第69話 祝福
文字数 3,561文字
「ゼクシーかあさん。そろそろ俺は行きますね」
「また来てねエリアス。かあさんは待っているわ」
「えぇ、王都から戻ったらまた来ます」
あぁ~エリアスは行ってしまったわ。
なんだか寂しいものね。
女神になってから数万年。
良縁にも恵まれず独り身だった。
後輩の女神に合コンに誘われても、しょせん私は数合わせ。
数千年の若い女神の方が人気があって、私なんか相手にされない。
しかも最近はその『数合わせ』にも、呼ばれなくなった。
このまま風化していくのかしら?
そんな時だった。
現世とあの世の狭間 に壮年の男性がやって来た。
異世界『エニワン』の新しい風になればと転移を誘った。
彼は承諾し、私に名前を付けてほしいと願った。
そんなことを言われるのは初めてだった。
私はその壮年の男性に、エリアス・ドラード・セルベルトと名付けた。
名を与えると言うことは、力を与えること。
そんな事も忘れて私は彼は名を与え、私の息子になった。
黒髪、黒い瞳の美形の少年。
彼は15歳に若返り人の心を引きつける、雰囲気を持つ少年になっていた。
そんな彼が明日から王都に行くという。
エリアスには将来は安定した職に就いてほしい。
だから結婚も私が気に入った、女性の中からと思っていたのに…。
いきなり嫁2人の姑になるなんて。
子どもが一人暮らしを始め一人で、できるようになると強い寂しさを感じる。
これが母なのね…。
ゼクシーは忘れていた。
ついさっきまでエリアスの事なんて、記憶の隅にしかなかったことを。
一人劇場はさらに続く…。
でも不安だわ。
彼のやることはこの世界の活性化を、極端に進めそうな気がする。
それに周りからも狙われるかもしれない。
誰かが守ってあげないと。
実際にエリアスが強いのか、弱いのかさえ分からない。
そんな変なステータスだから。
でも私は女神だから、天界から彼を見守る事しかできない。
彼が殺されるようなことがあっても、私には干渉することは出来ないわ。
そうだわ!!
それならエリアスの側に居る、この2人の女に守ってもらえばいいのよ。
エリアスを守れるように、2人に祝福を授けてと。
森妖精 は知力が高く、風魔法も得意のようだから…。
2割ほど『知力』と『魔力』を上げて。
彼女はエリアスの盾ね。
それから虎猫族のこの女ね。
な、なんと言うことなの?!
こ、この女は転移して、右も左も分からないエリアスち ゃ ん の…。
エ、エリアスちゃんのチェリーを奪うなんて!!
オルガという女は、どこの馬の、いいえ猫の骨よ!!
で、でも落ち着いて…。
そうだわ、虎猫族の女は戦力になる。
仕方がない。
2割ほど『筋力』と『攻撃力』を上げてあげようかしら。
彼女はエリアスの矛 と。
それからもう1つこの女には、加護をあげることにするわ。
特 別 に ね ・・・。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「さあ、行きましょうか」
俺はお祈りが終わり立ち上がった。
「随分、祈っていたのねエリアス君」
「そうですかアリッサさん」
「まあ、そんなに長いほどでもないがな」
オルガさんに聞くと、2人よりは少し長いくらいだったらしい。
やはり天界での時間の流れは、下界とは違うのか。
あれだけ長く居たのに。
こんな広い空間で、一人は余りにも寂しいだろう。
これからは頻繁に参拝に来よう。
かあさんも寂しそうだったし。
聞くと自分の創生した世界だから、24時間女神は対応しないといけない。
だから休みもないと言う。
母さんが言うには、天界は求人募集を出しても中々女神が集まらない。
最近の若い女神は、お金は欲しいくせに努力はしない。
キツく言うとハラスメント行為だと言われ、こちらが悪くなるそうだ。
仕事は辛くて大変なのは当たり前。
なぜって好きで働いていないから。
生活のため、収入を得るために働いているのに。
無理なく無難な範囲で仕事を選ぶ、これが今の若い子よ!とかあさんは言ってた。
次世代の女神も育ってはいるが、数千年の女神ではまだ任せられないそうだ。
どれだけ奥が深いんだ、女神仕事は。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
俺達3人は教会を出て集合場所の、冒険者ギルドに向って歩く。
するとギルドにはもうDランクパーティー『赤い翼』の4人が居た。
「やあエリアス。久しぶりだな」
「ご無沙汰しております、アドレーさん」
剣士のアドレーさん。
重騎士で片手剣と大きな盾を持ったジェイ さん。
斥候役のシーフで、ショートソードを持ったランダルさん。
紅一点の弓を持ったエリノルさんの、22~26歳の4人組パーティーだ。
ちなみにリーダーのアドレーさんと、エリノルさんはデキている。
「な、なにを言っているんだ?エリアス」
「そ、そうよ、エリアス君たら、もう~」
あれ?
