第72話 ログハウス
文字数 2,795文字
ゴゴゴッゴ、ガアガガ、ゴゴゴゴゴ、ガガガガアア、ガガガ、ゴゴゴッゴ、ガアガガ、ゴゴゴゴゴ、ガガガガアア、ガガガ、ゴゴゴッゴ、ガアガガ、ゴゴゴゴゴ、ガガガガアア、ガガガ、ゴゴゴッゴ、ガアガガ、ゴゴゴゴゴ、ガガガガアア、ガガガ、ゴゴゴッゴ、ガアガガ、ゴゴゴゴゴ、ガガガガアア、ガガガ、ゴゴゴッゴ、ガアガガ、ゴゴゴゴゴ、ガガガガアア、
王都に私達は向かっている。
私、アリッサはこれからのことを考える。
相変わらずエリアス君の道路工事の音は続く。
そのおかげで周りの魔物たちは怯えて近寄って来ない。
これだけで十分に護衛として役立っているわ。
今はいいけれど、これからはこれまで通りにはいかないかもしれない。
その一つが魔道具販売だ。
照明魔道具や魔道コンロなど、今まで魔道具は高値で取引されてはいたけど、ここまで便利な魔道具はなかった。
そして画期的なのが冷蔵庫よ。
冷蔵や冷凍ができれば今までのように、日持ちがしない物でも流通しやすくなる。
エリアス君はどうしたいのだろう?
爵位をもらって貴族になる事も可能なのに。
すると馬車の右側を守っているはずの、オルガさんがこちらにやって来た。
今は護衛の必要もないか。
「なあ、よかったのか?」
「なんのことオルガさん?」
「冒険者ギルドを辞めてきたことだよ」
「あぁ、それなら心配はいらないわ」
「どういうこと?」
「それはね。今も私は冒険者ギルドに所属しているのよ」
「でもギルドは辞めて来たって…」
「そうよ辞めて来たわ。でもオルガさんだから言うわ。私がエージェントなのよ!」
「そ、そうなの…」知ってたけど。
「驚いたでしょう。御免ね今まで黙っていて」
「あ、いえ…あはは」
「冒険者ギルドの職員は辞めたけど、エージェントは辞めていないのよ」
「それは…」
「今までは冒険者ギルドに勤めながら、エージェントとしてエリアス君を守って来たわ。でもギルドは辞めたからこれからはエリアス君の側にいて、エージェントとして護衛だけに専念できるのよ」
「なんだ、そういうことか。ではアリッサさんは、毎日エリアスの側に居るだけで給料がもらえるんだね」
「そ、そうなるわね。好きな人の側に、毎日いるのが仕事になったの。うふっ」
それを『結婚』と言うのではないかと、私は思った。
「アリッサさんはこれから、エリアスをどうしたいんだ?」
「それはエリアス君次第ね。彼が立身出世を望むなら、貴族にもなれるわ」
「伝手があると言う事?でもエリアス自身がどう思っているかだな?」
「そうね、私の立場としては、彼が転移者だと国に報告する義務が出てくるわ。でもそれを言ったら大変な事になる。女神ゼクシーの加護を持った人が居るなんて」
「女神ゼクシーを信仰している、シャルエル教が放っておかないだろうな」
「そうね、シャルエル教は愛と慈悲の女神、ゼクシーを信仰している人達だもの。信仰者はこの世界中にいて、国によってはシャルエル教の大神官は国王の権威を凌ぐとも言われているわ」
「唯一無二の絶対神だからな。人族の領民のほとんどがシャルエル教徒だろう」
「でもエリアス君は私を家族として秘密を打ち明けてくれたから、私は女神ゼクシーの加護の事は秘密にしておこうと思うの」
「いいのか?」
「勿論よ。私はエリアス君の味方だもの」
「それを聞いて安心したよ」
俺達は途中で何度か待避所を作りながら休憩を取りながら進んだ。
時間的には15時になったくらいだろうか、テオドーラという小さな村が見えてきたのでそこに入った。
このまま行くと次の町に着くのは夜中になる。
だから今夜はこの村の一部の場所を借り、野営することになるそうだ。
小さな村だから宿屋も無く食堂も無い。
