これまでの縁。

文字数 1,352文字

……で、アタシのところに来たわけね

 場所は(うつ)り、ここは芸術(げいじゅつ)(みやこ)・ヴィオナ。

 都随一(みやこずいいち)名高(なだか)劇場(げきじょう)(さら)にいうと(ひか)(しつ)(うで)()むリタの前で、ミリフィエールはそのしなやかなからだを(ちぢ)こまらせる。

あう、このままでは(らち)があかないとなったときに、とてもしっかり(もの)なリタのことが頭に()かびまして……。あの、ご公演後(こうえんご)でお(つか)れなのにお邪魔(じゃま)してしまい、本当にごめんなさい。やっぱりわたくし、お(いとま)いたします……!!
 ミリフィエールが(あわ)てて立ちあがり(きびす)(かえ)すと、リタはミリフィエールの(ゆた)かな(かみ)瞬時(しゅんじ)にかきわけ、その首根(くびね)っこを器用(きよう)につかんだ。これには(ひか)えていたヨダカもぎょっとする。
ミリフィお姉ちゃん!?
きゃふっ
待ちなさいよ、ミリフィ! アナタ今、(ひか)えめに言って大ピンチじゃないの!?
ううっ、それはそうですが……お(いそが)しいリタにかけあってしまうなど、よくよく考えたら迷惑千万(めいわくせんばん)でした……
 首をさすりながら、しゅん、となり目を()せるミリフィエールへ向かい、リタは()みつかんばかりの(いきお)いで()えた。
友人(ゆうじん)一大事(いちだいじ)(ほう)けていられるほど、アタシは薄情(はくじょう)じゃないわ!!
!!

 そして、(すで)にヴィオナ(いち)()(あらそ)うほどの歌姫(うたひめ)とまで()ばれるようになった少女は、力強(ちからづよ)く言ってのける。

アタシはうれしかったわよ?

時折届(ときおりとど)く手紙でアナタは、いつだって大切な存在(そんざい)のためにがんばっていた。それはとても素敵(すてき)なことよ。でも、弱音(よわね)一切吐(いっさいは)かなくて、アタシは一線引(いっせんひ)かれたような心地(ここち)だったわ。


――ねえ、もっと(たよ)りなさい。それは(はじ)じゃないし、外聞(がいぶん)の悪いことでもない。

友だちに(ちから)()せるのって、アナタが思っている以上(いじょう)(ほこ)らしいものなのよ?

リタ……
(いい『(えにし)』を(むす)んだな、ミリフィお姉ちゃん――)

 (あたた)かな気持ちが、ミリフィエールを()たす。

 リタは少々気恥(しょうしょうきは)ずかしかったのか、切りかえるようにその美しく(ととの)った(かたち)の手を一度合(いちどあ)わせてから()った。

そうと()まったら、三人で作戦会議(さくせんかいぎ)よ!!

ヨダカくんも、(あらた)めてよろしく。ミリフィのために、(とも)(たたか)いましょう!

ああ、(のぞ)むところだ!

 一筋(ひとすじ)の、光が()しはじめている。

 口を引きむすんだミリフィエールの(ひとみ)に、もう()らぎはなかった。

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登場人物紹介

ミリフィエール・トワナ


 星々を統べ、世界の平安を守る神様・ホシミカミのお世話をする、『星仕え(ほしづかえ)』の女の子。愛称はミリフィ。22歳。

 性格は、ちょっと頼りないが、癒し系ながんばり屋さん。


 ホシミカミにかいがいしく仕えていたが、結婚適齢期となり、16歳の少年・ヨダカとお見合い結婚することに。

 それによって暴走したホシミカミが生みだす、人間の心を悪に染めてしまう鳥型の精霊・『ヤミシドリ』を封印するために、代々家に伝わる魔術具・『夜の鳥かご』を片手に、世界をめぐることになる。


 非常にウブで、男性が極端に近づくとパニックを起こし、銃を乱射するクセがある。

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