どうしたんだろう?
み、みんな俺の思考が読める超能力があるのか?
「4人共、お久しぶりですね」
知り合いだったのか?
あれ?オルガさんが敬語を使っている。
どうしたんだ?
明日は雨か…。
やめてくれ、これから王都に行くのに…。
「当たり前だろう。同じ冒険者でもみんな私より年上なんだから」
そんなもんですか。
しかしなぜ、俺の心の声と会話ができるんだ?
「口にでてるぞ、エリアス」
そうですか、オルガさん…。
「それにしても。なんでアリッサさんまでここにいるの?」
エリノルさんは不思議そうに聞く。
「それは…」
「みなさん、お早うございます」
アリッサさんが答えようとした時だ。
アバンス商会のアイザックさんがギルドに入って来た。
「本日はみなさん、よろしくお願いいたします」
アイザックさんは受付をして、『赤い翼』と初対面なので挨拶を交わした。
「どうしてアリッサ様が、レザーアーマーを着てここにいるのでしょうか?」
「私も同行しようと思いまして」
「同行ですか?」
「えぇ、護衛も致します。それに料金は頂きません」
「なぜでしょうか?」
「エリアス君の側に居たいからです」
「「 きゃ~!! 」」
ギルドの受付の女性たちが騒ぐ。
「アリッサは昨日からエリアス君と暮らし始めたの。1日で離れ離れは寂しいよね」
受付のコルネールさんが一言余計な事を…。
「あの誰に誘われても、なびかなかったアリッサさんが…」
「俺もファンだったのに」
「あんな若い男が良いのか…」
残っていた男の冒険者達が騒ぐ!!
「アリッサさんは、エリアス君と…そう…離れたくないよね」
『赤い翼』のエリノルさんが、一人納得している。
「アリッサ様まで同行して頂けるとはこれは心強い。多少ならお支払い出来ますので、よろしくお願いいたします」
アイザックさんが挨拶をする。
アリッサさんも冒険者登録をしており、さっそく受付で護衛の追加登録をする。
「それではまず、私の店に寄ってください」
アイザックさんに言われギルドの外に出る。
するとお披露目会の時に居た、影の薄いお供2人が待っていた。
これからアバンス商会に寄り、王都で売る商品を俺のストレージに収納するんだ。
俺達はアバンス商会まで歩いた。
アバンス商会はギルドの近くにあるから、それほど歩かなくて良いから助かる。
「エリアス様、荷物はこちらにあります」
俺は倉庫らしいところに案内される。
「王都まで運ぶ荷物は、ここです」
「穀物ですか?」
「えぇ、そうです。この領から王都で売れるものなど、穀物くらいしかありません」
「アレン領は特産品はないのでしょうか?」
「特産品ですか」
「このアレン領のみで生産されたり、収穫される物品のことです」
「今のところそんな品はありません。そんな品があればいいのですが…」
この領だけでも人気が出るものがあれば、それだけでやって行けるかもしれない。
王都から戻ったら、何か考えてみようかな。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
『女神ゼクシー』の祝福を受けた2人は…。
『名前:アリッサ』
種族:森妖精
年齢:250歳
性別:女
【加護】
女神ゼクシーの祝福
『知力』、『魔力』2割UP
『名前:オルガ 』
種族:虎猫族
年齢:17歳
性別:女
【加護】
女神ゼクシーの祝福
筋力』、『攻撃力』2割UP
マル秘の祝福(運 - 5 )
「痛い!!」
これ以降、オルガは時々、物の角に足の小指をぶつけるようになった。
可愛い息子を取られた、母のささやかな嫌がらせだった。
祝福が必ずしも、いいものとは限らない。
早く子離れしよう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
読んで頂いてありがとうございます。
物語はまったり、のんびりと進みます。
まだ出発してないし…。
「また来てねエリアス。かあさんは待っているわ」
「えぇ、王都から戻ったらまた来ます」
あぁ~エリアスは行ってしまったわ。
なんだか寂しいものね。
女神になってから数万年。
良縁にも恵まれず独り身だった。
後輩の女神に合コンに誘われても、しょせん私は数合わせ。
数千年の若い女神の方が人気があって、私なんか相手にされない。
しかも最近はその『数合わせ』にも、呼ばれなくなった。
このまま風化していくのかしら?
