神の協定
文字数 2,603文字
天馬は、敵が残した装備を確認してきたところだった。
軍用トラック16台、迫撃砲、そのほかAK47からM16までバラエティに富む自動小銃などなど……。軍用トラックなどは相当使い込まれてあるし、迫撃砲は明らかにアメリカが廃棄したようなものをそのまま引き継いでいるだけだし、自動小銃もとても軍とは思えぬほど統一感がない。民兵集団が、アメリカから無理やり指導を受けてとりあえず体制だけ作ったような軍だから、やむを得ないのかもしれない。
また、特別高価なものはないが、だからこそ奪っておいても損にはならないオーソドックスな装備の数々だ。慣れた兵士が渡されれば、即座に使えることが重要だ。
天馬が倉庫からRC造の中央の建物に足を運ぶと、入り口で警戒していたアスタリア兵が報告してくる。
アスタリア側の戦死者は1人、負傷者6名。
対する政府軍の戦死者は14人、捕虜60名、そして負傷者はおそらく数十名と見ていいだろう。
奇襲成功の成果としてはまずまずだ。
大広間に向かうと、エリカが捕虜と向かい合っていた。アスタリア兵が10人ほど、自動小銃を抱えていた。
エリカが近づいてきて口にする。
エリカの言葉に天馬はうなずき、重々しい足取りで少佐の前に歩いていく。雰囲気で何かを感じ取ったのだろう、少佐は顔を引きつらせ天馬を見やっていた。
天馬は少佐を睥睨するように立ち、事務的に聞く。
それから天馬はアスタリア兵に少佐を連行させ、基地の指令室へと向かった。指令室に入ると少佐に電話を掛けさせ、指定のウェブ会議にすぐ応答しろと、政府軍の中将に伝言するよう命じた。少佐は電話口にしがみつき、電話の相手にわめきたて、泣きつき、必死で説得を重ねたようだった。そして数分ののち、政府軍の中将が画面に姿を現した。
それから少佐を指令室の外に出し、天馬はモニタを通して、サシで中将と向かい合う。
中将は強気に声を絞り出したが、その声は少し震えているようでさえあった。
天馬は意味深に話を持ち掛ける。
冷静に思考しろ。この交渉が決裂すれば、アスタリア軍は即座にザリスに転進する。中継地点のイリーズを落とされた今、ザリスを守れるなどと思ったら間違いだ。イリーズに置いてある武器類も、そのまますべて持ち去ってザリス攻撃に投入することになろう。守備兵はすぐさま降伏を選択してくるかもしれんぞ。そして貴様は、三戦三敗だ。
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