ミリフィエールの算段

文字数 1,161文字

 ふたりは海を渡り、祖国行(そこくゆ)きの列車(れっしゃ)に乗りこむ。

 その間、ミリフィエールはひたすらに考えを(めぐ)らせ、ひとつの(あん)()べるに(いた)った。

 ()ぶようにすぎる景色(けしき)をよそに、()かいへ(すわ)るヨダカを真剣(しんけん)に見つめる。

ヨダカ様、ホシミカミ様の(けん)についてよろしいでしょうか
! ああ

……かのかたの処刑(しょけい)()とされるコロッセオ。そちらの内部(ないぶ)潜入(せんにゅう)し、高位(こうい)の神様へ()けあうのはどうかと思うのです。

『神』は、ヒトの信心(しんじん)なしには成立不可能(せいりつふかのう)存在(そんざい)半神(はんしん)ではありますが、(かれ)らの生命(せいめい)(みなもと)であるヒトの血も()ぐわたくしの直訴(じきそ)は、無碍(むげ)にしづらいはず

厳重(げんじゅう)警備(けいび)がなされているかどうかが(かぎ)だな。神がまったく無警戒(むけいかい)とは考えにくいし……

結界(けっかい)()ってあったら、厄介(やっかい)とは思います……。


あとは神を(さば)(さい)、場にいるひとびとのその神に対する悪感情(あくかんじょう)が、最も強い害毒(がいどく)となる、となにかの文献(ぶんけん)()れた記憶(きおく)があって。

(かさ)ねて人払(ひとばら)いの対策(たいさく)が取れたらなおよいかと、現時点(げんじてん)では考えているのですが……

そちらに(かん)してはなにか、(さく)があるという顔だな? ミリフィお姉ちゃん
コロッセオを崩落(ほうらく)させない程度(ていど)爆破(ばくは)……
ちょっと落ちついていこうか
きょとん?
いやかわいいけれども!! 『きょとん?』ってしっかり言葉にするひと初めて見たぞ!? かわいいけれども!
事前(じぜん)予告状(よこくじょう)のようなものを送れば、(ちか)づくかた、つまり被害者(ひがいしゃ)となるかたはほぼ皆無(かいむ)かと思いますが……
じゃあ予告状だけ出せばよくないか!?
えっ、それでも(むら)がろうとする(やから)は、ホシミカミ様を(おとし)めんとする予備軍(よびぐん)ですよ? せっかくなのでバァンしないわけには……
本当に落ちついてお姉ちゃん! って、無邪気(むじゃき)疑問顔(ぎもんがお)でトランクから手帳(てちょう)()りだし、火薬取扱店(かやくとりあつかいてん)()たりだすのは()めてくれ!!
きょとん?
 ……ミリフィエールは、相当(そうとう)にキているのである。
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登場人物紹介

ミリフィエール・トワナ


 星々を統べ、世界の平安を守る神様・ホシミカミのお世話をする、『星仕え(ほしづかえ)』の女の子。愛称はミリフィ。22歳。

 性格は、ちょっと頼りないが、癒し系ながんばり屋さん。


 ホシミカミにかいがいしく仕えていたが、結婚適齢期となり、16歳の少年・ヨダカとお見合い結婚することに。

 それによって暴走したホシミカミが生みだす、人間の心を悪に染めてしまう鳥型の精霊・『ヤミシドリ』を封印するために、代々家に伝わる魔術具・『夜の鳥かご』を片手に、世界をめぐることになる。


 非常にウブで、男性が極端に近づくとパニックを起こし、銃を乱射するクセがある。

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