第78話 王都
文字数 3,133文字
次の朝、俺達はエターブの町を朝早く出発した。
なぜなら俺がまた『道路整備』をしながら進むと思ったのだろう。
それに商会であるアイザックさんにすれば、国がやらない公共事業を俺がやっているのだから喜ぶだろう。
道がよくなれば王都の行き来も楽になるからだ。
順調に旅は進んでいる。
道が整備されているのもあるが、盗賊や魔物が襲ってこないからだ。
『道路整備』の際にストレージで空間を覆って音は収納している。
しかし最初の収納段階までは音は消せない。
バキバキ、ボキボキと音を立て、木々が無くなりながら進んでいる。
そんな状況で盗賊や魔物が襲ってくることはない。
エターブの町を出て4時間くらい歩いたと思う。
不思議な物でこの世界に転移して1ヵ月近くが経った。
時間も陽の高さや歩いた感覚で、何時くらいなのか分かるようになった。
そして俺達は王都を目指す。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
私の名はノルベール・シュレーダー・ファイネン 。
王都の東にあるウォルド領主だ。
隣接しているフェフナー侯爵の娘の、成人祝いの招きを受け親睦を兼ね伺った。
その帰り道、馬車の車軸に不具合が起き、助けてもらったのがエリアス少年だ。
なんと今や絵本の中の主人公、子供達の憧れの疾風のアリッサ様に出会ったのだ。
そして彼女はエージェントとして、エリアス少年を護衛していると言う。
同行中、彼は不思議な見たことも無い魔法を使っていた。
『手品』と『道路整備』という魔法だ。
『手品』はきっと修繕魔法だ。
私の壊れた馬車の車軸を治したからだ。
『道路整備』は破壊魔法。
木々を一瞬で飲み込んで行く。
この魔法があれば、城壁も意味をなさない。
修繕と破壊魔法。
何と良い組合せだろうか?
そしてこれから王都を目指すと言う。
これだけの能力だ。
国王陛下にお目通りするのだろう。
それがなければ、我が家に招きたいところだ。
これから彼は王都で爵位をもらい、高位の貴族になってもおかしくはない。
金と権力。
これを与えられて嫌がるものはいない。
代々の貴族でなければ爵位は与えらえれても形だけ。
領地経営も無いく、お金だけもらえる場合が多い。
制約もなくあるとすれば、この国に根を張ること。
そして持っている能力によっては、子宝を欲しがる貴族が出てくる。
好きなことをして、好きなだけ女を抱く。
その価値が彼にはある。
もし国に目を付けられていなければ、我が娘エリザの婿に欲しいところだ。
エリザは10歳、エリアス少年は12~14歳くらいだろう。
年齢的にはエリザと丁度いい。
いや、今からでも遅くはない。
第二夫人にしてもらおうか。
しかし第一夫人が決まっているかも、わからないのにそれはないだろうな。
きっと第一夫人は陛下の縁戚関係だろう。
惜しい、実に惜しい。
エリアス少年が王都に着けば、新しい爵位が誕生した報告があるはずだ。
それを待つしかないか…。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
俺達の旅は順調に進む。
ウォルド領を抜け王都に向う。
『道路整備』で道を整備し、疲れたり雨が降れば道横に休憩所を創る。
そしてログハウスを出し休む。
4日で王都に着いた。
道と天気さえよければこんなに早く、着くのかとアイザックさんは驚いていた。
王都で俺達は宿をとった。
『赤い翼』のメンバーは護衛の役目が終ったので宿で待機だ。
そしてアイザックさんはお供2人と、俺を連れ商店に向かう。
持って来た穀物を売るためだ。
そしてアリッサさんとオルガさんも、俺に付いて来てくれる。
宿で休んでいればいいのに。
でも嬉しかった。
そして商店で穀物を売った時に、ストレージから出した。
とても驚かれそのマジック・バッグを、売ってほしいと言われ大変だった。
そして俺達6人は王家御用達の店に向かった。
さすが王家御用達の店『ゴージャス』はとても大きな店だった。
カラン、カラン、カラン、
アイザックさんのお供の1人がドアを開ける。
ドアにはベルが付いており、人が来て開けると鳴って分かる仕組みになっていた。 「いらっしゃいませ」
奥から燕尾服のような、畏まったスーツを着た店員さんがでてきた。
「実は売りたいものがありまして」
「どんなものでしょうか?」
アイザックさんが商談に入る。
俺はストレージから、冷蔵庫は90L、150L、230L各1台ずつを出した。
店員さんの顔が一瞬、驚いた顔をしたがさすがプロ。
おくびにも出さなかった。
冷蔵庫の説明はアイザックさんに代わり俺がした。
次は照明の魔道具を4台、魔道コンロ3台と続けて出した。
