第7話 「死」について

文字数 3,077文字

どうしても「死」を体験する事になる。それは身近な人の死の場合もあれば、会った事はないが知っている人の死もある。「死」に接する事になった時、何を考え、どんな影響があるのだろうか。どちらと言えば楽観的な「みか」、どちらかと言えば繊細な「サイトウ」。二人は「死」をどう考えているのだろうか。
最近さぁ、芸能人が死んだっていうニュースが多い気がするね。
確かに、そうかもね。
新型コロナが原因っていうのもあったよね?
そうだね、本当に衝撃的なニュースだった。やっぱり色々な死に方はあるけど、突然っていうのはやっぱり衝撃を受けるよね。まさかっていうか。
うん、年齢とか、長い間闘病しててっていうのならまだ受け入れられるけどね。突然死とか事故とかだとやっぱりね。
そうだね。そういう意味では、新型コロナのは事故みたいな感じだよね。あまりにも突然だし、誰にでも可能性はあるわけだし。
そう、だから何かもやもやするし、不安にもなるなぁ。
そうだね。実際さ、好きだった芸能人とかアーティストが死んでしまった事ってこれまでにあった?
あぁ、何人かいたと思う。俳優だったかな、外国人だけどね。あとは好きだったバンドのメンバーが死んだってこともあったね。あっあと、お笑い芸人とか。
なるほどね、やっぱりそうだよね。
えっ、サイトウさんはどうなの?
うん、同じようにいたよ。バンド関係が多いかな。あとは小説家とかね。
そうかぁ。事故とか?
そうだね。病気っていうのもあったけど、事故が多い印象だね。あるバンドは事故で全員亡くなってしまったよ。だからメンバーというか、バンド自体がそれで死んでしまった。終わってしまったよ。あっ、これも外国のバンドだけどね。外国って言えば、演奏中に銃撃されてっていうのもあったね。
えーそんな事もあるの。それはもう本当に衝撃。
うん、事故は本当に突然だからね。
そうだね。海外の俳優さんはね、自殺だったんだ。だからそれも突然だったんだよね。何か悩んでたらしいけど、そんなの知らないからね。えっ、って感じだったね。
そうかぁ、自殺かぁ。確かにそれも突然だよね。芸能人、有名人だと結構ストレスもあるだろうけど、それは我々の一般人には見えないからね。
うん。でもさぁ、その海外ドラマの俳優さんだったんだけど、まだ見てないシリーズもあったし、これからもその作品の中では会えるんだよね。だから、ドラマに集中してる時は普通に見てられるんだけど、あぁこの人もういないのかぁって、ふと考える事もあるんだよね。何か不思議なんだよね。
なるほどね、それはあるかもね。音楽だと映像がない分あまり気にする事はないけど、映画やドラマだとそう感じるかもね。あっ音楽でもライブの映像だとそう感じるか。
うん、そうだと思う。
有名人や芸能人だと何かしら作品を残してるから、その作品は死後も生き続けるんだよね。だからいつでも会えるというか。古い作品だと、そもそもその作品を知った時、見た時に、その作品を作った人が死んでたりもするしね。でも、その人が生きている状態で知った作品は、その人が死んだ後では少し感じ方は違うかもね。
ん?古い作品?
あぁ、ごめん。みかちゃん、ビートルズとかクイーンってバンド知ってる?たぶん曲は聞いたことあると思うんだけど。
うん、一応知ってるよ。曲は聞いた事はある。
良かった。で、ビートルズのジョンレノンとか、クイーンのフレディマーキュリーって死んでしまったのね。でも、僕はビートルズやクイーンを聴き始めた時にはもう既に死んでいて、彼らが生きている時って知らないんだよね。
あぁ、なるほど、そういう作品ね。
でもさっき言ったバンドは生きている時を知ってるから。死んでしまった後はこれまでと音楽の印象が違うっていうかな、そんな感じかな。それは、ビートルズやクイーンを聞くのとは違う感じで。
そういう事か、分かった。だから、ウチの海外ドラマのも同じような感じだよ。その俳優が生きている時を知っていたから、その後の作品を見た時にちょっと違和感があったというか。
