第86話 マヨネーズ

文字数 2,873文字

 朝になり俺は1階の居間に降りて行った。
「おはよ!」
 オルガさんが先に起きていた。
「アリッサさんは?」
 オルガさんに聞かれた。
「まだ今日は起きないそうです」
「そ、そうだろうな、やっぱりアリッサでも無理だったか…」
 何が無理だったのだろうか?
 俺は首を傾げた。

「今日はゆっくり寝かせてあげようよ」
 オルガさんにそう言われ、俺は頷いた。
 昨夜アリッサさんはあんなに元気だったのに、いったいどうしたのだろう?

「さあ、今日は2人で朝食を食べに行こう」
「そうですね、オルガさん」



 俺達は屋敷を出て『なごみ亭』に向かった。
「いらっしゃいませ~!!」
 今朝も『なごみ亭』の看板娘、アンナちゃんに迎えられる。

「エリアスお兄ちゃん。オルガおねえちゃん、いらっしゃい!!」
「おはよう、アンナちゃん。2人前頼むね!」
「かしこまりました~」
 そう言うとアンナちゃんは、厨房に向ってオーダーを伝える。
「おとうさん、2人前追加ね!」
「あいよ~」
 奥からビルさんの声が聞こえた。

 今日は醤油ダレの唐揚げだった。
 お皿に千切りにしたキャベツと、唐揚げがのっている。
 そしてキャベツには、ソースをたっぷりかけて食べるのが美味しい。
 肉は貴重だから量はないけど、キャベツがその分あるからこれでお腹が膨れる。
 そして他のお客も食事の量に、満足しているようだ。

 でも俺には足りないと思う物がある。
 それは卵だ。
 しかし養鶏していないから卵が手に入らない。
 森で鳥を捕まえて養鶏場をやるのも良いが、俺達だけでは手が足りなくなる。
 自分達だけで食べる分くらいなら、森に行けばラプタという卵を産む鳥がいる。
 試しに何匹か捕まえてみるか。


 そして生で野菜を食べるなら、やっぱりあれが欲しい。
 でも卵が無い。
 どうすれば? 
 俺は【スキル】世界の予備知識で調べた。
 目の前に検索画面が現れ、パソコンのように調べ物が出来る便利なスキルだ。

 おぉ、これは?!
 これなら作れる!!
「オルガさん」
「なんだい、エリアス」
「市場に行くのを付き合ってもらえませんか?」
「いいよ、お前とならどこでもいくさ」
「また、そんな事を言って。大げさですよ」
 俺達は立ち上がり『なごみ亭』を出て、そのまま市場に向かった。



「なにを買うんだい、エリアス?」
「大豆です」
「大豆?何に使うのさ」
「まあ、見ていてください」
 俺はどうせ買うならと店先に行き、大袋に5つ50kgくらいの大豆を買った。
 ついでに小麦、大麦、小豆も買った。
「そんなにどうするのさ」
 オルガさんは呆れた顔をしている。



 そして屋敷に戻って来た。
 するとアリッサさんが起きて来ていた。
 
「アリッサさん、大丈夫ですか?」
「もう大丈夫よ、心配しないで。ちょっと話があるのオルガさん、いいかしら?」
「なんだい、私に話だなんて」
 2人は3階に上がって行った。

 俺は仕方なく1階の厨房に向った。



 私はオルガを部屋に招いた。
「どういう事よ、オルガさん。いいえ今日からオルガと呼ぶわ」
「それなら私もアリッサと呼ばせてもらうわ。何の事かしら?」
「しらばっくれないでよ、夜のことよ、よ・る・の・こ・と!!」
「昨夜はお楽しみでしたね。それを聞いてほしいのかな?」
「そうじゃなくてエリアス君のことよ。聞いてないわよ、あんなに…」
「あんなに?なんなのかな?」
「あっ、それは…、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ」