そんな時だった。
現世とあの世の
異世界『エニワン』の新しい風になればと転移を誘った。
彼は承諾し、私に名前を付けてほしいと願った。
そんなことを言われるのは初めてだった。
私はその壮年の男性に、エリアス・ドラード・セルベルトと名付けた。
名を与えると言うことは、力を与えること。
そんな事も忘れて私は彼は名を与え、私の息子になった。
黒髪、黒い瞳の美形の少年。
彼は15歳に若返り人の心を引きつける、雰囲気を持つ少年になっていた。
そんな彼が明日から王都に行くという。
エリアスには将来は安定した職に就いてほしい。
だから結婚も私が気に入った、女性の中からと思っていたのに…。
いきなり嫁2人の姑になるなんて。
子どもが一人暮らしを始め一人で、できるようになると強い寂しさを感じる。
これが母なのね…。
ゼクシーは忘れていた。
ついさっきまでエリアスの事なんて、記憶の隅にしかなかったことを。
一人劇場はさらに続く…。
でも不安だわ。
彼のやることはこの世界の活性化を、極端に進めそうな気がする。
それに周りからも狙われるかもしれない。
誰かが守ってあげないと。
実際にエリアスが強いのか、弱いのかさえ分からない。
そんな変なステータスだから。
でも私は女神だから、天界から彼を見守る事しかできない。
彼が殺されるようなことがあっても、私には干渉することは出来ないわ。
そうだわ!!
それならエリアスの側に居る、この2人の女に守ってもらえばいいのよ。
エリアスを守れるように、2人に祝福を授けてと。
2割ほど『知力』と『魔力』を上げて。
彼女はエリアスの盾ね。
それから虎猫族のこの女ね。
な、なんと言うことなの?!
こ、この女は転移して、右も左も分からないエリアス
エ、エリアスちゃんのチェリーを奪うなんて!!
オルガという女は、どこの馬の、いいえ猫の骨よ!!
で、でも落ち着いて…。
そうだわ、虎猫族の女は戦力になる。
仕方がない。
2割ほど『筋力』と『攻撃力』を上げてあげようかしら。
彼女はエリアスの
それからもう1つこの女には、加護をあげることにするわ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「さあ、行きましょうか」
俺はお祈りが終わり立ち上がった。
「随分、祈っていたのねエリアス君」
「そうですかアリッサさん」
「まあ、そんなに長いほどでもないがな」
オルガさんに聞くと、2人よりは少し長いくらいだったらしい。
やはり天界での時間の流れは、下界とは違うのか。
あれだけ長く居たのに。
こんな広い空間で、一人は余りにも寂しいだろう。
これからは頻繁に参拝に来よう。
かあさんも寂しそうだったし。
聞くと自分の創生した世界だから、24時間女神は対応しないといけない。
だから休みもないと言う。
母さんが言うには、天界は求人募集を出しても中々女神が集まらない。
最近の若い女神は、お金は欲しいくせに努力はしない。
キツく言うとハラスメント行為だと言われ、こちらが悪くなるそうだ。
仕事は辛くて大変なのは当たり前。
なぜって好きで働いていないから。
生活のため、収入を得るために働いているのに。
無理なく無難な範囲で仕事を選ぶ、これが今の若い子よ!とかあさんは言ってた。
次世代の女神も育ってはいるが、数千年の女神ではまだ任せられないそうだ。
どれだけ奥が深いんだ、女神仕事は。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
俺達3人は教会を出て集合場所の、冒険者ギルドに向って歩く。
するとギルドにはもうDランクパーティー『赤い翼』の4人が居た。
「やあエリアス。久しぶりだな」
「ご無沙汰しております、アドレーさん」
剣士のアドレーさん。
重騎士で片手剣と大きな盾を持ったジェイ さん。
斥候役のシーフで、ショートソードを持ったランダルさん。
紅一点の弓を持ったエリノルさんの、22~26歳の4人組パーティーだ。
ちなみにリーダーのアドレーさんと、エリノルさんはデキている。
「な、なにを言っているんだ?エリアス」
「そ、そうよ、エリアス君たら、もう~」
あれ?