まぁ、そうだよね。有名人、芸能人って、死んだ後も作品で会えるから不思議なんだよね。僕等みたいな一般人だと特に何も変わるわけでもないし。今までと同じように作品を通して会えるし、その作品の中でその人は生きているしね。そういうのが不思議だよね。
そうだよね、変わらないんだよね。一度も会った事ないしね。
そう変わらないね。残念なのは、もう新しい作品に会えないって事だよね。
そうだね、まぁでもそれが一番残念なところだよね。
うん、損失だね。
でも、その俳優さんとか、バンドメンバーとかにも身近な人はいたわけだし、そういう人は勿論ウチらみたいな一般人とは違う感覚なんだよね。
あぁ、身近な人って、例えば、家族とか恋人とかって事?
そう。あとは友人とか、マネージャーさんとかでもそうだと思うけど。
そうだね、それは大分違う感覚だと思うよ。素の部分を知っているしね。
だよね、素を知ってるから。ウチが知らない一面を知ってるから。強い繋がり、関係性が失われてしまった感じなのかな。
そういうのもあると思うよ。死んだ事による変化の影響が大きいというか。でも強い繋がりがあった分、その人のイメージも頭の中に残っていると思うんだよね。
イメージ?
こういう事が好きだとか、こういう場合笑うとか、こうされると怒るとか。そういうイメージ。思い出ともいうのかな。
あぁ、そういうのね。確かにあるだろうね。そして、それはウチらは知らない面。
うん。それでそのイメージはその人の頭の中で蘇る事もできるはず。繋がりが強ければ強いほど、その人の頭の中で生き続ける感じもするんだよね。こういう時あいつだったらなんて言うかな、とか死んだ人の事を思い出して言うセリフがあったりするけどそう言う感覚。だから、我々一般人とは違った形で生き続けると言う感じもするな。
あぁ、確かにそう言うドラマのシーンとか見たことある。そっか、ウチらみたいな一般人だと作品を通して生き続けて、身近な人だと頭のイメージの中で生き続けるのか。どっちにしてもある意味生きてるんだね?
うん、ある意味ね。実際は死んでいるけど、そう言うのとは違う定義、世界の中で生きていると言うかね。
なるほど、何か希望がある感じ。
そうだね、あまり考えたことなかったけどね。だから、長く生き続けるには、ある意味の世界では、たくさん良い作品を残すこと、身近な人と深い繋がりを築く事が重要なのかもしれない。
その場合、作品って別に何でもいいんだよね?
うん、何でもいいと思うよ。別に映像や音楽でなくても。形あるものであれば、何でも。
なるほど。でも本当そうかもしれない。長く生き続けるために身体に気を使ったりするのも大事だけど、その何?ある意味生きてるって世界?、そのためにはそういう生き方が必要だね。何かちょっと生き方が変わりそう笑
ふっ、それは良かった。
でも、死って奥が深いね。
それはそうだよ。このテーマだけで、本が一冊かけるぐらいだし。いや一冊ってもんじゃないかも。それにそういう授業とかもあるだろうしね。何だったらある哲学者とかは、一生をかけて死とは何かを考えてるようなもんだよ。そう簡単に理解はできないよ。まぁ別に考えなくてもいいんだけど。
そっかぁ、まぁ確かに重いテーマだよね。考えなくてもいいだろうけど、ウチは少し考えようかな。
うん、いいんじゃない。でもあまり変な感じで思いつめないでね。
うん、ありがとう。
また、何かあれば話そう。
そうだね。
死ぬまでみかちゃんと語ってたいかも。
えっ?
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登場人物紹介

「サイトウ」と名乗っている。本名ではない。自分のことをボクと呼ぶ。AB型の男。ロックが好き。

「みか」と名乗っている。本名ではない。自分のことをウチと呼ぶ。O型の女性。ミルクティーが好き。

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