「なに?はっきり言ってくれないと、わからないんだけど?」
「そっ、それは…」
 モジ、モジ、モジ、
「な~にかな?」
「た、体力が持たない…」
「はい?」
「体力が持たないわ」
「あっ、やっぱり、あの疾風のアリッサでも駄目だったんだ」
「知っていたの?」
「もちろんよ。で?なにが言いたいのかしら?」
「そう言われても。新しい仲間を探して分散させるしかないわね」
「そうね、口が堅くてエリアス君を愛してくれる人をね」
「そんな人が居るかしら?」
「逆に候補が多くて困りそうだけどね」




 アリッサさん達は話があるみたいだ。
 俺は厨房の中に入り、市場で買った大豆をストレージから出す。
 そして水に浸す。
 それから適度なところで磨り潰し、水を加えて煮つめ汁を()す作業をする。
 これで『豆乳』が出来上がった。

 ボールに豆乳、植物油、酢が無いのでレモン汁、そして塩を少し入れた。

 後はそれを混ぜるだけだ。
 泡立て器を創りかき混ぜるのも良いが、効率を考えて蓋付きの入物を創った。
 その中に材料を入れ、何回かシェイクすればよく混ざる。
 これなら泡立て器と違い、手が疲れないだろう。

 そして出来上がった!!
 何かって??
『マヨネーズ』さ。

 この世界では鳥を養鶏していないため、卵は手に入りずらい。
 鳥を飼い個人で使う分くらいならいいが、食堂で使うとなると量が必要となる。
 そのため手に入りやすい大豆にして、豆乳マヨネーズにしたんだ。

 豆乳にも卵と同じ成分が含まれており、マヨネーズが作れる。
 豆乳特有のクセもほとんどなく使いやすい。
 卵を使わないのでカロリーもオフに!
 何度が分量を調節し『マヨネーズ』が完成した!!


 オルガさん達が降りて来た。
 話が終わったみたいだ。
「出かけますよ、2人共」
「どこにいくの?」
「『なごみ亭』です」



 そして俺達3人は『なごみ亭』にやって来た。
「すみませ~ん」
「あれ?どうしたのエリアス君」
 奥さんのサリーさんが出て来た。
「実はビルさんに、見て頂きたいのもがありまして」
「なにかしら?ちょっと待ってってね」
 そうサリーさんは言うと、厨房からビルさんを呼んできてくれた。

「なんだい、俺に用があるのかい」
「新しい調味料を開発しようと思いまして」
「「「 調味料を開発?? 」」」
 ビルさん達やオルガさんが驚いている。

味元(あじげん)、ソース、醤油という調味料はできました。でもまだ足りません」
「そうかな、それだけでも調理の幅が広がったが…」
「ビルさん、現状に満足せずに次を目指しましょう」
「次だって?」
「厨房をお借りしても良いでしょうか?」
「もちろんだ」

 俺達は厨房の中に入った。
 レタス、きゅうり、人参、キャベツを適当な大きさに切り皿に盛る。 
 そしてマヨネーズを生野菜にかける。
「なんだい、それは?」
「新しい調味料マヨネーズです。ビルさん」

「「「 マヨネーズ?! 」」」

「さあ、みなさんで食べてみてください」
「どれ、どれ」
 アンナちゃん、サリーさん、ビルさん。
 アリッサさん、オルガさんがフォークで野菜を取る。

〈〈〈〈〈 美味しい~!! 〉〉〉〉〉
 みんなの声が揃った。

「こんなに生野菜が美味しいなんて」

「肉にかけても美味しいですよ」
 生野菜をサイドメニューとして、店にも出すことを提案した。

「さっそく今日から店に出してみよう。卸してくれるよなエリアス君」
「もちろんですよ、ビルさん」



 こうしてマヨネーズの納入が決まった。
 数年後、アレン領はマヨネーズ、カレーの香辛料、醤油(蒲焼)タレ。
 そしてカツや、から揚げなどの揚げ物料理で賑わう豊かな街になった。
 それぞれの店で料理は工夫され、たくさんの品数になっていく。
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登場人物紹介

★主人公


・エリアス・ドラード・セルベルト


 男 15歳


 黒髪に黒い瞳 身長173cmくらい。


 35歳でこの世を去り、異世界の女神により転移を誘われる。

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