第111話 来訪者
文字数 2,379文字
9時を過ぎ温泉施設にお客がどんどん入ってくる。
最近では1日4~9組は来ているらしい。
そして富裕層ではなく、使用人などの立場の人が多くなったという。
コツコツ貯めたお金を持って来店してくれている。
ありがたいことだね。
「エリアス社長、すみません」
本館の居間でくつろいでいると、門番さんがやって来た。
「エリアス社長にお客様です」
「お客?誰だろう?」
「このアレンの街の領主、ドゥメルグ公爵様の使いで執事のアルマン様と仰せです」
「ドゥメルグ公爵様の使い?なんだろう?」
「エリアス様、あまりお待たせしては失礼になります」
「そうだね、では本館の客間にお通しして」
「はい、畏 まりました」
門番さんはそう言うとさがって行った。
いったいなんの用だろう?
面識もないのに。
俺達はお客が見える前に客間に移動した。
ここには俺の他にノエルさん、アリッサさんとオルガさんがいる。
俺とノエルさん、アリッサさんは奥側のソファに座り、オルガさんはいつでも動けるように後ろに立っている。
トンッ、トンッ、
「どうぞ」
ドアがノックされ俺は答える。
ドアが開くと門番さんがお客様を連れてきてくれた。
「さあ、どうぞ。お入りください」
するとドゥメルグ公爵様の執事だという、50代前半の白銀の髪の男性がいた。
「おかけください」
「突然伺い申し訳ありません。エリアス様で間違いありませんね?」
「はい、そうです」
「私はドゥメルグ公爵様の執事アルマンと申します」
「俺はこの屋敷の主 エリアスです。そして妻のオルガ、アリッサ、ノエルです」
「ほう」
アルマンさんは一瞬、片目を吊り上げた。
そうですよね、一庶民の分際で嫁が3人は多いですよね。
「実はエリアス様に、当家のドゥメルグ公爵様より火急の用があるそうです」
「どのようなご用件でしょうか?」
「それは私にも分かりかねます」
「行かないと駄目なのでしょうか?」
「断れないわ、エリアス君」
アリッサさんが代わりに答える。
「この街で一番偉い貴族はドゥメルグ公爵様よ。この街に居る
「そうですか、では伺うのはいつでしょうか?アルマン様」
「アルマンで結構です。それは今、これからです」
「えっ?今ですか。急ですね」
「そうです。公爵様はとても急いでおられまして。拒否することはできないとアリッサ様にお伝えするようにと…」
「それはどう言う…「分かりました」
俺の声をアリッサさんが遮る。
「アルマン様、少しお時間を頂いても宜しいでしょうか?用意をしてまいります」
「えぇ、お待ちしております」
そして俺はアリッサさんに手を取られ、3階の部屋まで連れられて行く。
「エリアス君。私の責任よ」
「どういうことでしょうか?」
「実は私がエージェントなの。今まで黙っていてごめんね」
「えっ!アリッサさんがですか?!でもどんな関係が…」
「あなたとこの屋敷に住む前にエリアス君には、不干渉 条例が発令されていたの」
「不干渉条例?」
アリッサは不干渉についてエリアスに話した。
不干渉条例。
それは国が総力を挙げて守る、対象となる人のことを言う。
国宝級の才能や能力を持つ人を庇護するためにある条例。
この対象に選ばれた人は24時間、影から専用の組織が身の回りを守る。
国の重鎮に選ばれたと言っても、過言ではないことを。
エージェントの私はエリアス君のことを、情報機関に報告する義務があったこと。
マジック・バッグや魔法が5属性使えること。
これだけでも大変なことだ。
そしてなにより転移者で、女神ゼクシーの加護を持っているということを。
この世界に女神ゼクシーの加護を持つ者は現れたことはなかった。
そしてそれが分かれば国同士が争う口実にもできる。
この世界は唯一の絶対神が女神ゼクシーだ。
その加護を持つものを担ぎ上げ、覇権を握ることもできる。
それでも私はエリアス君のことは言わなかった。
エージェントである前に、一人の女として生きることに決めたからだと話した。
エリアスの側に居るだけで、エージェントの給料が毎月入ることは黙っていいた。
「ありがとう、アリッサさん。俺のことを黙っていてくれて」
「でも国には分かってしまったみたいね。エリアス君はやり過ぎたから」
「やり過ぎた?」
「えぇ、そうよ。これだけのことをやって、気づかないの?」
これだけ~。
俺はくだらないことを頭の中で考えた。
「だから私はドゥメルグ公爵に、報告を怠った罪を問われることになるの」
「そ、そんなことは俺がさせません!!」
「ありがとうエリアス君、嬉しいわ。でも許されないことだったの」
そう言うとアリッサさんは下の居間に降りた。
結局3階に上がったのは公爵家に出かけるための服に着替えるのではなく、話をしただけだった。
私服で行くんだ?
まあ、礼服なんてないけどね。
「失礼があってはいけませんから、私も同行して対応いたします」
ノエルさんがそう言ってくれる。
「ノエルさんが来てくれれば心強いです。ありがとうございます」
「私は屋敷で待っているよ。役には立ちそうも無いからね」
オルガさんがそう言う。
「では準備がよろしければ、出かけましょうか」
アルマンさんはそう言うと立ち上がった。
アルマンさんが乗って来た馬車にみんなで乗り込んだ。
門番さんは驚いた顔をして、オルガさんが片手を振り見送ってくれた。
月末に商業ギルドとアバンス商会に冷蔵庫と照明の魔道具、魔道コンロ、ワイングラス、味元 、家具、浄水器を卸す。
これだけで、もう3億以上だ。
毎月これだけ入ってくればもう安泰と思ったのに。
世の中良いことばかりは続かないことを知った。
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読んで頂いてありがとうございます。
物語はまったり、のんびりと進みます。
最近では1日4~9組は来ているらしい。
そして富裕層ではなく、使用人などの立場の人が多くなったという。
コツコツ貯めたお金を持って来店してくれている。
ありがたいことだね。
「エリアス社長、すみません」
本館の居間でくつろいでいると、門番さんがやって来た。
「エリアス社長にお客様です」
「お客?誰だろう?」
「このアレンの街の領主、ドゥメルグ公爵様の使いで執事のアルマン様と仰せです」
「ドゥメルグ公爵様の使い?なんだろう?」
「エリアス様、あまりお待たせしては失礼になります」
「そうだね、では本館の客間にお通しして」
「はい、
門番さんはそう言うとさがって行った。
いったいなんの用だろう?
