コロッセオ内で控える神たちは、その事態に困惑していた。
どういうことだ、先触れは多分にしただろう! なぜ人間が集まらない……!?
それが、コロッセオ近くで他の見世物が急遽始まったらしく……! なんでも有名歌姫の路上コンサートに、著名作家の新作限定販売とか……。
ああ、リタ嬢にアキヒメ先生なんて、豪華すぎる!! 私も今すぐ馳せ参じたいくらいだ……
なにを言うか、恥を知れ! ってエッ、うそリタたん……だと……!? あとアキヒメ先生って鬼みたいに作品書いているけれど本当にひとりなの? 遮二無二気にな――いやいや、そのような場合ではない!! せっかく世界第三位の神を引きずりおろせる恰好の機会だぞ!
そっ、そうでありました! 長年動かなかった『神位』繰りあがりのチャンス、逃すわけにはゆきますまい
そもそも我は、あの男神は好かなかった。いつも飄々としおって。鼻につくったらないわ!
おまけにイケメンだし。あの程度の仕打ちでは足りませぬよ。多少、溜飲は下がりましたが……
不穏な空気の中、別の神が転がりこむように控えの間へやってくる。
侵入者です! 赤髪の少女がひとり、爆弾をばらまきながらこちらに向かっています!
それが、相当な銃の使い手でして……! 『神気』も感じますが、ひとの気配も強く。現状、我々『神』が危害を加えるわけにもゆかないのです!
端で控えていた一柱の神が、それを聞き、ため息をつきつつ居住まいを正した。
……アタシが出るわ。アンタたちの真意もよぉくわかったし
心底うんざりしたようなサバキノカミの声に、他の神々はさぁっ、と顔を青褪めさせる。
い、いや違うのです、サバキノカミ様。我らはヨウノカミ様の御世を混乱と恐怖に陥れしホシミカミを、憎く思っただけでして……!!
うっさいわね、無様な言いわけはおよし。
……そもそもこの処刑は決定事項よ。サバキノカミの名において、後には引かないわ
鬱陶しげにマントを翻したサバキノカミは、そう言いすて、部屋を出た。
――ったく。アタシ、こーいうの一番キライなのよ