神の副官
文字数 2,561文字
空軍基地から飛行機に乗せられ、天馬とエリカはシベリア南にある目的の基地へと向かっていたのだった。基地に着いても、そこから車で国境を越え、3日はかかる道中らしい。
機内ではエリカはずっと本を読み、一言も口を利かなかった。しかしちょうど本を読み終えたタイミングだったのだろう、本をパタリと閉じて、天馬睨みつけてくる。
わずかな迷いすら見せず、天馬は強く言い切った。
険悪だったエリカの表情は戸惑いに変わる。
でも私が16歳のころ、父の会社が倒産してね。そのときよ、なんとかして自分のポジションを作らなきゃいけないと思ったのは……。幸いにも高い教育は受けられていたし、日本語もネイティブだったから、日本担当として採用してもらえたわ。
この仕事で、見聞きする話のすべてが私の糧になる。ささやかだけど世界の深部の一端に触れることができているし、こんなに面白い仕事があるんだと思ってた。不満はなかった。天馬のサポート役に付かされるまでは! 天馬が日本人だったことが私の運の尽き。
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