アキヒメ覚醒
文字数 1,546文字
しばらくして、唐突にカッ、と目を見開き、アキヒメが飛び起きた。
不思議そうにババババっと左右を確認し、ミリフィエールとヨダカを視界に認める。
は、初めまして。わたくしは、ミリフィエール・トワナと申します。そしてこちらが、一緒に旅をするヨダカ・ウィルクランツ様。実は、かくかくしかじかで――
あらましを説明すると、アキヒメはキリエ以上に目をきらきらとさせ、山積みになった原稿用紙を漁ったかと思うと猛烈な勢いでメモを始めた。
な、なんたる不可思議かつ料理しがいのある設定……ッ!!
とても劇的、といったところでしょうか。よかったですねぇ、アキヒメ先生!
アキヒメはぐりんっと猛スピードで首を回転させ、キリエに言いはなつ。
悪いが、キリエ君! 席を外してくれないかい!?
このふたりに独自取材がしたい!! さあお家へ帰ってくれないだろうか!!
ええ~、なぜですか! 先生、最近おかしいですよ! いつも割とおかしいですが!
いつだってふたりでお話を創って……乗り越えてきたじゃないですか! それなのにっ、急に児童小説から畑違いの恋愛小説を書かれるとか! 私、そちらも門外漢ではありませんのに……っ!
今からこのふたりののうこ~うな愛と欲にまみれたお話を訊きたおそうと思うのだ!! なんかこう……複数人で質問攻めはかわいそうだろう!!
キリエは次の瞬間、笑顔で部屋を後にした。
フー……行ったか!! 今回ばかりはキリエ君は頼れなくてね!
ああ、すまなかったな! 実は……ふたりに、ワタシの恋物語を手助けしていただきたいのだよ!! フフ、腕が鳴るな……? ハァーッハッハッハー!!
歴戦の勇士のような顔で高笑いを始めるアキヒメ。
そんなアキヒメをしばし見つめたミリフィエールとヨダカは、同時に顔を見合わせ、代表としてヨダカが言葉を紡いだ。
ハァアーッハッハッハァー! 一気に要素は提示するものではないさ、順次美しく! これから連ねてゆこうじゃないか!!
(こ、このかたの真意は一体……?)
あまりに陽気なアキヒメ自身と、そんな彼女が『ヤミシドリ』に魅入られた『理由』。
先が見えない状況に、ただただおろおろするしかないミリフィエールであった。
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