第10話 「嘘」について

文字数 3,129文字

何故、人は嘘をつくのだろうか。嘘は裏切りでもありそのせいで悲しむ人もいる。一方で、ついて良い嘘もあったりし、それは優しさだったりする。そもそも真実とは何で、それには何の価値があるのだろうか。嘘や真実、それらに言葉はどう関係してくるのか。「みか」と「サイトウ」の二人は「嘘」をつくのだろうか、「嘘」とどう向き合っているのだろうか。
嘘ってさぁ、何なんだろうね?
ん、どうしたの急に?
いや、なんかさ、ニュースとか見てると嘘ばっかだなって思って。
あぁ、そういう事。
芸能人の不倫とか、政治家の不正とか、詐欺事件とか、色々ね。こういうのって最近だけでなくずーっとあるでしょ。
まぁ、そうだね。確かにずーっとあるし、これからもなくならない感じはするね。
そうでしょ。ニュースはちょっと遠い話には聞こえるけど、実際身の回りとかで考えてみても嘘は多いよなって感じがして。
なるほどね、大小はあるにしても身の回りでもあるね。それで結構ショック受けることもあるし。みかちゃんも最近何か嘘つかれたの?
うん。そういう意味では、ウチのは小さい話、小さい嘘かもしれないけどさ、なんか約束守ってくれなかったり、言い訳聞いたりして、イラッとしたって感じかな。
まぁ、そういうのは多いよね。
結局自分のことしか考えてないんだよね。言い訳とかって、自分のための嘘って感じ。ウチにしてみたら、そんなの全く関係ないし、知らんよって感じ。
自分のための嘘ね。確かにそれはそうかもね。
サイトウさんはどうなの?嘘つく?
んー難しい質問。みかちゃんが言うような言い訳みたいな嘘をついた事もあるよ。今思えば、確かに自分の事した考えてない嘘だったかもね。
えーそうなんだ。
最近はあまり自覚はないけど、ひょっとしたらというのはあるかも。あとは、仕事の中でとかでちょっとした嘘はつくかもね。嘘というのか分からないけど、曖昧に回答したり、ちょっと視点を変えて回答したりとか。その方が、上手く進みそうな気がして意図的な感じ。でも、自分のための嘘と言われたら、それはそうなのかもしれない。
なるほどね、確かにウチも全く嘘つかないかと言われたら、それは自信ないかな。親とか、職場の人とかから何か聞かれてその場限りの嘘はついてるかもしれない。
うん、結局そういうのは誰でもあるよね。それが人間なのかもしれない。
うーん、確かにそうなのかもね。
やっぱり言葉を喋るから嘘が生まれるんだよね。まぁ喋るだけではなく、書くこともあるから、正確には言葉を使うから嘘が生まれる。そんな感じ。
そうか、言葉のせいなのか。
みかちゃんてガリヴァー旅行記って知ってる?
何か聞いたことはある。あまり知らないけど。
ちょっと最近英語の勉強のために、英語の本で読んだんだ。薄いやつだから、完全版とかじゃなくて、抜粋しているというか、一部分だけの本だと思うんだけど。
へーそうなんだ。凄いね。
ストーリーとしては、ガリヴァーっていう船医が不思議な国々を訪れていくっていうものなんだ。小人の国とか巨人の国とか。
あぁ、なんとなく分かる。巨人が出てくるイメージは何かある。
映画とかでもあったからそれかな。でね、その話のなかでこんな台詞があったんだ。


