神の帝国中央銀行
文字数 2,419文字
――tenma：
すでに帝国民には個人財産のすべてを管理するカードを発行しているところだ。ゆくゆくはマイクロチップにして本人の身体のなかに埋め込んでもいいし、場合によっては顔や目や身体の情報だけで本人をたちまち識別できるようになるかもしれん。
――半蔵：
tenmaが勝手にそんな仕組みを作っても、店のほうがその決済方法を受け付けてくれねーとどうにもならないだろうが。
――tenma：
決済のほうは帝国側ですべて開発している。帝国に申請すれば、店側は帝国中央銀行に直接リンクしたPOSシステムをその日から導入できるようにした。店舗用のPOSレジシステムは今のところ1万円で提供できる、ネットショップ用のソフトウェアは無料だ。
――半蔵：
テンマコインなんてどうせ店は受け取らねーよ。換金できねーだろうが。
――tenma：
換金などという概念が間違いだ。テンマコインは、我が帝国内で流通する唯一の法定通貨となる。税の徴収もテンマコイン、社会保障もテンマコインで支給される。これが金融システムのすべてになるのだよ。
――リヴ：
よく知らないけど銀行のATMないとお金引き出せなくない？
――tenma：
フッ、これだから愚民は困る。そもそも紙幣や硬貨などは存在しなくなるのだよ。銀行システム自体が存在していない。我が帝国内においては、信用創造は機能しないのだよ。
――リヴ：
tenmaが何を言っているのか１％もわかってない件。
――tenma：
あらゆる決済が帝国中央銀行と直接繋がる。店も企業も個人も、自動的に毎日の決算報告がなされ、自動的に税金が課されることになる。国税庁、税務署、社会保険庁など徴収に携わるすべての人間が不要だ。会計士、税理士すら不要になるだろう。金融に関するあらゆる不正行為はなくなるし、経済環境も長期的に安定するはずだ。恐ろしく効率化され、どんなに怠惰な人間でも何にも考える必要なく帝国社会に組み入れられる。
――今井：
会社始めるときとか、借金ってできないんだ？
――tenma：
浅はかな常識を振りかざすな。マイナスという概念が導入できるのだぞ。大きな事業を行う場合には法人を設立し、そこで認定を受けられる範囲でマイナスの枠組みが設定される。企業の姿や意義はまるで変わるに違いない。
――リヴ：
最近のtenmaは長文語りすること多いよねｗｗｗ
――tenma：
帝国内での収入と支出に課す税金はゼロとする。そのほか、社会保険料などまで含めて、あらゆる税金がゼロだ。
――半蔵：
それじゃ金が足りずに運営できねーだろう、帝国がよ。
――tenma：
帝国が臣民どもに課すメインの課税手段は資産税だ。保有資産の０．５％が、自動的に毎月目減りしていく。テンマコインのみならず、手持ちの不動産や株式、債権まで保有資産としてカウントする。資本主義の下劣な競争環境は否定せず、機会均等を実現し、貧富の差は帝国内においては適切に管理されるようになるだろう。
――半蔵：
いや理屈はわかるけど……tenmaにすべてを監視されるディストピアになる予感しかしねえｗｗ
――tenma：
人類はようやく真の意味で、神を手に入れることができるのだよ。この俺という神をな。
――半蔵：
もう手に入れてますｗｗｗｗｗｗ
――リヴ：
「俺という神」に不意打ちｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ
――Danz：
わりー、仕事長引きました。
――リヴ：
遅いよー。新イベクリア一番乗りしたいよね。
――tenma：
この俺を待たせるなどあってはならぬ事態だ。腹を切れ。
――Danz：
tenma神なんて最近いつも待たせるじゃないですかｗｗｗｗｗｗｗ
急にいなくなることも多いしｗ
――半蔵：
あとはIORIだけか。
――今井：
今日は入れないかもって言ってたよ。
――リヴ：
じゃあ行こう行こう！
私たちが世界一最速クリアゲットだよｗｗｗ
――tenma：
む……？
待て。帝国外務省にメールが来ている。初めて舞い込んだ外国勢力からのコンタクトだ。
――今井：
帝国外務省ｗ
――半蔵：
外務省なのにずっとボッチだったのかよおｗｗｗｗｗ
――Danz：
ウォーシミュレーションとかプレイ中っすかｗｗｗ
――tenma：
取材の申し入れらしい。CNMからだ。
――リヴ：
なんでニートに取材ｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ
――Danz：
日本のニート事情をCNMが取材活動っすかｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ
――tenma：
俺は今から本件に対応する。新イベントは後回しだ。
――リヴ：
えええええええええええええええ！？！？
――半蔵：
tenmaマジで最近忙しそうなんだがｗｗｗｗｗｗｗ
――tenma：
副官からは、俺はネトゲ三昧で政務をほったらかしにしていると事あるたびに詰られているがな。
――Danz：
25歳美人大佐に叱られたいっすｗｗｗ
――tenma：
じゃあな。暇があればまた入るだろう。
天馬はすぐさまログアウトし、CNMへの返答メールを書き始めた。
CNMはアメリカのグローバルメディアで、世界最大級のニュース放送局である。リベラル色が強いメディアで、戦争などには真っ先に懸念を示したり、政権批判を日常的に行っていた。とくにアメリカの現政権とは果敢に対立し、仲が悪いことでも知られている。おそらくアスタリアでの内戦に懸念を持ち、取材班を送り込んできて批判したいと考えているのだろう。
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