旅人は道で野宿するより、村の中の方が安全なので広場を借りる事が多いと言う。
そして場所代を払えば、誰でも一晩借りすことが出来る。
人数が多い商隊や貴族なら自分達で食事の用意をするので、野菜や肉を購入してもらえば村の収入にもなる。
だからと言って宿屋や、食堂を作るほどの訪問者はいないそうだ。
俺達は村から指定された広場に来ている。
他にも何人か商人らしい人とその護衛の人達が休んでいる。
俺は指定された場所にストレージの中で創っておいたログハウスを出した。
〈〈〈〈〈 ドンッ!! 〉〉〉〉〉
野宿の可能性があると、事前に聞いていたので創っておいたのだ。
ログハウスと言っても、平屋の簡単な家で雨風が凌げればいい程度だけど。
そして横には馬車を引いている、馬が2頭入れるだけの馬小屋も創ってある。
みんな呆然とした顔をしている。
特に他の商人らしいグループが口をアングリと開けている。
「こ、これはなんでしょうか?エリアス様」
「えっ?いやだなアイザックさん、ログハウスを見たことがないのですか?」
「いえ、それはありますが…」
「エリアス。アイザックさんが言っているのは、そう言うことではなく、このログハウスはどうしたんだ?と聞いているんだ」
「なんだオルガさん、決まっているではないですか。野宿の可能性があると、事前に聞いていたので創っておいたのです」
「創っておいたのです、ではないのよ。はあ、もういいわ」
「さあ、みなさんどうぞ」
「俺達も良いのかい?」
『赤い翼』のアドレーさんが聞いてくる。
「えぇ、勿論です。野宿は大変ですから」
俺はみんなをログハウスの中に案内する。
家は三角屋根で入口は正面の右側にドアがある。
中に入ると一段高くなっており靴を脱ぐようになっている。
靴を脱ぎ上がると短い廊下が、正面にあり左側が居住空間だ。
12畳くらいのリビングがあり、その隣に洗面所がある。
そして廊下の突き当りはトイレとシャワールームになっている。
これで一日の汗を流せるんだ。
それにこのログハウスは柱を耐久性が高く木目が美しいヒノキを使い、フローリング材はツヤがあり、衝撃に強いウォルナットを使用している。
木の家のメリットは熱伝導率が低く、一定の室温と湿度が保たれる。
そのため夏は涼しく、冬は暖かい快適な家になるんだ。
今夜はみんなで、リビングで寝ようね。
「買った!!」
どこからかアイザックさんの声が聞こえたような気がした。
そのままスルーして、まずは夕食の準備だ。
『赤い翼』のメンバーは干肉でいいから、と言うけどさすがにそれはね。
村の人に聞くとこの村は畜産をしており、子供を産んだばかりのムッカ(牛もどき)が居ると聞いた。
俺は飼い主のところに行きお乳を分けてもらうことにした。
「お乳を飲むのかい?」と聞かれたので、
「美味しい、シチューになるんです」と俺は答えた。
すると見慣れた塊が1つあった。
「すみません、これは?」
「ああ、これはムッカの乳で作ったのさ。だけど街に行っても臭みで誰も買ってくれなくてね」
「か、買います!全部、買います!!」
それはチーズだった。
王都に私達は向かっている。
私、アリッサはこれからのことを考える。
相変わらずエリアス君の道路工事の音は続く。
そのおかげで周りの魔物たちは怯えて近寄って来ない。
これだけで十分に護衛として役立っているわ。
今はいいけれど、これからはこれまで通りにはいかないかもしれない。
その一つが魔道具販売だ。
照明魔道具や魔道コンロなど、今まで魔道具は高値で取引されてはいたけど、ここまで便利な魔道具はなかった。
そして画期的なのが冷蔵庫よ。
冷蔵や冷凍ができれば今までのように、日持ちがしない物でも流通しやすくなる。
エリアス君はどうしたいのだろう?
