お祭り通りにて
文字数 1,765文字
少々不満げなリタの案内で、ミリフィエールが訪れたのはヴィオナの中心地。めまいがするほど鮮やかな装飾を宿した露店の数々と、活気あふれるひとびとの喧騒 に、ミリフィエールは感嘆の声をあげた。
ミリフィエールはきょろきょろと興味深そうに辺りを見わたすと、ひとつの露店に心を奪われた。
ミリフィエールが指さした先には、愛らしくふわふわなぬいぐるみや、きらきらと輝くアクセサリーが“連れてかえって!”と言わんばかりに並べてある露店があった。店の前には、景品とは不釣り合いの、無骨 なコルク銃がおいてある。
にっこりと楽しげな笑みを見せ、銃を構えるミリフィエール。
コルク銃はパン、パンパン! と軽やかな音を発し、その音と共に、ぬいぐるみやアクセサリーたちは次々と倒れていった。
屋台のおじさんは、次々ともぎとられてゆく景品と、店を開いて以来ごまかしつづけてきた不正の無邪気すぎる暴露 に、すっかり顔面蒼白 だ。
パァン! 銃声と重なるように、おじさんの悲鳴が一帯に響きわたった。
***
日が傾き、ひとびとがそれぞれの帰途 につく。
青い石のアクセサリーを夕陽にかざしながら、リタはミリフィエールに問いかけた。
きゅっ、と唇をかみしめるリタの顔を、ミリフィエールは心配そうにのぞきこんだ。
リタが真っ赤になりながら差しだした手を、ミリフィエールはその両の手で、宝物のように包みこんだ。
夕暮れの街を、ふたりで進む。
春先でまだまだ肌寒かったが、リタは、ミリフィエールとつないだ手と胸のあたりに、確かな温 みを感じていた。
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