第61話 ローン完済

文字数 2,672文字

 俺達はみんなを見送った後、屋敷の中に入った。
 そして今日からアリッサさんは、俺の家に住む。
 俺に部屋の右隣がオルガさんで、左隣がアリッサさんだ。

 アリッサさんは小さいマジック・バッグを持っていた。
 その中に服などの荷物を入れ持って来たらしい。
 マジック・バッグから荷物を出し、自分の部屋のタンスに仕舞っている。

「後は帰ってきてからね。仕事にいかないと」
 大聖堂の6時の鐘が鳴る。
 冒険者ギルドは仕事が張り出させれるので、朝一番はとても混んでいると聞く。
 いったいどれだけ早起きなんだ?

「早く帰ってきてね、アリッサさん」
「えぇ、もちろんよエリアス君」
 まるで新婚の新妻の様な気分だ。


 商業ギルドが開くのにはまだ時間が早い。
 俺とオルガさんは時間を持て余し、またボーリングをした。
 やり始めると癖になるな。

 大聖堂の8時の鐘がなる頃には、俺達はクタクタになっていた。
 そして時間的にも良いので、オルガさんと2人で商業ギルドに出かけた。

「おはようございます!ノエルさん」
「おはようございます。エリアス様」
 今朝、別れたばかりだけど挨拶しないのも変だからね。
「納品に来ました」
「では、こちらへどうぞ」
 俺とオルガさんは奥の倉庫に案内された。
「では、ここにお願いします」
 そう言われ俺はストレージから、『味元(あじげん)』1,000個をその場に置いた。
 商業ギルドの手数料10%を引いても180万になる。
 入れ物は『創生魔法』で創れるようになり、原価は1個250円。
 利益はそれだけで1,550,000円になる。
 これだけで十分生活できますが…。
 
 そして冷蔵庫は90L、150L、230L各1台ずつ。
 照明の魔道具は6台。
 魔道コンロ7台。
 ワイングラス12個を収めた。

 すると商業ギルドのギルマス、アレックさんがやってきた。

「やあ、エリアス君。納品ごくろうだね」
「いいえ、明日は王都に向かうので、その前にと思いまして」
「では支払いをするから、こちらに来てくれ」

 俺達はそう言われ、アレックさんの部屋に通された。

「これが今回の報酬だ、確認してくれ!!」

 ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン、
    ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン、
  ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン、

 テーブルに大きな袋が何個も置かれた。
「こ、これは…」
「あれ?アリッサさんから聞いてないのかい?」
「えぇ、」
「商業ギルドの税金を引いて、全部で85,680,000円だよ」
「「 え、え~~~~!!! 」」
 俺とオルガさんは2人で驚いている!!

「本当はもっと金額が上がっていても変ではないんだ。たが、エリアス君の店頭価格は仕入れの3倍法則を当てはめると、それほど高くは出来なくてね」

 仕入れの3倍法則????
 あぁ、そう言えば『味元(あじげん)』を卸す時に決めたんだ。
 たしか調味料が高いと普及しないから、価格を抑えることをお願いしたはずだ。
 アレン領内で販売する時は卸値の倍で商業ギルドが商人に販売し、商人はその1.5倍で店頭で販売する。
 まあ仕入れ値の3倍で販売する訳だ。
 アレン領以外に販売する時は、輸送費も掛かるのでそれに該当しないと。

「商業ギルドが高く買うと、アバンス商会はその倍の額で買い、1.5倍で売らないといけないからね。だから店頭価格が高くなるから、アリッサさんに少し安くしてもらったんだよ」
「そうだったんですね」

「アリッサさんは『エリアス君はお金に執着しないから』と言ってたからね」
「え、えぇ、そうなんです。高くてたまにしか売れないなら、少し安く販売して実績を作った方が普及しますから。あは、あははははは!!…」

「さすがエリアス君だな。しかしアバンス商会も勝負にでたな。王都に行けば高値で売れると踏んで、買う事にしたらしい。しかも王都だからと商人相場より少し高く、アリッサさんに買わされていたよ」
「そうなんですか」
 それなら意味がないのでは…。

「『味元(あじげん)』は来月も1,000個頼むよ。魔道器具も評判が良ければ、また売ってくれ」
「そ、そうですね」

「それから綿製品も頼むよ。あちらの方が需要がありそうだからね」
「わかりました、追々(おいおい)に…」
 また言ってしまった。
 最近、追々が口癖だな。


 そして俺はお金を数えた。
 スキル:異世界言語で、お金の単位は『円』に聞こえる。
 しかし実際は違っていてお金は硬貨だ。
 一番大きい硬貨が大金貨で1枚10万円になる。
 今回は85,680,000円だから、大金貨856枚金貨8枚だ。

 そして思った。
 この金額なら家の購入費用が払える。
「アレックさん、このお金で残りの家のお金を払いたいのですが…」
「そう言ってもエリアス君。今月購入してまだ1度も支払いはしていないだろう?」
 そうだった。
 月末払いと言われ月末近くにはなっていたが、まだ一度も返済はしていなかった。

「では一括払いで52,000,000円だ」
「わかりました」
 そう言って俺はまた数え直して、520枚を渡した。
 はあ、それなら最初に言えば良かった。


 そして残りをストレージに収納した。
 ストレージがなければ、持って帰るのが大変だった。

 だからお金がある人は、自分が登録しているギルドに預けるのが普通だった。
 証文をもらい急にお金が必要になれば、近くのギルドで引き出せる。
 ただし金利は付かない。
 手元に大金を置くことが危険だから、預けておくと言うことだ。
 きっとギルド側は、預ったお金で資産運用をしているはずなのに。
 貸し付けて金利を取れる様な産業もないけど。

「これが権利書だ、大切にしろよ。今なら3~5倍で売れそうだがな」
「はい、ありがとうございます。それからボタンの特許申請をします」
「ああ、そうだな。ではこれ記入してくれ」
「わかりました」

 俺は申請書を書き終え、アレックさんに渡した。
「これで誰かがボタンを使ったものを販売すれば、売値の5%が入ってくる」
「そうですか、分かりました」


 俺はまた来月、納品に来ることを話しアレックさんの部屋を出た。
 受付を通り帰ろうとすると、ノエルさんがいたので軽く頭を下げた。

「エリアス様、昨日はありがとうございました。とても楽しかったです」
「喜んで頂けてよかった」

「また遊びに行っても…ゴニュゴニョ…」
「はい?」

「また遊びに行ってもいいかと、聞いているんだエリアス」
 オルガさんにそう言われ、見ると頷かれた。
 
「どうぞ、いつでも来てください」
 そう俺が答えるとノエルさんが、頬を染めとても嬉しそうだった。


 そんなに温泉が気に入ったんだね、ノエルさん。
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登場人物紹介

★主人公


・エリアス・ドラード・セルベルト


 男 15歳


 黒髪に黒い瞳 身長173cmくらい。


 35歳でこの世を去り、異世界の女神により転移を誘われる。

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