第108話 かき氷
文字数 3,424文字
施設も順調で毎日、お客様が来てくれている。
運営はアルバンさんに任せ俺はのんびりだ。
いいのか、15歳でもうこんな生活で。
アリッサさんやオルガさんも、自由にしている。
アリッサさんは時々、どこかに出かけている。
どこに出かけているのかな?
オルガさんは木刀で素振りをしていることが多い。
以前、俺がストレージ内の『創生魔法』で木刀を作り、素振りをしていたのを見てオルガさんの分も創ってあげたんだ。
そして俺と模擬戦をしていることもある。
まあ、もっぱら俺はストレージで防いでいるだけだけど。
今は早朝で俺は庭の草むしりをしている。
と言ってもストレージで、地面上の雑草を収納しているだけだけど。
草木のように生命力の弱いものは、収納できるから便利だ。
本館や施設も営業終了後に、清掃をストレージを使って行っている。
汚れたタオルケットやバスローブも、ストレージ内で汚れを取り綺麗にしている。
ストレージは便利で清掃員いらずだ。
するとアリッサさんがやって来た。
「エリアス君、夕方ノエルさんを迎えに行くから忘れないでね」
そう言われた。
あれ?
商業ギルドのノエルさん?
何か約束していたかな?
「わかりました」
そう言っておいた。
約束していたなら、忘れてましたとは言えないからね。
季節は夏になり、8月になった。
朝は良いが昼間になると気温も高くなり暑い。
暑いと言えばこれだ。
俺は本館の厨房に来ている。
まずストレージ内の『創生魔法』でハンドル式のかき氷機を創った。
そしてシロップはまず水と砂糖だ。
鍋に砂糖と水を加え中火にし沸騰したらその後弱火にし、沸騰させ砂糖をしっかり溶かす。
溶けたら容器にうつし冷蔵庫で冷やす。
ストレージの中にあるフルーツを刻み、潰したものを加えればフルーツシロップのできあがりだ。
「なにをしているの?」
アリッサさんとオルガさんがやって来た。
「かき氷ですよ」
「 かき氷?! 」
「えぇ、氷にシロップをかけたものです。食べてみますか?」
「シロップ?えぇ、お願いするわ」
「私も食べよう」
二人が食べると言うので俺が生活魔法で氷を作りかき氷機に入れる。
そしてハンドルを回す。
ガリ、ガリ、ガリ、ガリ、
ガリ、ガリ、ガリ、ガリ、
ガリ、ガリ、ガリ、ガリ、
「ほう、氷をこんなに細かく削るなんて…」
アリッサさんが感心している。
「シロップはブルーベリーとメロンがあります」
「では私はブルーベリーで」
「私はメロンだな」
「アリッサさんはブルーベリーで、オルガさんはメロンですね。分かりました」
俺はそう言うとフルーツを刻み、潰した汁をシロップに混ぜて氷にかけた。
「さあ、どうぞ。この細長いスプーンで食べてください」
俺は『創生魔法』で特製スプーンを作り二人に渡した。
「ほう、これは?」
オルガさんが感心している。
「冷たくて美味しい!!」
アリッサさんも喜んでくれている。
そして二人で夢中で食べている。
〈〈〈〈〈 キィ~~ン!! 〉〉〉〉〉
「わっ!」
「なんなの?」
二人が頭を押さえている。
「急に冷たいものを食べたから冷えて、キィ~ンとしたのですよ」
「そうなんだ」
「知らなかったわ」
「どうでしょうか?」
「美味しいわ、エリアス君」
「冷たくて甘くておいしいぞ、エリアス」
「そうですか、それは良かった」
それから俺はアルバンさん親子を呼びかき氷を振舞った。
とても美味しいと喜んでもらえた。
この世界では暑いときに、冷たいものを食べることはまずない。
なぜなら冷蔵庫が高級品だからだ。
俺は執事やメイドさん達にも食べてもらおうと思った。
彼らが8時30分に出勤してくるのを待ち食べてもらった。
みんな、とても喜んでくれた。
そして夏場の間だけ限定で施設でも提供することにした。
1杯いくらにすると付き人が食べれないかもしれない。
だから値段は1組いくらにして、受付の際に事前に申し込んでもらう事にした。
最近、来店するお客様は朝9時前には門の前に並んでいる。
営業時間の9~15時までの6時間をフルで楽しみたいらしい。
今日も何組かすでに門の前で待っている。
待たせるのは申し訳ないので、準備が出来次第、門を開ける。
そしてお客様がお風呂に入り、3階の休憩所兼レストランでお茶を飲む。