すると店員さんの顔色が変わり、お待ちくださいと言われ奥に引っ込んだ。
すると代わりに50代の男性が出て来た。
「お待たせいたしました。店主のグレアムです」
売りに来たものがあまりにも規格外なので、店主を呼んだのだろう。
そして商談はさらに進みワイングラス12個を収めた。
俺達はもう役目は終わったので、店の中を見て回っていた。
「アイザックさんでしたね。この素晴らしい魔道具とワイングラスを、どこで手に入れたのでしょうか?」
「グレアム様、これはアレン領で作られているものです」
「ほう、アレン領で?」
「えぇ、そうです」
「この魔道具やグラスを、定期的に収めては頂けないでしょうか?」
「それはこの魔道具の製作者次第です」
「気難しいのでしょうか?」
「えぇ、とても」(素直です。逆にアリッサさんの許可が要る)
「そうですね、ではこの値段でいかがでしょうか?」
「この値段だと、王都までくる道のりが…」
(とても道が広くなり、早く着くようになった)
「そ、そうですね。ですがあの青年のマジック・バッグがあれば…」
「実は彼が同行するのは、今回限りなのです」
(エリアス様はもう、もうこんな安い仕事は請け負わないだろう)
「それは惜しい。とても残念です」
「ですからこれからは馬車で運ばないといけないのです」
「わかりました。ですが我が商会だけに卸してください」
「それは金額次第ですな」
「しかし何という工房が製作しているのですか?」
工房名?そう言えば聞いていなかった。
「まだ名はないようです」
「そうですか」
「ですが覚えておいてください。これから大陸で名をはせる工房になるはずです」
王都の商談は無事に済み、俺達は無事にアレン領に戻った。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
☆ファイネン公爵の思惑
私はウォルド領主ノルベール・シュレーダー・ファイネン 。
おかしい。
1ヵ月過ぎたが、新しい爵位が生まれたと言う連絡が王都からはない。
いったいエリアス少年の件は、どうなったのだ。
★アリッサの思惑
私はエージェントして、してはいけないことをした。
本来なら王都に行ったとき、情報機関に報告しないといけないはずだった。
でもエリアス君のことは言えなかった。
彼が転移者で女神ゼクシーの加護を持っていることを。
私はエージェントである前に、一人の女として生きることに決めたの。
エリアス君の側に居るだけで、エージェントのお給料が入るのは心が咎めるけど。
それに国に報告すれば、彼を取り込もうとするに違いない。
国は毎日、彼に贅沢を覚えさせ好みの女性を好きなだけ抱ける環境にするだろう。
私はそんなエリアス君が、喜びそうなことは絶対にさせないわ!!
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読んで頂いてありがとうございます。
物語はまったり、のんびりと進みます。
なぜなら俺がまた『道路整備』をしながら進むと思ったのだろう。
それに商会であるアイザックさんにすれば、国がやらない公共事業を俺がやっているのだから喜ぶだろう。
道がよくなれば王都の行き来も楽になるからだ。
順調に旅は進んでいる。
道が整備されているのもあるが、盗賊や魔物が襲ってこないからだ。
『道路整備』の際にストレージで空間を覆って音は収納している。
しかし最初の収納段階までは音は消せない。
バキバキ、ボキボキと音を立て、木々が無くなりながら進んでいる。
そんな状況で盗賊や魔物が襲ってくることはない。
エターブの町を出て4時間くらい歩いたと思う。
不思議な物でこの世界に転移して1ヵ月近くが経った。
時間も陽の高さや歩いた感覚で、何時くらいなのか分かるようになった。
そして俺達は王都を目指す。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
私の名はノルベール・シュレーダー・ファイネン 。
王都の東にあるウォルド領主だ。
隣接しているフェフナー侯爵の娘の、成人祝いの招きを受け親睦を兼ね伺った。
その帰り道、馬車の車軸に不具合が起き、助けてもらったのがエリアス少年だ。
なんと今や絵本の中の主人公、子供達の憧れの疾風のアリッサ様に出会ったのだ。
そして彼女はエージェントとして、エリアス少年を護衛していると言う。
同行中、彼は不思議な見たことも無い魔法を使っていた。
『手品』と『道路整備』という魔法だ。
『手品』はきっと修繕魔法だ。
私の壊れた馬車の車軸を治したからだ。
『道路整備』は破壊魔法。
木々を一瞬で飲み込んで行く。
この魔法があれば、城壁も意味をなさない。
修繕と破壊魔法。
何と良い組合せだろうか?