面識もないのに。
俺達はお客が見える前に客間に移動した。
ここには俺の他にノエルさん、アリッサさんとオルガさんがいる。
俺とノエルさん、アリッサさんは奥側のソファに座り、オルガさんはいつでも動けるように後ろに立っている。
トンッ、トンッ、
「どうぞ」
ドアがノックされ俺は答える。
ドアが開くと門番さんがお客様を連れてきてくれた。
「さあ、どうぞ。お入りください」
するとドゥメルグ公爵様の執事だという、50代前半の白銀の髪の男性がいた。
「おかけください」
「突然伺い申し訳ありません。エリアス様で間違いありませんね?」
「はい、そうです」
「私はドゥメルグ公爵様の執事アルマンと申します」
「俺はこの屋敷の
「ほう」
アルマンさんは一瞬、片目を吊り上げた。
そうですよね、一庶民の分際で嫁が3人は多いですよね。
「実はエリアス様に、当家のドゥメルグ公爵様より火急の用があるそうです」
「どのようなご用件でしょうか?」
「それは私にも分かりかねます」
「行かないと駄目なのでしょうか?」
「断れないわ、エリアス君」
アリッサさんが代わりに答える。
「この街で一番偉い貴族はドゥメルグ公爵様よ。この街に居る
庶民
は呼び出しを、断ることは出来ないわ」「そうですか、では伺うのはいつでしょうか?アルマン様」
「アルマンで結構です。それは今、これからです」
「えっ?今ですか。急ですね」
「そうです。公爵様はとても急いでおられまして。拒否することはできないとアリッサ様にお伝えするようにと…」
「それはどう言う…「分かりました」
俺の声をアリッサさんが遮る。
「アルマン様、少しお時間を頂いても宜しいでしょうか?用意をしてまいります」
「えぇ、お待ちしております」
そして俺はアリッサさんに手を取られ、3階の部屋まで連れられて行く。
「エリアス君。私の責任よ」
「どういうことでしょうか?」
「実は私がエージェントなの。今まで黙っていてごめんね」
「えっ!アリッサさんがですか?!でもどんな関係が…」
「あなたとこの屋敷に住む前にエリアス君には、
「不干渉条例?」
アリッサは不干渉についてエリアスに話した。
不干渉条例。
それは国が総力を挙げて守る、対象となる人のことを言う。
国宝級の才能や能力を持つ人を庇護するためにある条例。
この対象に選ばれた人は24時間、影から専用の組織が身の回りを守る。
国の重鎮に選ばれたと言っても、過言ではないことを。
エージェントの私はエリアス君のことを、情報機関に報告する義務があったこと。
マジック・バッグや魔法が5属性使えること。
これだけでも大変なことだ。
そしてなにより転移者で、女神ゼクシーの加護を持っているということを。
この世界に女神ゼクシーの加護を持つ者は現れたことはなかった。
そしてそれが分かれば国同士が争う口実にもできる。
この世界は唯一の絶対神が女神ゼクシーだ。
その加護を持つものを担ぎ上げ、覇権を握ることもできる。
それでも私はエリアス君のことは言わなかった。
エージェントである前に、一人の女として生きることに決めたからだと話した。
エリアスの側に居るだけで、エージェントの給料が毎月入ることは黙っていいた。
「ありがとう、アリッサさん。俺のことを黙っていてくれて」
「でも国には分かってしまったみたいね。エリアス君はやり過ぎたから」
「やり過ぎた?」
「えぇ、そうよ。これだけのことをやって、気づかないの?」
これだけ~。
俺はくだらないことを頭の中で考えた。
「だから私はドゥメルグ公爵に、報告を怠った罪を問われることになるの」
「そ、そんなことは俺がさせません!!」
「ありがとうエリアス君、嬉しいわ。でも許されないことだったの」
そう言うとアリッサさんは下の居間に降りた。
結局3階に上がったのは公爵家に出かけるための服に着替えるのではなく、話をしただけだった。
私服で行くんだ?
まあ、礼服なんてないけどね。
「失礼があってはいけませんから、私も同行して対応いたします」
ノエルさんがそう言ってくれる。
「ノエルさんが来てくれれば心強いです。ありがとうございます」
「私は屋敷で待っているよ。役には立ちそうも無いからね」
オルガさんがそう言う。
「では準備がよろしければ、出かけましょうか」
アルマンさんはそう言うと立ち上がった。
アルマンさんが乗って来た馬車にみんなで乗り込んだ。
門番さんは驚いた顔をして、オルガさんが片手を振り見送ってくれた。
月末に商業ギルドとアバンス商会に冷蔵庫と照明の魔道具、魔道コンロ、ワイングラス、
これだけで、もう3億以上だ。
毎月これだけ入ってくればもう安泰と思ったのに。
世の中良いことばかりは続かないことを知った。
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読んで頂いてありがとうございます。
物語はまったり、のんびりと進みます。