神の出迎え
文字数 1,482文字
車を降り立った天馬とエリカは、ちょうど時間通りにヘリが予定の場所に着地するのを見ているところだった。事前に聞いていた通り、アメリカ軍機だ。
エリカは車の運転手役としてだが、天馬はアメリカ軍機を大統領として迎えるのである。
着地場所は、アスタリア郊外の平地である。大統領官邸からは車で5分程度の距離だから、ぜんぜん遠くはない。
ヘリが着地するとドアが開き、若い女性一人が威勢よくジャンプして飛び出してきた。見事に着地した女性は、腰に手をやり辺りを眺めまわす。ここから広がる山々は絶景だから、初めて訪問した人間は、思わず景色に見入ってしまうのは自然なことだ。
続いて、テレビカメラや音声機材を抱えた男が2名、注意深くヘリから降り立ってきた。あの3人が取材クルーらしい。
女性がこちらに歩いてきたので、天馬とエリカも近づいていく。
20代半ば、さすがにテレビに映る仕事だけにずいぶん綺麗な女性で、はつらつとしたなかに気品もある印象だ。
ライザが特派員として報道したニュースのいくつかは、動画配信サイトなどにアップされていた。数は多くないようだが、取材相手は紛争地の主要なキーマンや、内戦中の国の国家元首など、それぞれの国際的知名度は低いものの、現地の政治にとってはかなり重要性が高いと目される人々ばかりのように天馬は感じていた。
メディアが取材相手を探すときは、いくらニュースメディアを標ぼうしていても、原則としては視聴率が取れる相手を取材していくのが当たり前だ。そんななかにあって、ライザの取材相手たちは、視聴率という意味ではほぼ無意味ながらも、いぶし銀と言えそうな相手を見事に選び出しているように思われた。
ライザは、エリカへも手を差し出す。
意味ありげに、ライザはエリカに目を細めた。
エリカはつっけんどんに応じる。
(ログインが必要です)