そしてこれから王都を目指すと言う。
これだけの能力だ。
国王陛下にお目通りするのだろう。
それがなければ、我が家に招きたいところだ。
これから彼は王都で爵位をもらい、高位の貴族になってもおかしくはない。
金と権力。
これを与えられて嫌がるものはいない。
代々の貴族でなければ爵位は与えらえれても形だけ。
領地経営も無いく、お金だけもらえる場合が多い。
制約もなくあるとすれば、この国に根を張ること。
そして持っている能力によっては、子宝を欲しがる貴族が出てくる。
好きなことをして、好きなだけ女を抱く。
その価値が彼にはある。
もし国に目を付けられていなければ、我が娘エリザの婿に欲しいところだ。
エリザは10歳、エリアス少年は12~14歳くらいだろう。
年齢的にはエリザと丁度いい。
いや、今からでも遅くはない。
第二夫人にしてもらおうか。
しかし第一夫人が決まっているかも、わからないのにそれはないだろうな。
きっと第一夫人は陛下の縁戚関係だろう。
惜しい、実に惜しい。
エリアス少年が王都に着けば、新しい爵位が誕生した報告があるはずだ。
それを待つしかないか…。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
俺達の旅は順調に進む。
ウォルド領を抜け王都に向う。
『道路整備』で道を整備し、疲れたり雨が降れば道横に休憩所を創る。
そしてログハウスを出し休む。
4日で王都に着いた。
道と天気さえよければこんなに早く、着くのかとアイザックさんは驚いていた。
王都で俺達は宿をとった。
『赤い翼』のメンバーは護衛の役目が終ったので宿で待機だ。
そしてアイザックさんはお供2人と、俺を連れ商店に向かう。
持って来た穀物を売るためだ。
そしてアリッサさんとオルガさんも、俺に付いて来てくれる。
宿で休んでいればいいのに。
でも嬉しかった。
そして商店で穀物を売った時に、ストレージから出した。
とても驚かれそのマジック・バッグを、売ってほしいと言われ大変だった。
そして俺達6人は王家御用達の店に向かった。
さすが王家御用達の店『ゴージャス』はとても大きな店だった。
カラン、カラン、カラン、
アイザックさんのお供の1人がドアを開ける。
ドアにはベルが付いており、人が来て開けると鳴って分かる仕組みになっていた。 「いらっしゃいませ」
奥から燕尾服のような、畏まったスーツを着た店員さんがでてきた。
「実は売りたいものがありまして」
「どんなものでしょうか?」
アイザックさんが商談に入る。
俺はストレージから、冷蔵庫は90L、150L、230L各1台ずつを出した。
店員さんの顔が一瞬、驚いた顔をしたがさすがプロ。
おくびにも出さなかった。
冷蔵庫の説明はアイザックさんに代わり俺がした。
次は照明の魔道具を4台、魔道コンロ3台と続けて出した。
すると店員さんの顔色が変わり、お待ちくださいと言われ奥に引っ込んだ。
すると代わりに50代の男性が出て来た。
「お待たせいたしました。店主のグレアムです」
売りに来たものがあまりにも規格外なので、店主を呼んだのだろう。
そして商談はさらに進みワイングラス12個を収めた。
俺達はもう役目は終わったので、店の中を見て回っていた。
「アイザックさんでしたね。この素晴らしい魔道具とワイングラスを、どこで手に入れたのでしょうか?」
「グレアム様、これはアレン領で作られているものです」
「ほう、アレン領で?」
「えぇ、そうです」
「この魔道具やグラスを、定期的に収めては頂けないでしょうか?」
「それはこの魔道具の製作者次第です」
「気難しいのでしょうか?」
「えぇ、とても」(素直です。逆にアリッサさんの許可が要る)
「そうですね、ではこの値段でいかがでしょうか?」
「この値段だと、王都までくる道のりが…」
(とても道が広くなり、早く着くようになった)
「そ、そうですね。ですがあの青年のマジック・バッグがあれば…」
「実は彼が同行するのは、今回限りなのです」
(エリアス様はもう、もうこんな安い仕事は請け負わないだろう)
「それは惜しい。とても残念です」
「ですからこれからは馬車で運ばないといけないのです」
「わかりました。ですが我が商会だけに卸してください」
「それは金額次第ですな」
「しかし何という工房が製作しているのですか?」
工房名?そう言えば聞いていなかった。
「まだ名はないようです」
「そうですか」
「ですが覚えておいてください。これから大陸で名をはせる工房になるはずです」
王都の商談は無事に済み、俺達は無事にアレン領に戻った。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
☆ファイネン公爵の思惑
私はウォルド領主ノルベール・シュレーダー・ファイネン 。
おかしい。
1ヵ月過ぎたが、新しい爵位が生まれたと言う連絡が王都からはない。
いったいエリアス少年の件は、どうなったのだ。
★アリッサの思惑
私はエージェントして、してはいけないことをした。
本来なら王都に行ったとき、情報機関に報告しないといけないはずだった。
でもエリアス君のことは言えなかった。
彼が転移者で女神ゼクシーの加護を持っていることを。
私はエージェントである前に、一人の女として生きることに決めたの。
エリアス君の側に居るだけで、エージェントのお給料が入るのは心が咎めるけど。
それに国に報告すれば、彼を取り込もうとするに違いない。
国は毎日、彼に贅沢を覚えさせ好みの女性を好きなだけ抱ける環境にするだろう。
私はそんなエリアス君が、喜びそうなことは絶対にさせないわ!!
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読んで頂いてありがとうございます。
物語はまったり、のんびりと進みます。