「でも、なんで嘘をいうの?嘘つく理由なんて何もないじゃない。この国で私達はお互いを理解し、情報を交換するために言葉を使う。もし真実を伝えてくれないなら、どうやってお互いの理解するの?」
こんな感じだったと思う。その時まぁ確かにねって思って。
うん、そうだよね。正論というか、純粋な子供とかもそういう疑問持ちそうだし。
確かに、本来言葉ってそういうものだよね。情報を交換して、お互い理解するためのツール。でも、自分を良く見せたいとか、そういう人間の欲で、間違った情報を交換することがある。それが嘘ってことなんだろうって。
うん、自慢話しとか、ちょっと盛って話してる人とか、まさにそんな感じだと思う。あと、詐欺とか人を騙すのもあるよね。それも結局、もっといい生活したいとかっていう、そういう欲だし、自分のためなんだよね。
あぁ話し盛るやつね。確かにそれもあるよね。飲み会とかで、特に男だけど、自慢話、武勇伝とか、なんかそういうのを言ってる人多いよ。嘘だろ、盛ってるだろってうんざりする時もあるね。もちろん、その場を盛り上げようとしてるだけかもしれないけど。
まぁ楽しんでる人もいるんだろうけどね、その話しで。お笑い芸人の話とかもそんなものだと思うし。そう考えると、なんか話しの内容、センスとかもありそうな気がするね。
センスかぁ。なるほどね。
サイトウさんが聞いた武勇伝とか自慢話しって、きっと面白みがないというか、それが何なのって感じだったんじゃない。
うん、確かにそんな感じだった。
うちもそういう経験あるけど、本当にそういう時はうんざりする。でも、そういう話を聞いて楽しい時とか、さっきのお笑い芸人の話しって、嘘かなーて思う事はあったとしても、何かそれを想像すると笑えてくるというか、おかしいんだよね。
なるほど、それはそうかもしれない。だとしたら、必ずしも正しくない情報で、間違った情報だけど、その間違い方によっては面白みを感じられるって事か。
うん、良く分からないけど、そんな感じだと思う。それで、その時って自分に都合のいいように情報を変えているわけではなくて、相手のために情報を変えてるんじゃない?それが面白く伝わるというか、笑えてくるというか。
あぁ相手のためにか。優しい嘘みたいなことも言われたりするじゃない。それもそんな感じだよね。
優しい嘘?なんかドラマとかであるようなやつ。
そうだね、病気の患者さんに何でも無いよって言ったり、大切な人が作ってくれた料理がイマイチでも美味しいって言ったり、まぁそういう感じのやつかな。
そういうのね。うん、それは確かに相手のためについた嘘だよね。でもそういう嘘、優しい嘘も自分を押し殺し過ぎたら悲しくなってくるよね。
ん?どういうの?
さっきのとかはまぁ良いと思うんだけど。例えば、すごくいじめられたり、暴力されてるのに大丈夫って言ったり、全然好きでも無い仕事を押しつけられて好きですって言ったり。ある意味、相手の考えてるように見えるけど、結局自分に害が出てしまってるから。それはちょっとやり過ぎ、我慢し過ぎな嘘って感じがするな。そういうのは少なくなって欲しいな。
確かに、そういうのもあるね。優しすぎるというか。それは確かにいきすぎだね。
だから、結構複雑だよね、嘘っていってもさ。
うん、そうだね。究極、何も喋らない、何も書かないってすれば嘘は生まれないだろうけどね。言葉はそもそも真実なのかって感じもするし。
言葉は真実っていうのは?
んー、上手く言えないけど、頭で考えた事、心で感じた事が本当に何も情報が欠落する事なく言葉に変換できるのかって疑問に思うだよね。ギターの音を生で聴くのと、録音したのを聴くのは全く別な感じがするじゃない。そんな感じ。言葉にした段階で既に何か欠落してて、真実ではない感じがあるんだよね。もちろん、さっき話していた意図的に情報を間違えるというのとは別で。
へーそうなんだ。まだあまり分かってないけど。でも、ギターの音で言いたい事は分かる。確かに別物になるよね。写真とか動画とかもそうだし。
そうだね、だとするとアナログとデジタルの違いなのかもしれない。頭の中や心にある真実はアナログであって、それを他の人に共有するためにデジタル化して言葉に変換してるのかな。
言葉はデジタルって事なんだ。まだ、良く分からないけどちょっと考えてみよっ。
僕もまだモヤモヤしてる。また考えてみる。
って言うのは嘘かもしれないけど。
えっ?
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登場人物紹介

「サイトウ」と名乗っている。本名ではない。自分のことをボクと呼ぶ。AB型の男。ロックが好き。

「みか」と名乗っている。本名ではない。自分のことをウチと呼ぶ。O型の女性。ミルクティーが好き。

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