どうしたんだろう?
み、みんな俺の思考が読める超能力があるのか?
「4人共、お久しぶりですね」
知り合いだったのか?
あれ?オルガさんが敬語を使っている。
どうしたんだ?
明日は雨か…。
やめてくれ、これから王都に行くのに…。
「当たり前だろう。同じ冒険者でもみんな私より年上なんだから」
そんなもんですか。
しかしなぜ、俺の心の声と会話ができるんだ?
「口にでてるぞ、エリアス」
そうですか、オルガさん…。
「それにしても。なんでアリッサさんまでここにいるの?」
エリノルさんは不思議そうに聞く。
「それは…」
「みなさん、お早うございます」
アリッサさんが答えようとした時だ。
アバンス商会のアイザックさんがギルドに入って来た。
「本日はみなさん、よろしくお願いいたします」
アイザックさんは受付をして、『赤い翼』と初対面なので挨拶を交わした。
「どうしてアリッサ様が、レザーアーマーを着てここにいるのでしょうか?」
「私も同行しようと思いまして」
「同行ですか?」
「えぇ、護衛も致します。それに料金は頂きません」
「なぜでしょうか?」
「エリアス君の側に居たいからです」
「「 きゃ~!! 」」
ギルドの受付の女性たちが騒ぐ。
「アリッサは昨日からエリアス君と暮らし始めたの。1日で離れ離れは寂しいよね」
受付のコルネールさんが一言余計な事を…。
「あの誰に誘われても、なびかなかったアリッサさんが…」
「俺もファンだったのに」
「あんな若い男が良いのか…」
残っていた男の冒険者達が騒ぐ!!
「アリッサさんは、エリアス君と…そう…離れたくないよね」
『赤い翼』のエリノルさんが、一人納得している。
「アリッサ様まで同行して頂けるとはこれは心強い。多少ならお支払い出来ますので、よろしくお願いいたします」
アイザックさんが挨拶をする。
アリッサさんも冒険者登録をしており、さっそく受付で護衛の追加登録をする。
「それではまず、私の店に寄ってください」
アイザックさんに言われギルドの外に出る。
するとお披露目会の時に居た、影の薄いお供2人が待っていた。
これからアバンス商会に寄り、王都で売る商品を俺のストレージに収納するんだ。
俺達はアバンス商会まで歩いた。
アバンス商会はギルドの近くにあるから、それほど歩かなくて良いから助かる。
「エリアス様、荷物はこちらにあります」
俺は倉庫らしいところに案内される。
「王都まで運ぶ荷物は、ここです」
「穀物ですか?」
「えぇ、そうです。この領から王都で売れるものなど、穀物くらいしかありません」
「アレン領は特産品はないのでしょうか?」
「特産品ですか」
「このアレン領のみで生産されたり、収穫される物品のことです」
「今のところそんな品はありません。そんな品があればいいのですが…」
この領だけでも人気が出るものがあれば、それだけでやって行けるかもしれない。
王都から戻ったら、何か考えてみようかな。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
『女神ゼクシー』の祝福を受けた2人は…。
『名前:アリッサ』
種族:
年齢:250歳
性別:女
【加護】
女神ゼクシーの祝福
『知力』、『魔力』2割UP
『名前:オルガ 』
種族:虎猫族
年齢:17歳
性別:女
【加護】
女神ゼクシーの祝福
筋力』、『攻撃力』2割UP
マル秘の祝福(
「痛い!!」
これ以降、オルガは時々、物の角に足の小指をぶつけるようになった。
可愛い息子を取られた、母のささやかな嫌がらせだった。
祝福が必ずしも、いいものとは限らない。
早く子離れしよう!
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読んで頂いてありがとうございます。
物語はまったり、のんびりと進みます。
まだ出発してないし…。