いつものようにカステラの柔らかさ、美味しさに驚く顔浮かべる人達。
それを見ながらくつろぎ始める昼頃に、メイドや執事達はかき氷を出した。
「お待たせいたしました!これからお待ちかねのかき氷をお出しいたします」
すると辺り一面は静まった。
受付の際にフロントではかき氷は氷を細かく削り、甘いシロップをかけた氷菓、と説明している。
ガリ、ガリ、ガリ、ガリ、
ガリ、ガリ、ガリ、ガリ、
ガリ、ガリ、ガリ、ガリ、
かき氷のハンドルを回す音だけが響く。
「では順番にお並びください!!」
するとお客様は一斉に、かき氷が置いてあるカウンターの前に並ぶ。
「私はブルーベリーで!!」
「私はメロンをお願い!!」
お客様にそれぞれかき氷が手渡されて行く。
「う~ん、冷たくて美味しい!!」
「甘くてさっぱりしている」
「なんて上品な味なのかしら?!」
それぞれが感想を言った後、それはやって来た。
〈〈〈〈〈 キィ~~ン!! 〉〉〉〉〉
〈〈〈〈〈 キィ~~ン!! 〉〉〉〉〉
〈〈〈〈〈 キィ~~ン!! 〉〉〉〉〉
〈〈〈〈〈 キィ~~ン!! 〉〉〉〉〉
〈〈〈〈〈 キィ~~ン!! 〉〉〉〉〉
お客様が頭を押さえている。
う~~ん。
うう~~~ん。
「急に冷たいものを食べたから、頭がキィ~ンとしたのです」
メイドの1人が説明している。
「私も食べたいわ」
「俺にもおくれ」
受付の際にどんなものか分からず、断った人達が食べたいと言い始める。
その場でお金を受け取り手渡していく。
「旨い!!」
「こんな暑い時期に氷を食べ、こんな甘い果実を食することが出来るなんて」
「ここはなんて夢の様な場所なのだ」
お客様はみんな、とても満足した顔をしていた。
その頃、俺は売店に新しい商品を置いていた。
木彫りの熊が大きな魚をくわえている物だった。
そしてもう1つはペナントだ。
細長い二等辺三角形をした長三角の旗。
そこには『アスケル山脈』や『ラウンド・アップ』の建物の刺繡がされている。
「エリアス社長、この木彫りのブラッディベアはきっと売れますよ。しかしこのペナントと言うのは…」
斡旋ギルドから来ている執事さんが言う。
「最近では他の領から訪れてくる人も多いと聞きます。ペナントはこの領に確かに来たと言う証にもなり、良いお土産になるかと思うので」
「それは、そうかもしれませんね!さすが社長です!!」
そして夕方になり俺は、アリッサさんとオルガさんに呼ばれた。
商業ギルドのノエルさんを迎えに行く時間になったからだ。
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
かき氷を始めた夏より『ラウンド・アップ』を訪れるお客は急激に増えていった。
夏場の暑い時期に氷を細かく削り、甘いシロップをかけた氷菓など人々は食べたことが無かった。
夏に氷が食べられるだけで貴重なのに、しかもその氷にかけると言う甘いブルーベリーやメロンシロップという物も希少価値があった。
なぜならブルーベリーやメロンの旬は6月まで。
それが季節外れの8月に新鮮な実のまま、食べれることは夢のようなことだった。
それが口コミで広がり、たくさんの人々が訪れリピーターが多くなった。
『かき氷』はいつまでやるか分からない、『夏場の間限定』だからと聞いたからだ。
夏場はいつまで?という定義が無いから、早くしないと終わってしまう、とたくさんの人々が訪れた。
次の年からは『かき氷はじめました』という、暖簾 を出すようになった。
まさか終わりましたと暖簾を出すのも変なので、暖簾が無くなったら『かき氷』の時期は終わりを告げる。
訪れるたびに帰りに買っていく、木彫りのブラッディベア、そしてペナント。
それは『ラウンド・アップ』に行って来た証だ。
『ラウンド・アップ』を訪れる事は、いつしか富裕層のステータス。
アレン領は観光名所になっていった。
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読んで頂いてありがとうございます。
物語はまったり、のんびりと進みます。
運営はアルバンさんに任せ俺はのんびりだ。
いいのか、15歳でもうこんな生活で。
アリッサさんやオルガさんも、自由にしている。
アリッサさんは時々、どこかに出かけている。
どこに出かけているのかな?
