第18話 「幽霊」について

文字数 3,044文字

夏と言えば怪談話。というのは言い過ぎかもしれないが、夏の風物詩ではあるように感じる。でもなぜ夏なんだろうか。そもそも幽霊、お化けって何なのだろうか。そして、それを信じる人、信じない人がいる。霊感がある人、ない人がいる。霊感が強めな「みか」。霊感はそれほど強くないが幽霊はある意味信じている「サイトウ」。二人にとって幽霊とは何なのだろうか。
ねぇ、怖い話って好き?
怖い話? 怪談話みたいなやつ?
そうそう、そういうやつ。昨日何気なくテレビつけてたら、怖い話してて。
確かに夏になると増えるよね、そういう企画。まぁ僕も怪談話を聞くのは好きな方かもしれない。
そうなんだ、ウチも結構好きかも。
まぁ小さい時の方が好きだった気はするけどね。
なるほどね。 ウチはちょっと霊感あるのかなって思ってて。
えっ、そうなんだ。じゃあ見えたりするの?
うん、何回か感じたことがあってね。でも、それほどはっきりしていたわけではなくて、あとよく聞くような怖い話みたいなストーリー性もなかったけどね。 何となく感じたぐらい。
へぇーそんな感じなんだ。 その時は怖い感じだったの?
んー割と冷静だったかな。 あれっ、そうかなーぐらいな感じ。
何か、みかちゃんっぽいね(笑)
そう!? サイトウさんは、幽霊とか信じるの? 霊感強いとか?
あぁ、霊感はたぶん強くないと思う。 みかちゃんみたいな経験はほぼないから。 でも、幽霊を信じるかって言えば信じるになると思うな。
あぁ信じてるんだね、ちょっと意外。 幽霊とかお化けなんているわけないって感じなのかなって想像してた。
うん、まぁね。信じてるっていう言葉が適切か分からないけど、でもまぁ、いるのかなとは思ってるかな。何をもって、「いる」か、存在するかって考え方次第かもしれないけど。
考え方次第っていうのは?
何となくだけど、物体として幽霊が存在するかって言えば、「いない」、存在してない気がするんだ。 でも、人間のイメージする力まで含めて考えると「いる」、存在してるって言えるかなって。
えーどういうこと?
例えば、よく怪談話とかに出てくる、墓地、廃校、病院、山奥のトンネルとかの場所があるじゃない? それで肝試しでそこ行けって言われたら、怖くて嫌なんだよね。 でも、もし幽霊信じてなければ何も怖いなんて感じることなくその場所に行けると思うんだよね。怖いって感じるってことは何かイメージできてしまって、それを恐れてるってことなんじゃないかな。
んー何となくは分かった。まだ難しいけど。
そうだね、うまく表現できないんだけど。人の想像する能力によって幽霊が存在してるってこと。物体としては存在してないと思うけど、恐怖心を感じるイメージ、想像したものを幽霊ってことにすれば、幽霊はいるって言えるんじゃないかな。そんな感じ。
なるほど、じゃあサイトウさんにとっては幽霊は人が作り出した想像上の存在って感じなの?
うん、まぁそんな感じだね。 想像上のものだから怖くないって思う事もできそうだけどなかなか難しいからね。結局怖いって感じちゃうし、そうなったらもう幽霊が存在しているようなものだよね。
ふーん、そんな感じか。確かに、さっき見えたことないって言ってたもんね。
そうだね、でも一回だけ経験した記憶もあって。夏にエアコンが効いた部屋で昼寝してたら、怖い夢見て目が覚めたら金縛りになってて。その頭もボーッといる状況の中で、何か人が迫ってくるのを感じたことはあったね。
そうなんだ、でもそれは割とちゃんとした経験? 体験じゃないの?
まぁそう言われればそうなのかもね。でも夢見てたってことは脳が勝手に何か想像してたってことだし、目が覚めて意識もまだはっきりしてなかった、そういうので作り出されたって感じなのかと思って。
あぁ、なるほど。確かにウチが経験した中でも、寝てる時っていうのはあった気がするな。
うん、割とそういうシーンが多いんじゃないのかな。
