神の誠心誠意
文字数 1,684文字
まるで自分が英雄か聖人君子とでも主張するかのように、天馬は熱意を込めてテレビカメラに向けて語り掛けた。背後からは、今だ激しい銃撃音と爆発音。
まさに戦闘の真っただ中といった状況でインタビュー役を務めるライザが声を張り上げる。
ライザもすっかりハイテンションだった。
CNMのテレビカメラも、天馬が世界に向けて語り掛ける様子を映し出したり、家々が次々と爆発を起こしていく様子を映し出したりと忙しない。
ここでスタジオより、ライザに「映像をいったん別の現場に飛ばします」と指示が入った直後、すぐさまテレビの場面が切り替わった。天馬とクルーの3人は、設置してあるテレビに視線を走らせる。
画面には、別の男性のCNM特派員が映し出されていた。どうやら艦上からの映像のようだ。
空母の特派員がまくしたてている横で、アスタリアの街には大きな変化が訪れていた。
突然、銃撃音の大半がかき消えたのだ。
その直後、迷彩服に身を包み、AKSを携えたエリカが物々しくやってきた。テレビモニタには、空母ロナルド・レーガンの艦上からの実況中継が続いていたので、こちらの映像は配信されていない。
天馬は真剣な表情で断言した。
ただし実際には、天馬はその後、その約束を守るような行動は一切しなかった。世界市民の前での約束を反故にしたわけではない。ただ単に、発射した弾道ミサイル群にははなっから起爆装置などついていなかったし、もともとモスクワまで飛ばすだけの飛距離がなく、弾頭にはプルトニウムどころか爆薬すら積んでいなかったためである。広大なロシアの適当な場所に、勝手に墜落することだろう。
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