ヨダカとおぅふ

文字数 1,276文字

 ミリフィエールたちはさらにしばらく女性たちへの恋愛事情(れんあいじじょう)に関する聞きこみを続け、()(はじ)まるころにヨダカと合流(ごうりゅう)した。

ヨダカ様! お(つか)(さま)です

ミリフィエールたちもな
ハッハッハァー、よだっち、ご協力痛(きょうりょくいた)みいるぞ!
あっぴぃもお(つか)(さま)。これは大体(だいたい)内容(ないよう)貴方(あなた)の国の文字に()こしたものだが……きちんと読めるだろうか?

 ミリフィエールたちの国とアキヒメたちの国の言葉は、発音(はつおん)こそ(おな)じだが、その表記(ひょうき)――文字の(つづ)り――は(まった)(こと)なるという()わった性質(せいしつ)()つ。

 アキヒメはヨダカが手渡(てわた)したメモを大切(たいせつ)()けとり目をとおし、さらにその、(かる)(はし)らせた目を(まる)くした。
おお……!? 見事(みごと)なものだよだっち、(じつ)(うつく)しい字でまとめてくれて……! とても勉強(べんきょう)したんじゃないかい、素晴(すば)らしい!!
 アキヒメが(たた)えると、ヨダカはふい、と()れたようにそっぽを()いた。
独特(どくとく)意匠(いしょう)だったが、規則性(きそくせい)がしっかりしていたからな。コツさえ(つか)めばなんとか
 ヨダカはなんでもないように言ったが、ミリフィエールもアキヒメ同様(どうよう)、その努力(どりょく)に舌を()いた。この国の文字は、規則性(きそくせい)があるといってもミリフィエールたちの国より(はる)かに、一文字一文字(ひともじひともじ)複雑(ふくざつ)であったからだ。
本当に、たくさんたくさんがんばられたのですね。とてもすごいです……!
そうだろう! このなんでもこなす私を、もっと(たよ)ってくれていいんだぞ、ミリフィエール!!
 ここぞとばかりにずずいっとアピールに入ったヨダカに、ミリフィエールはナチュラルにたじろぐ。
甘酸(あまず)っぱきかな!


さてさて、男性たちのご意見拝見(いけんはいけん)!!

 そんなふたりを横目(よこめ)に、(あらた)めて内容(ないよう)確認(かくにん)するアキヒメ。するとなぜだかヨダカは距離(きょり)をとり、やにわに目を()らしだした。
……おぅふ……
 この国の文字は残念(ざんねん)ながら()めないミリフィエールは、わくわくと()いかける。
なんですか? 一体(いったい)どのようなときめきが(しる)されて――
 間髪(かんはつ)()れず、ヨダカが(かえ)す。
ただひとつ言えるのは、ミリフィエール――相当(そうとう)確率(かくりつ)で、貴方(あなた)発砲(はっぽう)してしまいたくなるであろう大惨事(だいさんじ)が書かれている、かな……
 有無(うむ)()わさぬ表情(ひょうじょう)のヨダカへ、ミリフィエールは目を(およ)がせながらこう(こた)えることしかできなかった。
…………おぅふ、です……
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登場人物紹介

ミリフィエール・トワナ


 星々を統べ、世界の平安を守る神様・ホシミカミのお世話をする、『星仕え(ほしづかえ)』の女の子。愛称はミリフィ。22歳。

 性格は、ちょっと頼りないが、癒し系ながんばり屋さん。


 ホシミカミにかいがいしく仕えていたが、結婚適齢期となり、16歳の少年・ヨダカとお見合い結婚することに。

 それによって暴走したホシミカミが生みだす、人間の心を悪に染めてしまう鳥型の精霊・『ヤミシドリ』を封印するために、代々家に伝わる魔術具・『夜の鳥かご』を片手に、世界をめぐることになる。


 非常にウブで、男性が極端に近づくとパニックを起こし、銃を乱射するクセがある。

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