手にそうだと思っているだけで、本当にそうであるかは知らないけどね。
そんなことを考えながら、視線を巡らせる。
本来なら他人の部屋を観察するような真似はあまりよくないのだろうが、一度私の部屋は見られているのでお互い様だ。気にせずいこう。
そうして部屋の様子を確認していると、大した時間も経っていないはずなのに、アヤコの姿がどこにも見当たらないことに気付く。
……どうしようかな。
部屋の主がいないとなると、迂闊に部屋を物色するわけにもいかないし。そもそも、私が学校に置いてきた荷物も、現状ではどこにあるかわからない。
あの二人かその関係者が回収してくれていればいいけれど、そのあたりを聞いてみようにも相手がいないのではどうしようもなかった。
とは言え、大声を出して人を呼ぶような気力が残っているかと言えばそんなわけもなく。
「……寝ようかな」
目の前にある敷かれたままの布団を見てそう呟いてから、ふらふらと布団に近寄って、倒れ込んだ。
……あー、本当に、疲れたぁ。
「…………」
そしてそのまま目を閉じて、うとうととし始めたころになって――この部屋の襖がぱぁーん! と開かれた。
びっくりして布団から這い出すと、開かれた襖の向こう側にアヤコが立っている姿が見えて。
「あなたいったいどこに行ってたの!?」
こちらと視線が合うや否や、ものすんごい勢いで詰め寄ってきたかと思えば、肩を掴んでこちらをがたがたと揺らし始めた。
流石にこうも揺らされては応答もできん、となんとかアヤコの両手から逃れた後で、溜め息を吐いてから言葉を作る。
「どこに行ってたの、って言われてもどこから説明したものやらなんですが。
……そもそも、なんでそんなに慌ててるんです?」
こちらの質問に、アヤコは即答に近い勢いで答えてくれた。
「あんたの姿が見えなくなってから半日近く経ってるからよ!」
「……マジで?」
返ってきた答えには、驚きのあまりそんな言葉しか出てこなかったけれど。
少しだけ原因について考えて――そういえば、と彼が発したある言葉を思い出した。
確か、あの場所は何もかもがひどく曖昧だという発言をしていたんじゃなかったか。その何もかもに、時間が含まれていたのであれば、彼女と私の間で時間感覚の違いが生じたことにも納得できる。
……やっぱりあの場所はヤバイところだったんだなぁ。
改めて今日体験した出来事を振り返って思う。
よく生きて帰れたよなぁ、と。
そんなことをしみじみと考えていたら、こちらが漏らした言葉に対して彼女の言葉が返ってきて、意識が現実に引き戻される。
「マジよマジ! 大マジよ!!
目が覚めたら布団から居なくなってて、慌てていろんなところを探し回ってたのよこっちは!」
まぁ逆の立場だったら私もそうしてるとは思うけれど。
「そうですか。それは、その、申し訳ないことを」
「謝罪なんていいから。何をしていたのかを教えなさいな!」
彼女はそう言いながら、顔を思い切り近付けてくる。
……これは、ヘタに誤魔化した方があとでこじれるな。
その剣幕を間近にして、降参とばかりに両手をあげた後で、ここから連れ去られたときの話を聞かせることにした。
その際に彼がこぼした別れの挨拶も簡素なもので、
『今回の約束は果たした』
という言葉のみを残して、私をこの場に残して去っていった。
彼に送り届けてもらった場所は、あの世界に行く前の出発地点であるアヤコの部屋だった。
……まぁ私が勝手にそうだと思っているだけで、本当にそうであるかは知らないけどね。
そんなことを考えながら、視線を巡らせる。
本来なら他人の部屋を観察するような真似はあまりよくないのだろうが、一度私の部屋は見られているのでお互い様だ。気にせずいこう。
そうして部屋の様子を確認していると、大した時間も経っていないはずなのに、アヤコの姿がどこにも見当たらないことに気付く。
……どうしようかな。
部屋の主がいないとなると、迂闊に部屋を物色するわけにもいかないし。そもそも、私が学校に置いてきた荷物も、現状ではどこにあるかわからない。
あの二人かその関係者が回収してくれていればいいけれど、そのあたりを聞いてみようにも相手がいないのではどうしようもなかった。
とは言え、大声を出して人を呼ぶような気力が残っているかと言えばそんなわけもなく。
「……寝ようかな」
目の前にある敷かれたままの布団を見てそう呟いてから、ふらふらと布団に近寄って、倒れ込んだ。
……あー、本当に、疲れたぁ。
「…………」
そしてそのまま目を閉じて、うとうととし始めたころになって――この部屋の襖がぱぁーん! と開かれた。
びっくりして布団から這い出すと、開かれた襖の向こう側にアヤコが立っている姿が見えて。
「あなたいったいどこに行ってたの!?」
こちらと視線が合うや否や、ものすんごい勢いで詰め寄ってきたかと思えば、肩を掴んでこちらをがたがたと揺らし始めた。
流石にこうも揺らされては応答もできん、となんとかアヤコの両手から逃れた後で、溜め息を吐いてから言葉を作る。
「どこに行ってたの、って言われてもどこから説明したものやらなんですが。
……そもそも、なんでそんなに慌ててるんです?」
こちらの質問に、アヤコは即答に近い勢いで答えてくれた。
「あんたの姿が見えなくなってから半日近く経ってるからよ!」
「……マジで?」
返ってきた答えには、驚きのあまりそんな言葉しか出てこなかったけれど。
少しだけ原因について考えて――そういえば、と彼が発したある言葉を思い出した。
確か、あの場所は何もかもがひどく曖昧だという発言をしていたんじゃなかったか。その何もかもに、時間が含まれていたのであれば、彼女と私の間で時間感覚の違いが生じたことにも納得できる。
……やっぱりあの場所はヤバイところだったんだなぁ。
改めて今日体験した出来事を振り返って思う。
よく生きて帰れたよなぁ、と。
そんなことをしみじみと考えていたら、こちらが漏らした言葉に対して彼女の言葉が返ってきて、意識が現実に引き戻される。
「マジよマジ! 大マジよ!!
目が覚めたら布団から居なくなってて、慌てていろんなところを探し回ってたのよこっちは!」
まぁ逆の立場だったら私もそうしてるとは思うけれど。
「そうですか。それは、その、申し訳ないことを」
「謝罪なんていいから。何をしていたのかを教えなさいな!」
彼女はそう言いながら、顔を思い切り近付けてくる。
……これは、ヘタに誤魔化した方があとでこじれるな。
その剣幕を間近にして、降参とばかりに両手をあげた後で、ここから連れ去られたときの話を聞かせることにした。