第21話 うま味調味料

文字数 1,468文字

 昨日のダシの件で俺はいよいよ『ある』ものを作ろうと思った。
 これが出来ればさらに料理はおいしくなる。
 ダシ汁だけであんなに喜んでくれるなら、これができればきっと完璧だろう!

 まずはストレージの中で収容した小麦粉に、生活魔法で水を加え()ねる。
 ()ねることで物質の構造変化が起こり、水分と結びついた成分を『創生魔法』でバラして抽出!

 抽出した成分に事前に作っておいた椎茸と鰹節のダシ汁を入れ、合わせたら成分だけ『創生魔法』で抽出し水分を捨てる。
 そして白い粉状になった物を、雑貨屋で蓋付(ふたつき)の小さい木の入物が売っていたのでそれに入れて出した。


 後は実際に試してみるだけだ。

 宿の下に降りビルさんに『試したいことがあるから料理を作ってほしい』、お願いした。
 前日のダシ汁の件もありビルさんの目が輝いた!!

 ではまずビルさんに野菜スープを作ってもらった。
 そこに今回作った白い粉を入れかき混ぜると、あ~ら不思議!絶品の味に。

〈〈〈〈〈 こ、これは!昨日のダシ汁レベルの話ではない! 〉〉〉〉〉

 ビルさんの後ろから稲妻が出るかと思うくらいに驚いている。

 その声を聞きつけたアンナちゃんとサリーさんがやってきて試食をした。

「美味しいわ、今までこんなに美味しい味は食べた事がないわ」
 ほめちぎるサリーさん達。

 その後、野菜炒め、肉料理、挙句に茹で野菜など、ビルさんが考えられる限りの料理を作り全てに白い粉をかけた。
 そして料理が信じられないくらい美味しくなった!
 ビルさん一家は大興奮だった。

「エリアス君。この白い粉はいったいなんだい?」

「これは『うま味調味料』です」

「『うま味調味料』??」

「はい、そうです。先祖代々、我が家に伝わってきたものです」テヘッ!

「まるで魔法みたいね。こんなに美味しくなるなんて」

「振りかけるだけで、こんなに美味しくなる。調理人の腕は関係なくなるよな」

サリーさんとビルさん二人で褒めてくれた。

「『うま味調味料』はスープや煮物、炒め物の仕上、具などの下味に加えると、味に深みがでます。これならダシを取るような手間がありません。俺はこれを量産して、宿屋やレストランや屋台で使ってもらい、この街に食文化を芽吹かせたいんです!」

 と更に言った。

「その評判を聞きつけた人が街に集まり、物の消費が進み、産業が立ち上がり、雇用が促進され、お金が回って住民が豊かになり、結果として国も豊かに力をつけ大きくなるのです!!」

はあ、はあ、一気に言ったので息切れが…。

「エリアス君。君はそんな壮大な夢を。これからは先生と呼ばせてもらうよ」

「今、歴史の瞬間に私たちは立ち会っているのね~」

 アンナちゃんは黙々と食べ続けている。

 そして三文芝居も終わり俺は言った。

「と、言う訳で『うま味調味料』を、買取ってもらえるところを知りませんか?」

 そう言うとビルさんが教えてくれた。

「知り合いの商人でもいれば別だけど、知らないと足元を見られるからね。それから商業ギルドに相談しに行くといいよ」

 明日、商業ギルドに行ってみよう。
 なにも冒険者だけで、やっていく必要はないからね。


 その晩の食事は午前中に作りすぎた残りだった。
 お客に出しても余るから、材料を無駄に出来ないんだって。
 ビルさんが『うま味調味料』を売ってほしいと言うから、作ったのをあげたよ。
 鰹節や椎茸のダシより美味しくて、ダシを取る手間がないのがいいそうだ。
 
『創生魔法』とストレージは、最強の組み合わせだけどこんな事しかできない。
 俺は戦闘向きのスキルが無いから、生きていく手段を模索しないと。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

★主人公


・エリアス・ドラード・セルベルト


 男 15歳


 黒髪に黒い瞳 身長173cmくらい。


 35歳でこの世を去り、異世界の女神により転移を誘われる。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み