ホシミカミとサバキノカミ

文字数 1,249文字

 口許(くちもと)はヴェールで(かく)しているが、そのくちびるは確実(かくじつ)綺麗(きれい)()(えが)いているであろうサバキノカミは、自信たっぷりにそう言いはなった。

 それに対しホシミカミは、飄々(ひょうひょう)とした態度(たいど)(かえ)す。

やあ、サバキノカミ、(ひさ)しいね。元気だった?

ちょぉっと! なにのほほんとご挨拶(あいさつ)キメちゃってんのよ! アンタのせいで余計(よけい)なお仕事てんこ()りなのよ、こちとら!

……その()いている(むすめ)? アンタを(くる)わせたのは

そう♡かわいいでしょ、ミリフィエールっていうの♡

惚気(のろけ)結構(けっこう)よ。アタシ、女の子より(オトコ)のほうがそそる(たち)だし。

……アンタに訴状(そじょう)が出てるの。神でありながらヤミシドリを(もち)い、この世を混乱(こんらん)(おとしい)れた――前代未聞(ぜんだいみもん)すぎて的確(てきかく)罪名(ざいめい)がないくらい。とりあえず、禁術行使(きんじゅつこうし)として連れてゆくけど

 ホシミカミは(おだ)やかにうなずくと、ヨダカへミリフィエールを(たく)した。

ミリフィをよろしくね、ヨダカ

ホシミカミ……

 ホシミカミは、ミリフィエールを横抱(よこだ)きにして支えるヨダカの肩を、(はげ)ますように(やさ)しく(たた)く。

 そして、ミリフィエールの(ひたい)(かる)いくちづけを落とした。


 それからサバキノカミへ向きなおったホシミカミは、いつもの(さわ)やかな()みを()かべて()べる。

()たせたね、サバキノカミ。ではゆこうか
……思った以上(いじょう)にあっさりしてるのね。抵抗(ていこう)したりはないわけ?
まぁ、いっぱい迷惑(めいわく)かけちゃったしねぇ。ぼくとしては君に(しば)りあげられるのってかなり興奮(こうふん)するから、その点残念(ざんねん)ではあるんだけど
 へらり、とのたまうホシミカミに、サバキノカミは若干引(じゃっかんひ)いたような仕草(しぐさ)を見せる。
アンタ、こんな子どもの前でぎりぎりアウトな発言(はつげん)、よしなさいよ……

 それは明らかに、ヨダカを()しての言葉だった。

 (たい)するホシミカミは、柔和(にゅうわ)表情(ひょうじょう)()かべてはいるが、はっきりとした意思表示(いしひょうじ)(しめ)す。

ヨダカは、子どもじゃないよ。

ぼくの(いと)しい存在(そんざい)(たし)かに(たく)せる、ひとりの男だ

ホシミ、カミ……
じゃあね

 そのからだはふわり、と()いて。

 サバキノカミとホシミカミは、闇夜(やみよ)()けるように姿(すがた)()したのだった。


 そしてこのときに、ヨダカの心は()まったのである。

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登場人物紹介

ミリフィエール・トワナ


 星々を統べ、世界の平安を守る神様・ホシミカミのお世話をする、『星仕え(ほしづかえ)』の女の子。愛称はミリフィ。22歳。

 性格は、ちょっと頼りないが、癒し系ながんばり屋さん。


 ホシミカミにかいがいしく仕えていたが、結婚適齢期となり、16歳の少年・ヨダカとお見合い結婚することに。

 それによって暴走したホシミカミが生みだす、人間の心を悪に染めてしまう鳥型の精霊・『ヤミシドリ』を封印するために、代々家に伝わる魔術具・『夜の鳥かご』を片手に、世界をめぐることになる。


 非常にウブで、男性が極端に近づくとパニックを起こし、銃を乱射するクセがある。

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