そっかぁ。でも寝てない時でもあったよ。旅行に行ってホテルに泊まった時とか。
それは先入観とかがあって想像しやすい状況だったりしたんじゃない?
先入観?
例えば、ホテルとか旅館の怪談話も良く聞いたりするじゃない。あとさっき言った、墓地、廃校、病院、山奥のトンネルとか。そういう場所で幽霊見るみたいな先入観があるから、脳が想像しやすくなる状況なんじゃないかと思って。
なるほど、確かにそういうことなのかもしれない。あとは、それこそ怪談話を聞いた後とか、もう亡くなってしまった人の事を考えた後だったとか、そういう状況っていうのもあるかもしれないね。
あぁ、そうだね。そういう状況もありそうだね。
何となく分かってきた気がする。幽霊ってそういうことだったんだね。
いや、分からないよ。僕が勝手にそう思っているだけで。 実際に幽霊の研究とかしてる人もいるみたいだから、もっと別の何かがあるのかもしれない。
なるほど。 でも、別に何でもいいのかぁ。幽霊がどうとか。怖いものは怖いもんね!
そういう考え好き! 確かにそうなんだよね、怖いものは怖いんだよ。 存在するかどうかって、結構難しい概念だしね。まさに哲学になってくると思うよ。
そっかぁ、存在ね。他にも宇宙人とかサンタクロースとかあるよね。
あぁ、そうだね。 宇宙人とサンタクロースを選ぶあたり、みかちゃんのセンスは面白いね。
えっ、そう?
うん。でも確かにそうだよね。結局どう捉えるか何だよね。宇宙人は「人」としてはいないかもだけど、「生物」ってことであれば存在するかどうかも変わってきそうだし。サンタクロースも、例えば親とかが子供を喜ばせるためにやっている姿をサンタクロースと呼ぶのであれば存在することになるしね。
結局何をもって存在してるか、いるかってことなんだね。宇宙人とかサンタクロースとか、それはそれで長くなりそうだからまた別の時にしよう。
うん、そうだね。
でもさぁ、また幽霊の話に戻るけど、何で夏なんだろうね。
確かにね。冬とかでもそういう話はあるんだろうけど、何となく夏って感じはするよね。
うん。 何となくテレビ番組とかがきっかけで夏が定番になっていったのかな。
そういうのもあると思うね。 結構そういうメディアから流れが出来るっていうのはあるからね。 あとは、夏にお盆とかがあるのも関係してるかもしれないね。
あぁ、確かにそっかぁ。お盆かぁ。霊を祀るとかってことだから、そういうことか。
うん、そんな感じはするね。 あとはさっきの寝ぼけるようなものと同じで、暑さで脳の働きが鈍くなって何か無意識に想像して、実際に見たことと混同してしまってるとか。まぁでも、これは無理があるかぁ。
うーん、暑さのせいでね。まぁなくはないかもだけど。
そうだね。
でもさぁ、何で怪談話とか、あとお化け屋敷とか、好きになるんだろうね。
何で好きになるか、かぁ。
うん、だって怖いし、驚かされるし、あまり好きになる要素ないじゃない。
確かにね、嫌なのに好きみたいな変な感じはあるよね。ゾクってする感じが好きなのかな。非日常が味わえるみたいな感じで。
そうかぁ、非日常ってことなのかな。確かにずっと気分が安定してるのもつまらないっていうのはあるかも。
うん、不安からの安定っていうのが快感なのかもしれないしね。
なるほどね、そういうのはあるかもしれないな。
じゃあ今度ホラー映画でも一緒に観る?
あぁ、いいね。機会があれば。
本当? そしたら映画にゾクってするより、みかちゃんにドキってしちゃうかも。
えっ?
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登場人物紹介

「サイトウ」と名乗っている。本名ではない。自分のことをボクと呼ぶ。AB型の男。ロックが好き。

「みか」と名乗っている。本名ではない。自分のことをウチと呼ぶ。O型の女性。ミルクティーが好き。

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