オルガさんは木刀で素振りをしていることが多い。
以前、俺がストレージ内の『創生魔法』で木刀を作り、素振りをしていたのを見てオルガさんの分も創ってあげたんだ。
そして俺と模擬戦をしていることもある。
まあ、もっぱら俺はストレージで防いでいるだけだけど。
今は早朝で俺は庭の草むしりをしている。
と言ってもストレージで、地面上の雑草を収納しているだけだけど。
草木のように生命力の弱いものは、収納できるから便利だ。
本館や施設も営業終了後に、清掃をストレージを使って行っている。
汚れたタオルケットやバスローブも、ストレージ内で汚れを取り綺麗にしている。
ストレージは便利で清掃員いらずだ。
するとアリッサさんがやって来た。
「エリアス君、夕方ノエルさんを迎えに行くから忘れないでね」
そう言われた。
あれ?
商業ギルドのノエルさん?
何か約束していたかな?
「わかりました」
そう言っておいた。
約束していたなら、忘れてましたとは言えないからね。
季節は夏になり、8月になった。
朝は良いが昼間になると気温も高くなり暑い。
暑いと言えばこれだ。
俺は本館の厨房に来ている。
まずストレージ内の『創生魔法』でハンドル式のかき氷機を創った。
そしてシロップはまず水と砂糖だ。
鍋に砂糖と水を加え中火にし沸騰したらその後弱火にし、沸騰させ砂糖をしっかり溶かす。
溶けたら容器にうつし冷蔵庫で冷やす。
ストレージの中にあるフルーツを刻み、潰したものを加えればフルーツシロップのできあがりだ。
「なにをしているの?」
アリッサさんとオルガさんがやって来た。
「かき氷ですよ」
「 かき氷?! 」
「えぇ、氷にシロップをかけたものです。食べてみますか?」
「シロップ?えぇ、お願いするわ」
「私も食べよう」
二人が食べると言うので俺が生活魔法で氷を作りかき氷機に入れる。
そしてハンドルを回す。
ガリ、ガリ、ガリ、ガリ、
ガリ、ガリ、ガリ、ガリ、
ガリ、ガリ、ガリ、ガリ、
「ほう、氷をこんなに細かく削るなんて…」
アリッサさんが感心している。
「シロップはブルーベリーとメロンがあります」
「では私はブルーベリーで」
「私はメロンだな」
「アリッサさんはブルーベリーで、オルガさんはメロンですね。分かりました」
俺はそう言うとフルーツを刻み、潰した汁をシロップに混ぜて氷にかけた。
「さあ、どうぞ。この細長いスプーンで食べてください」
俺は『創生魔法』で特製スプーンを作り二人に渡した。
「ほう、これは?」
オルガさんが感心している。
「冷たくて美味しい!!」
アリッサさんも喜んでくれている。
そして二人で夢中で食べている。
〈〈〈〈〈 キィ~~ン!! 〉〉〉〉〉
「わっ!」
「なんなの?」
二人が頭を押さえている。
「急に冷たいものを食べたから冷えて、キィ~ンとしたのですよ」
「そうなんだ」
「知らなかったわ」
「どうでしょうか?」
「美味しいわ、エリアス君」
「冷たくて甘くておいしいぞ、エリアス」
「そうですか、それは良かった」
それから俺はアルバンさん親子を呼びかき氷を振舞った。
とても美味しいと喜んでもらえた。
この世界では暑いときに、冷たいものを食べることはまずない。
なぜなら冷蔵庫が高級品だからだ。
俺は執事やメイドさん達にも食べてもらおうと思った。
彼らが8時30分に出勤してくるのを待ち食べてもらった。
みんな、とても喜んでくれた。
そして夏場の間だけ限定で施設でも提供することにした。
1杯いくらにすると付き人が食べれないかもしれない。
だから値段は1組いくらにして、受付の際に事前に申し込んでもらう事にした。
最近、来店するお客様は朝9時前には門の前に並んでいる。
営業時間の9~15時までの6時間をフルで楽しみたいらしい。
今日も何組かすでに門の前で待っている。
待たせるのは申し訳ないので、準備が出来次第、門を開ける。
そしてお客様がお風呂に入り、3階の休憩所兼レストランでお茶を飲む。
いつものようにカステラの柔らかさ、美味しさに驚く顔浮かべる人達。
