第51話 ラミア族

文字数 3,260文字

 私はアリッサ。
 冒険者ギルドの受付をしており、エリアス君を陰から守るエージェント。
 エリアス君は無防備すぎる。
 この屋敷のことを商業ギルドの2人に簡単に話している。

 私はエリアス君と商業ギルドの2人の話を止めさせた。
 そしてアレックさんとノエルさんを、少し離れたところに呼び出した。
 その後をオルガさんも着いてくる。

「アレックさん、これはいったいどう言うことでしょうか?」
「何のことでしょう、アリッサさん」
「エリアス君には不干渉(ふかんしょう)条例が出ていますよね?」




 や、やはり知っていたか。
 私は商業ギルド、ギルマスのアレックだ。
 エリアス君には干渉してはならないと国から通達が出ている。
 国が総力を挙げて守る対象人物だからだ。

 そして対象人物には24時間、影から専用の組織が身の回りを守ると聞く。

 やはり冒険者ギルドが、関わっていたか。
 表向きは仕事の無い人に仕事を与える組織だ。
 だが実情は国が管理しており、荒くれ物や人の動きを管理するためにある組織だと言う人も居る。
 その証拠に冒険者ギルドは、各国ごとに組織が違う。
 
 その中でも目を引くのが目の前にいる女性、疾風(しっぷう)のアリッサ。
 150年くらい前に実際に起こった、ドラゴン大戦の五代英雄の生き残りの1人。
 その内2人は戦いの中で亡くなり、生き残ったのはエルフ族のアリッサ。
 その他にラミア族とホビット族が居たと言う。
 今では子供でも知っている有名な英雄談だ。

 この世界には色んな種族が居る。
 人型に近い種族は人の中で暮らしていける。
 だが容姿が違う者は亜種と嫌われ蔑まれる。
 その者の多くは街では暮らせず、森の中で暮らしていると言う。

 そしてまれに力のある種族は国に雇われ組織に入る。
 冒険者ギルドが、その1つだ。
 受付のアリッサさんは、私が小さい時から知っている。
 そして50年前と容姿が変わらない。

 冒険者ギルドに長く登録している人は気づくだろう。
 だがそんな奴はいない。
 気づいたとしても、『あの人は変らないな』くらいのものだ。
 冒険者では長くやっていけず、しばらくするとみんな辞めるからだ。
 だから誰も気にしない。

 だがギルドマスタークラスになれば違う。
 他のギルドを含め何かの時に備え、亜種と呼ばれる人達を極秘裏に雇っている。

 今回、この屋敷に来たことではっきりわかった。
 エリアス君のこの屋敷は、今までの常識が覆るほどのものだ。
 疾風(しっぷう)のアリッサが側で守るだけの価値はある男なのだと分かった。
 そしてAランクの獅星龍のオルガも付いている。
 なんと彼は強運なんだ。

 そしてこれからは商業ギルドも彼と密にしないといけない。
 なぜなら彼の能力は商売に繋がる物が多いからだ。
 彼に干渉してはいけない。
 だが彼から言ってくる分には構わない。

 アバンス商会のように、冒険者として関わりを持つのもいい手だ。
 彼は無垢すぎる。
 エリアス君は冒険者であると同時に、商業ギルドにも加入している。
 それから我々の入る余地はあるはずだ。

 

 
「分かって頂けましたか、アレックさん」
「わかりました、アリッサさん。今回のことは反省しております。そうだなノエル」
「はい、すみません」
「以後、気を付けてくださいね」

 商業ギルドのアレックさんと話が終わり、私達は広間に戻った。
 するとエリアス君はいない?!

「ねえ、エリアス君はどうしたの?」
 私はそこにいたDランクパーティ『餓狼猫のミーニャ』のエメリナさんに聞いた。
「アリッサさん。エリアス君ならコルネールさんが、ウォ?ウォシュレットの使い方を教えてほしいと言って2人でトイレに行ったわ」

 ここへ来た時にウォシュレットの素晴らしさをつい、語ってしまったからかしら?
「でも、随分出て来ないわ。どうしたのかしら?」

「?!」
 私は嫌な予感がした。
 コルネールは以前から、エリアス君から美味しそうな魔力がすると言っていた。
 彼女の能力は呪術師。
 相手を自分の意のままに操ることができる。

