神は殺害目標

文字数 370文字

 プーチンは、突然の電話に目を覚ました。寝室に設置されてあるこの直通電話は、戦争に関するようなよほど重大な緊急連絡でない限り鳴ることはない。

 プーチンは布団をはねのけ、すぐさま現実に意識を引き戻した。工作員として鍛え上げられたプーチンにとって、たとえ何歳になろうとも、睡眠直後からすぐに戦闘態勢に入ることは慣れた日常風景だ。でなければ命の危険がある世界で生きてきたのだ。

 受話器を取り上げプーチンは聞く。

どうした?
不動天馬が……! 殺害目標の不動天馬がリアルタイムでCNMに出演中です!
……なんだと? 生放送なのか?
そのようです!
まさか不動天馬はこの罠を仕掛けていた……?
すでに我が特殊部隊は国境線を越え、攻撃行動に入る頃合いです!
 プーチンは電話を投げ置き、布団から飛び起きた。そしてパジャマを破るように投げ捨て、身支度を急いだのだった。
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登場人物紹介

不動天馬(ふどうてんま)

40歳ニートだが、自分を神だと主張して憚らない。引きこもり歴は実に25年にも及ぶ。近所のコンビニがライフライン。

エリカ・マリシェヴァ

25歳。ロシア連邦保安庁(FSB)の情報工作担当官。日本人とロシア人のハーフで、日本語に精通していたため、東京より呼び戻される。

イヴァ・クリチコ

15歳。アスタリア人を率いる族長。しかし亡き父を継がざるをえなかっただけであり、祖父である長老が実質的に部族を仕切っている。

プルト・カシモフ

32歳。前族長の副官として部隊を率いていた。14歳で従軍して以来、アスタリアの全戦闘に従軍してきた歴戦の兵士。天馬に反旗を翻す。

ライザ・フローレンス

24歳。世界最大級のリベラル系メディアCNMの報道特派員。無名の天馬に狙いを定めて取材を申し入れてくるが……?

ロスティスラフ・プーチン

64歳。ロシア連邦大統領。元KGBのエージェント出身であり、国際政治に多大な影響力を持っている大政治家。

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