それを見ながらくつろぎ始める昼頃に、メイドや執事達はかき氷を出した。
「お待たせいたしました!これからお待ちかねのかき氷をお出しいたします」
すると辺り一面は静まった。
受付の際にフロントではかき氷は氷を細かく削り、甘いシロップをかけた氷菓、と説明している。
ガリ、ガリ、ガリ、ガリ、
ガリ、ガリ、ガリ、ガリ、
ガリ、ガリ、ガリ、ガリ、
かき氷のハンドルを回す音だけが響く。
「では順番にお並びください!!」
するとお客様は一斉に、かき氷が置いてあるカウンターの前に並ぶ。
「私はブルーベリーで!!」
「私はメロンをお願い!!」
お客様にそれぞれかき氷が手渡されて行く。
「う~ん、冷たくて美味しい!!」
「甘くてさっぱりしている」
「なんて上品な味なのかしら?!」
それぞれが感想を言った後、それはやって来た。
〈〈〈〈〈 キィ~~ン!! 〉〉〉〉〉
〈〈〈〈〈 キィ~~ン!! 〉〉〉〉〉
〈〈〈〈〈 キィ~~ン!! 〉〉〉〉〉
〈〈〈〈〈 キィ~~ン!! 〉〉〉〉〉
〈〈〈〈〈 キィ~~ン!! 〉〉〉〉〉
お客様が頭を押さえている。
う~~ん。
うう~~~ん。
「急に冷たいものを食べたから、頭がキィ~ンとしたのです」
メイドの1人が説明している。
「私も食べたいわ」
「俺にもおくれ」
受付の際にどんなものか分からず、断った人達が食べたいと言い始める。
その場でお金を受け取り手渡していく。
「旨い!!」
「こんな暑い時期に氷を食べ、こんな甘い果実を食することが出来るなんて」
「ここはなんて夢の様な場所なのだ」
お客様はみんな、とても満足した顔をしていた。
その頃、俺は売店に新しい商品を置いていた。
木彫りの熊が大きな魚をくわえている物だった。
そしてもう1つはペナントだ。
細長い二等辺三角形をした長三角の旗。
そこには『アスケル山脈』や『ラウンド・アップ』の建物の刺繡がされている。
「エリアス社長、この木彫りのブラッディベアはきっと売れますよ。しかしこのペナントと言うのは…」
斡旋ギルドから来ている執事さんが言う。
「最近では他の領から訪れてくる人も多いと聞きます。ペナントはこの領に確かに来たと言う証にもなり、良いお土産になるかと思うので」
「それは、そうかもしれませんね!さすが社長です!!」
そして夕方になり俺は、アリッサさんとオルガさんに呼ばれた。
商業ギルドのノエルさんを迎えに行く時間になったからだ。
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かき氷を始めた夏より『ラウンド・アップ』を訪れるお客は急激に増えていった。
夏場の暑い時期に氷を細かく削り、甘いシロップをかけた氷菓など人々は食べたことが無かった。
夏に氷が食べられるだけで貴重なのに、しかもその氷にかけると言う甘いブルーベリーやメロンシロップという物も希少価値があった。
なぜならブルーベリーやメロンの旬は6月まで。
それが季節外れの8月に新鮮な実のまま、食べれることは夢のようなことだった。
それが口コミで広がり、たくさんの人々が訪れリピーターが多くなった。
『かき氷』はいつまでやるか分からない、『夏場の間限定』だからと聞いたからだ。
夏場はいつまで?という定義が無いから、早くしないと終わってしまう、とたくさんの人々が訪れた。
次の年からは『かき氷はじめました』という、
まさか終わりましたと暖簾を出すのも変なので、暖簾が無くなったら『かき氷』の時期は終わりを告げる。
訪れるたびに帰りに買っていく、木彫りのブラッディベア、そしてペナント。
それは『ラウンド・アップ』に行って来た証だ。
『ラウンド・アップ』を訪れる事は、いつしか富裕層のステータス。
アレン領は観光名所になっていった。
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読んで頂いてありがとうございます。
物語はまったり、のんびりと進みます。