 慌てて私はオルガさんと2人でトイレに向かう。
 ここのトイレは比較的、中でゆっくりできるように作りが大きめだった。
 私は思い切ってトイレのドアを開けた!!
 そこには白目を向いたコルネールを抱きかかえ、途方に暮れるエリアス君が居た。

 私は思わずエリアス君を責めてしまった。

「「 なにをしているのエリアス(君)?! 」」

 オルガさんと同時に聞いていた。
 きっとコルネールが誘ったのだろう。
 分かっている。
 だが胸にモヤモヤが…。

 そしてエリアス君の、いたたまれない様な顔が目から離れない。
 私は物凄い顔をしていたに違いないから。




「なにがあったんだエリアス?!」
 オルガさんが聞いてくる。
 俺は正直に話した。
 
 コルネールさんがウォシュレットを見てみたいと言われ、使い方を説明するため2人でトイレに入ったこと。
 そしてイキナリ両肩を壁に押さえられkissをされたこと。
 なぜか逆らえなかったこと。
 いつの間にか俺も夢中になり、こちらからも反応てしまったことを話した。

「やっぱりね、こらコルネール、起きなさい!!」
 アリッサさんはコルネールさんの肩を揺する。

「うぅ~~ん」
 コルネールさんが目を覚ました。
「いったい、どうしたのコルネール?」

「ア、アリッサ。エリアス君て凄いの、もう受け入れ切れなくて…」
「エリアス君、ごめんね。見たでしょう?コルネールはラミア族なの」
「え、ええ、見ました…」

「彼女はエリアス君の魔力が美味しそうだから、少しもらおうとしたのね」
「魔力ですか?」
「そうよ、魔力を食べる種族もいるの。そして呪術師だから、普段は幻術で下半身は分からない様にしているの。そして魔法であなたを、思い通りにしようとしたのね。でも許してあげて」
「わ、わかりました」

「ほら、あなたからも謝って」
「ご、ごめんなさいエリアス君。あたたの魔力が美味しそうで…。でもエリアス君の魔力は多すぎて、少しのつもりがたくさんもらってしまって…」
「そんなに魔力量があったの?」
「えぇ、そうよ。アリッサより遥かに多そうだわ」
「そんなに?!」
 何百年もかけて鍛えて来た私より魔力量が多いなんて…。


「エリアス君、このことは秘密にしてあげてね。亜種族と言われている人達は多くて、秘密にしないと人の中では生きていけないのよ。どうかお願い」
「はい、わかりました」
「私もこの場を借りて言うわ。今日から一緒に住むんだから。私は森妖精(エルフ)なの」
「そ、そうですか」
 アリッサさん、知ってます。
「エリアス君より、少し年上なの」
 いえ、それは違います。

「あれ?驚かないのエリアス君は?!」
「はい、俺はそんな偏見はありませんから」
「嬉しいわ、エリアス君。今夜からよろしく頼むわね」
「はい、こちらこそ、よろしくお願いします」

「まあ、なんて素敵な子なの!!私も良いわよ」
 コルネールさんが騒ぎ出す。

「なにを言っているの、あなたは!!」
「だってエリアス君はあの時、私に下半身を巻きつかれ、ウロコでゴリゴリしたら、我を忘れて…エリアス君は…、エリアス君は」

「 コルネール、あなたは!! 」
 アリッサさんが大きな声を出す。

 そしてオルガさんはそのやり取りを、笑いながら見ているだけだった。




「な、なに?どうなったの?」
「押さないでよ、シュゼット」
 トイレの前ではDランクパーティ『餓狼猫のミーニャ』の3人が
ドアに耳を付けて聞き入っている。
 そして後ろには商業ギルドのアレックとノエル。
 アバンス商会のアイザックと従者2人が立っていた。

「しかしエリアス様は強者ですな。一緒に暮らしているオルガさんと、今日から暮らすアリッサさんの目を盗んで他の女性に…」
「それにエリアス君のは…。コルネールさんでは受け入れきれないとは…、コホン」
 アレックとアイザックはそんな話をして、従者2人は「羨ましい」と言っている。

 商業ギルドのノエルは顔を赤らめ、『餓狼猫のミーニャ』の3人は空きがあると喜んでいる。


 気を付けろ!構内トイレは、声が外に響きやすいところだ。
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登場人物紹介

★主人公


・エリアス・ドラード・セルベルト


 男 15歳


 黒髪に黒い瞳 身長173cmくらい。


 35歳でこの世を去り、異世界の女神により転移を誘われる。

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