第91話 交換条件

文字数 2,420文字

 俺達は別館に向って歩いている。
 ゾロ、ゾロ、ゾロ、ゾロ、ゾロ、
   ゾロ、ゾロ、ゾロ、ゾロ、ゾロ、

 さすがに11人いるとね。
 オルエッタさんと使用人が1人、キャシー子爵夫人とタニア伯爵夫人の侍女がそれぞれ2人ずつ。
 そして俺とアリッサさん、オルガさんだ。


 本館は俺達の部屋やホール、大階段、食堂くらいしかないので別館に案内をした。

 そして簡単に施設の説明をした。

 1階には大浴槽のお風呂があり、男女別々の入口と脱衣所がある。
 そしてサウナやジャグジー、打たせ湯、大浴場。
 お湯の出る流れるプール。
 高い滑り台から、お湯と共に降りて来れる。

 2階には娯楽施設として、ボウリング場やゲームコーナー。

 そして3階は休憩所とレストラン。

 屋上には男女別に露天風呂が完備され、空を見上げながらお風呂を満喫できる。
 

 説明が終わりオルエッタさん達は呆然としている。
 サウナやジャグジーとは、なんでしょうか?
 ボ、ボウリング場てなに?
 そんな声が聞こえてくる。


「みなさん、よく分からないと思うので、

のアリッサがお付き合いをします。何かあれば

のアリッサに聞いてください」
 そんな、エリアス君たら。
 妻、妻、妻、妻て連呼されたら…。

 あれ?
 アリッサさんがおかしい。
 陽を浴びると、うねり出すクネクネ人形になっているぞ。
 大丈夫かな?
 緊張しているのかもしれないな。
 エルフは緊張すると、クネクネするのか。
 ほんと、この世界は知らない事ばかりだ。
 覚えておこう。



「では脱衣所の説明を致します。こちらです」
 アリッサさんに、案内させても良かったが気が変わった。
 そのまま脱衣所まで歩く。

「はい、ここが脱衣所です。青いのれんに『男』とあるのは男性、赤いのれんに『女』とあるのは女性の入口です」
 一呼吸置き説明を再開する。
「脱衣所の使い方を説明致しますので、俺も中に入らせて頂きます」
 そしてみんなで中に入る。
 服を着たままなのでたくさん入るように、ロッカーは縦長で幅広の物にした。
 
「これはロッカーといい、扉を開けて中に脱いだ服を入れます。入れたらこの鍵バンドを横にすると、鍵かかかり扉が開かなくなります。そして抜いたら腕にバンドを()めてください」
「えっ、ここで裸になれと言うの?」
 キャシー子爵夫人が驚いている。
「えぇ、そうです。お付きの方も一緒に入られるといいですよ」
「それは出来ませんわ」
「さすがに、それは無理ですわ」
 タニア伯爵夫人達は難色を示している。

 そうかもしれないな。
 この世界ではよほどのお金持ちでないと、お風呂自体が無い。
 だから木桶に水、またはお湯で体を洗うのだ。
 まあ水も貴重で宿屋なら値段も高いのだが。
 だから他人と裸になる習慣もなく、まして使用人と一緒にお風呂なんて…。
 お披露目会の時は、みんなが貴族ではなかったから一緒に入れたのか。
 
「それなら使用人の方は男性風呂を使ってください。浴室の中は仕切られていますが途中までなので、用があれば声を出せば隣にも聞こえると思います」
「では私達はタニア伯爵夫人と、オルエッタさんと3人でお風呂に入るのですね」
「それと使い方が分からないと思うので、妻のアリッサが付きますから」
 それでもキャシー子爵夫人と、タニア伯爵夫人は難しい顔をしている。
 何しに来たんだ?この人達は?

 俺はストレージから体を洗う手ぬぐい、体を拭く大きめのタオルと、そしてバスローブを人数分出した。
 
「エリアス様、それは…」
 オルエッタさんが、驚きながら食いついてくる。
「これは浴室で体を洗う手ぬぐい、お風呂から出たら体を拭く大きめのタオル、そして休憩室などでくつろぐときに着るバスローブです。さあどうぞ」
 おれはまずオルエッタさんに渡した。
 他の人は面倒そうなので。

「こ、これは綿ですよね。エリアス様」
「そうですよ、オルエッタさん」
「頂けるのですよね、お風呂に入れば、これを頂けるのですよね?!!」
 うん?なんのことでしょう?
「綿はとても貴重な素材で製品の販売は出来ないと。しかしお風呂に入れば頂けると、そうおっしゃいましたよね?」
 売らないけれどお風呂に入ればあげます、なんてどんなド変態だ!!
 オルエッタさんも、自分の言っていることがわかっているのか?
 そこだけ聞いたら、非常にいやらしいぞ!!

「それがオルエッタさんの紡績店で、今度扱う綿と言う生地なのかしら」
「えぇ、そうですタニア伯爵夫人。触ってみてください」
「えっ?!こっ、この肌触りは?!」
「それほどの物なのですの。タニア伯爵夫人」
「触ってみればわかります、キャシー子爵夫人」
 キャシー子爵夫人もバスローブなどに手を伸ばす。

「これはなんと柔らかい!!」

「この綿と言う素材はとても貴重で、市場にはまだ出回っておりません。夫にも聞きましたが王都でさえ、この生地自体が聞いたことが無いと」
「そ、そんな貴重なものですの」
「そうですタニア伯爵夫人。我がアバンス紡績店でエリアス様から綿を卸して頂き、このような生地にしたら大陸初となり…。お二人共、お耳をお貸しください」

 そしてタニア伯爵夫人とキャシー子爵夫人は、右耳をオルエッタさんに近付け何やら3人で小声で話している。

「バスローブだけでも…ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、」
「「 えぇっ~?! 」」
「手ぬぐい、タオル、バスローブ3点だったら、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、」
「「「 えっ、えっ、えぇっ~~~?!そんな高額に?! 」」」

「ぬ、脱ぎます」
「わ、私もです」
 な、どうしたんだ?

「エ、エリアス様。さあ、見てください」
「私のもどうぞ。こんな老木でよろしければ思う存分、見てください」
 キャシー子爵夫人とタニア伯爵夫人が突然、脱ぎ始める。

「わ、私も負けてはいられません!!」
 そう言うとオルエッタさんも脱ぎ始めた。
 
 側で見ている侍女達も、どうしていいのかわからずオロオロしている。

 な、何が始まったのだ?
 これはいったい?
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登場人物紹介

★主人公


・エリアス・ドラード・セルベルト


 男 15歳


 黒髪に黒い瞳 身長173cmくらい。


 35歳でこの世を去り、異世界の女神により転移を誘われる。

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