爵位をもらって貴族になる事も可能なのに。
すると馬車の右側を守っているはずの、オルガさんがこちらにやって来た。
今は護衛の必要もないか。
「なあ、よかったのか?」
「なんのことオルガさん?」
「冒険者ギルドを辞めてきたことだよ」
「あぁ、それなら心配はいらないわ」
「どういうこと?」
「それはね。今も私は冒険者ギルドに所属しているのよ」
「でもギルドは辞めて来たって…」
「そうよ辞めて来たわ。でもオルガさんだから言うわ。私がエージェントなのよ!」
「そ、そうなの…」知ってたけど。
「驚いたでしょう。御免ね今まで黙っていて」
「あ、いえ…あはは」
「冒険者ギルドの職員は辞めたけど、エージェントは辞めていないのよ」
「それは…」
「今までは冒険者ギルドに勤めながら、エージェントとしてエリアス君を守って来たわ。でもギルドは辞めたからこれからはエリアス君の側にいて、エージェントとして護衛だけに専念できるのよ」
「なんだ、そういうことか。ではアリッサさんは、毎日エリアスの側に居るだけで給料がもらえるんだね」
「そ、そうなるわね。好きな人の側に、毎日いるのが仕事になったの。うふっ」
それを『結婚』と言うのではないかと、私は思った。
「アリッサさんはこれから、エリアスをどうしたいんだ?」
「それはエリアス君次第ね。彼が立身出世を望むなら、貴族にもなれるわ」
「伝手があると言う事?でもエリアス自身がどう思っているかだな?」
「そうね、私の立場としては、彼が転移者だと国に報告する義務が出てくるわ。でもそれを言ったら大変な事になる。女神ゼクシーの加護を持った人が居るなんて」
「女神ゼクシーを信仰している、シャルエル教が放っておかないだろうな」
「そうね、シャルエル教は愛と慈悲の女神、ゼクシーを信仰している人達だもの。信仰者はこの世界中にいて、国によってはシャルエル教の大神官は国王の権威を凌ぐとも言われているわ」
「唯一無二の絶対神だからな。人族の領民のほとんどがシャルエル教徒だろう」
「でもエリアス君は私を家族として秘密を打ち明けてくれたから、私は女神ゼクシーの加護の事は秘密にしておこうと思うの」
「いいのか?」
「勿論よ。私はエリアス君の味方だもの」
「それを聞いて安心したよ」
俺達は途中で何度か待避所を作りながら休憩を取りながら進んだ。
時間的には15時になったくらいだろうか、テオドーラという小さな村が見えてきたのでそこに入った。
このまま行くと次の町に着くのは夜中になる。
だから今夜はこの村の一部の場所を借り、野営することになるそうだ。
小さな村だから宿屋も無く食堂も無い。
旅人は道で野宿するより、村の中の方が安全なので広場を借りる事が多いと言う。
そして場所代を払えば、誰でも一晩借りすことが出来る。
人数が多い商隊や貴族なら自分達で食事の用意をするので、野菜や肉を購入してもらえば村の収入にもなる。
だからと言って宿屋や、食堂を作るほどの訪問者はいないそうだ。
俺達は村から指定された広場に来ている。
他にも何人か商人らしい人とその護衛の人達が休んでいる。
俺は指定された場所にストレージの中で創っておいたログハウスを出した。
〈〈〈〈〈 ドンッ!! 〉〉〉〉〉
野宿の可能性があると、事前に聞いていたので創っておいたのだ。
ログハウスと言っても、平屋の簡単な家で雨風が凌げればいい程度だけど。
そして横には馬車を引いている、馬が2頭入れるだけの馬小屋も創ってある。
みんな呆然とした顔をしている。
特に他の商人らしいグループが口をアングリと開けている。
「こ、これはなんでしょうか?エリアス様」
「えっ?いやだなアイザックさん、ログハウスを見たことがないのですか?」
「いえ、それはありますが…」
「エリアス。アイザックさんが言っているのは、そう言うことではなく、このログハウスはどうしたんだ?と聞いているんだ」
「なんだオルガさん、決まっているではないですか。野宿の可能性があると、事前に聞いていたので創っておいたのです」
「創っておいたのです、ではないのよ。はあ、もういいわ」
「さあ、みなさんどうぞ」
「俺達も良いのかい?」
『赤い翼』のアドレーさんが聞いてくる。
「えぇ、勿論です。野宿は大変ですから」
俺はみんなをログハウスの中に案内する。
家は三角屋根で入口は正面の右側にドアがある。
中に入ると一段高くなっており靴を脱ぐようになっている。
靴を脱ぎ上がると短い廊下が、正面にあり左側が居住空間だ。
12畳くらいのリビングがあり、その隣に洗面所がある。
そして廊下の突き当りはトイレとシャワールームになっている。
これで一日の汗を流せるんだ。
それにこのログハウスは柱を耐久性が高く木目が美しいヒノキを使い、フローリング材はツヤがあり、衝撃に強いウォルナットを使用している。
木の家のメリットは熱伝導率が低く、一定の室温と湿度が保たれる。
そのため夏は涼しく、冬は暖かい快適な家になるんだ。
今夜はみんなで、リビングで寝ようね。
「買った!!」
どこからかアイザックさんの声が聞こえたような気がした。
そのままスルーして、まずは夕食の準備だ。
『赤い翼』のメンバーは干肉でいいから、と言うけどさすがにそれはね。
村の人に聞くとこの村は畜産をしており、子供を産んだばかりのムッカ(牛もどき)が居ると聞いた。
俺は飼い主のところに行きお乳を分けてもらうことにした。
「お乳を飲むのかい?」と聞かれたので、
「美味しい、シチューになるんです」と俺は答えた。
すると見慣れた塊が1つあった。
「すみません、これは?」
「ああ、これはムッカの乳で作ったのさ。だけど街に行っても臭みで誰も買ってくれなくてね」
「か、買います!全部、買います!!」
それはチーズだった。