清掃

文字数 1,135文字

 今日は7時に起きた。昨日まで惰眠(だみん)(むさぼ)っていたのが嘘のようだ。実際のところ嘘か本当かは、身をゆだねる事としよう。
 だが、8時まではあっという間であった。煙草(たばこ)を吸うのに、40分もかけていたというのか。いや、その前に軽く掃除をしていた。それだけなのか?これは一体誰の仕業か。問いただす必要がありそうだ。訴訟(そしょう)を検討しておこう。

 ところで今日は清掃の実習が正午からある。明日は丸一日雨の予報であるからして、今日は梅雨入り前の最後のお天気日和(びより)となりそうだ。もう何日間、風呂に入っていないだろうか。ぬるい湯につかり髭を剃り、体臭は風呂場へチェックイン。そして、からだを清めた後は煙を身にまとい、次は洗濯。ここまで掛かるか、という時間をかけた洗濯だったのでアンニュイは抹消(まっしょう)された。

 さて、バスに乗り目的地へと向かい、オフィスに着いた。説明を聞く。だが説明と言った説明は無い。どうやら、仙台駅から長町へ向かうそうだ。何故か、勤務地へ向かう前に全員で記念撮影。気恥(きはずか)しい。使いもしない自撮り写真をマッチングアプリに載せるより、ずっと気恥(きはずか)しい。

 勤務地に到着し、まずは自己紹介。皆、一様(いちよう)に紹介する。私も特段、色を付けずに自己紹介をした。初対面で色を付けるのは博打(ばくち)である(ゆえ)盛り上げない。盛り下げるくらいにしておこう。

 さて、清掃開始。皆、忙しい場所を選んでいる。私は初体験なので簡単な場所を選んだ。

 せっせと、たった30分で終わってしまった。ここで、時間が余ったので清掃のグループで振り返りをした。ある人はこう仰る。
「掃除というのは汚れている場所を綺麗にするわけであって」これには頭が引っかかった。綺麗な内から掃除をするので(綺麗を保てるのであって、かくかくシカジカ)
 だが、そこをつつかないように腹のそこに納めた。ところで、かくかくシカジカあっても、仰ることには一理あり。そもそも、かくかくシカジカの語彙(ごい)は理解していないのでご容赦願いたい。

 帰り(ぎわ)、職長と並んで話しながら歩いた。職長はこうお尋ねされた。

「今日やってみてどうでしたか?」
「声を出す、という事が大事と感じましたよ。一人で居ては声を発する機会はあまり在りませんからね」

 続けて職長が仰る。

「1つのトピックに対してみんなで向かうことが大切なんですよ。有意義な時間を過ごせましたね」
「有意義って、難しい言葉ですね」
「わかり易く言うと、やって良かったって事ですよ」談笑が起きた。

 帰って来てから「有意義」よりも「トピック」という言葉を知らないのでを調べてみた。トピックとは。トピック=話題。

話題!?清掃が話題!なんぞよ。まあ、分かるが。

 ならば清掃業者に勤める場合は自己アピールでこう言おう。
「清掃で話題を作りにきました!!」

 不採用。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み