父、祥月命日

文字数 799文字

元旦は、惰眠(だみん)を貪っていた。故に昨日の記憶は殆ど無い。陽射しに照らされ、かつ2019年式の暖房に温められた部屋の暑さで起きたのであろうか。
 いやだ、起きたくない。猫は餌をねだっている。ダメだ、食事の時間にはまだ早いだろう。しかし可愛い。
 起きているのだが、横になって眠れるのを待っている。陽射しが眩しい。日が少し雲に隠れるも、また陽射しが降り注ぎ焦燥感にさらされる。

 この焦燥感には、理由があるのだ。ただでさえ、陽射しの入った部屋だ。そこで眠ろうなんて姿勢は猫にもジト目で見られるものだ。

 今日は父の祥月命日なのである。

 この陽射しに照らされた雪達は、瞬く間に溶け明るい道を作る。その道を私は、堂々と快活に北山墓地まで歩く。
 嘘だ。イヤだ。断固認めない。雪道氷道だ。何しろトイレはこんなに寒いではないか。私の通る道は火炎放射器を連発しても凍結路には変わりないのだ。

 我が家は1匹と1人暮らしだ。西側には御仏壇を置いている。その茶の湯呑みも2日ほど放置しているため、水位が下がりドロリとしている事であろう。

 イヤだ、何もかも忘れて三年寝太郎になりたい。陽射しが私の心に突き刺さる「甲斐性なしめ。起きろ」と。起きて何をするというのだ。

 しかし、疑問に思っている事がある。昼に目が覚めても、毎日必ずカーテンが開いているのだ。私は開けた覚えは無い。健康の神の仕業に違いない。この神は私に健康は与えていない。与えているのは、背徳心だ。陽射しを身体にたっぷり注ぎ、およそビタミンDでも生成するつもりだろうか。

 もう4日、風呂に入っていない。体臭はピークを迎えた。体が少し痒く、無精髭で寝ぐせがついている。
 午後3時を廻る頃に私は気合いを振り絞って風呂に入ることにした。
 身を清め、御仏壇の湯呑みを替えてご焼香する。
 赦して下さい父上。お墓参りには行きません。

 曹洞宗信徒・某(それがし)、行をこなさず。
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